阪南中央病院

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阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶
熱過敏けいれん
【症例1】 9ヶ月 男児 入浴時の意識消失発作と熱性けいれんの重積
生後4ヶ月:
予防接種に受診した際、それまでに、入浴中に約5分の意識消失を伴う四肢の強直発作が2回があったとの申告があり、ご紹介いただく。
脳波検査で異常所見なし、発達上問題なし。血液検査で、血糖値、カルシウム値等に異常なし。2ヶ月毎の外来経過観察とする。
生後7ヶ月:
その後、入浴時のエピソードはなく、表情正常、ずり這い可能で発達上、問題なし。
生後8ヶ月:
深夜、うめき声に母親が気づく。全身強直と流涎、視線が合わない状態が約10分あり、救急車で当院受診、その後回復。
その7日後:
(生後8ヶ月)
23時過ぎ、強直間代性けいれん、それまで熱はなかったが、救急車内で39℃、約30分のけいれん重積で、当院到着後、ミダゾラム使用で止痙。
頭部MRI検査:頭蓋内に異常所見なし
ドラベ症候群疑いあり、小児神経科専門医へのコンサルテーションが必要と判断。
生後9ヶ月:
大阪府立母子センター小児神経科受診、「Dravet症候群と思われます。VPAを開始、遺伝子検査実施の同意をいただきました」との返事をいただく。
ドラベ症候群
ドラベ症候群は重症乳児ミオクロニーてんかんとも呼ばれ、次のような特徴を持つ疾患です。
  • 乳児期(4~9ヶ月)に入浴・発熱で誘発されやすい熱過敏性をもつ
  • けいれん重積を伴いやすい。けいれんを繰り返し、難治に経過する
  • 1歳頃にミオクロニー発作や欠神発作が出現すると、知的発達が伸び悩み、歩行を獲得しても失調性となる
  • けいれんは難治で、治療抵抗性である。期待・選択される薬剤はバルプロ酸(VPA)、クロバザム(CLB)等であるが、2012年からはスチリペントール(STP)が加わった。フェニトイン(PHT)、ガルバマゼピン(CBZ)、ラモトリギン(LTG)は忌避すべきである
  • Na+チャンネル遺伝子(SCN1A)の異常を70~80%に認める。ドラベ症候群はチャネロパシー(チャネル病)であり、遺伝子診断が期待できる
  • けいれん重積時の治療としては、ジアゼパム(DZP)やミダゾラム(MDZ)が通常用いられるが、効果不十分でバルビツール系薬剤の静脈内投与を要することもしばしばある
臨床診断の場では、乳児で、複雑型熱性けいれんと入浴時のけいれん、熱過敏性とけいれん重積がある時、この疾患を疑うことが重要です。難治である上に、突然死やけいれん重積後の脳症への進行などもあり、小児神経の専門医への早期の相談と遺伝子診断が欠かせない疾患です。患児は病院の近くに在住であり、けいれん発症・けいれん重積時には迅速に受け入れ、適切に対処できるよう対応していきます。
てんかんと入浴
【症例2】 18歳 てんかん(若年欠神てんかん?)  入浴時の発作で溺死
13歳:
欠神発作が始まる。頻度は数日に1回程度。当科受診、脳波は3Hz 棘徐波複合
バルプロ酸で、発作は減少し、 15歳以後 発作は消失
17歳:
高校2年、6時間バイトの後、ゲーム、就寝直後に強直性けいれん バルプロ酸増量
その発作なし
18歳:
高校3年、最終発作から、11ヶ月後の夏休みに、バイトから帰り、しんどいと言いつつ、23時15分入浴。23時35分、お風呂が長いので、家人が見に行くと、湯船に上半身がつかり、溺死状態。
お葬式のあと、母親が来院される。それまで一人で入ることが普通で警戒心が足りなかったとの後悔があり、今後、このような事故が起こらないよう、てんかん患者の入浴の危険性をもっと強く警告をしてほしいと、強く申し出られる。
入浴時に徹底すべき注意点
てんかん発作のほとんどは熱過敏性ではないのですが、リラックスしたときの発作が起こりやすい傾向はあり、入浴時の発作は溺水・外傷の危険性が高いので、徹底すべき注意点があります。
  • 一人での入浴を避ける。シャワーが安全。(隣の湯船にお湯が張ってある場合、シャワー時の発作でも、顔が湯船につかる危険があり、湯船に蓋をするか、お湯を張らない注意が必要)
  • 一人で入浴する場合、周囲の人に声をかけ入る、内鍵をしない、周囲の人は物音や入浴時間に気をつける。時々声をかける。
  • 発作頻発時、過度の疲労、睡眠不足、飲酒、体調不良のときは避ける。
  • 風呂場へのセンサー設置、本人へのモニター装着(防水の腕時計型心拍モニター)なども考慮する
  • 安全対策。突起物を減らす、床に滑りにくい工夫、手すり設置など
事故がおこってからでは、取り返しがつきません。風呂場、浴槽は生命の危険のある場所として認識しなければなりません。これらの注意点は知って心がける程度でなく、徹底すべき具体的な注意点であることを再認識し、「徹底して実施する」必要があります。命を守る重要な注意点です。
【参考・引用】
・てんかん専門医ガイドブック  日本てんかん学会 診断と治療社2014年
・てんかん診療のクリニカルクエスチョン200 改訂第2版 診断と治療社2013年