阪南中央病院

阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶
症例1 1歳5ヶ月 嘔吐5回、症状消失48時間後にけいれん群発
第1病日:
嘔吐5回 小児救急診療受診し、制吐剤の処方を受け、帰宅。そのあと嘔吐・下痢なし。

第3病日:
朝から元気なし。
1回目のけいれん:15時 無熱 約5分(2~3分かも)下肢をピクピクさせ、歯を食いしばり、チアノーゼ、眼球上転。その後意識回復、入眠。
2回目のけいれん:17時 クリニックで診療中、左偏視、意識消失。数分間で止痙、入眠。ご紹介にて当院受診。
3回目のけいれん:18時30分 当院診察中に、眼球固定、唾液排出、チアノーゼ軽度 約1分
血糖:104mg/dl Na:137mEq/L K:3.9mEq/L Cl:106mEq/L Ca:9.2mg/dl
低血糖なし、電解質異常なし  CRP<0.02mg/dl 白血球:8100 ミダゾラム1.2mgIV
入院 18時50分 頭部CT検査:著変なし 髄液検査は行わず
テグレトール(カルバマゼピン:CBZ)5mg/kg 1回 胃チューブで胃注入、意識回復

第4病日:
意識正常 嘔吐下痢なく、元気。脳波検査:no epileptic discharges

第5病日:
朝、軟便。便検査でノロウイルス(+)ノロウイルスによる「軽症胃腸炎に伴うけいれん」と診断。同日予定していた頭部MRI検査をキャンセル。 同日、姉も下痢を発症。
嘔吐発症2日後に無熱性のけいれんが群発した症例でした。胃腸炎は軽症で、ノロウイルス胃腸炎と診断できたのは5日目で、名称の通り「軽症胃腸炎にともなうけいれん」でした。群発する無熱性けいれんで、CwGを考慮して、テグレトール投与を行い、発作は抑制されました。結果的には、ミダゾラム投与が不必要な症例でした。
軽症胃腸炎にともなう良性けいれん
(Benign convulsion with mild gastroenteritis:CwS)
  • 必ずしも重症でない消化器症状に伴うけいれんで、軽症胃腸炎に伴う良性けいれん(Benign convulsion with mild gastroenteritis:CwS)と呼称されます。
  • 胃腸炎にともなう「機会けいれん」です。熱性けいれんが熱に伴う機会けいれんであると同様です。
  • 軽症の胃腸炎に伴う無熱性けいれんで、多くの場合、明らかな脱水症を認めない程度の胃腸炎で発症します。
  • けいれん素因を持たない子どもで起こり、好発年齢は6ヶ月から3歳です。 
  • 胃腸炎症状からけいれん出現までの期間は、大部分が2~4日です。
  • しばしば群発し、発作の時間は、5分以内と短く、発作間欠期の意識は正常なのが特徴です(稀に数時間意識回復が遅れる症例もあります)。けいれん群発は発症から24時間以内に収まる症例がほとんどです。
  • けいれん予後及び発達予後は良好です。
  • 熱性けいれんの予防に用いられるジアゼパムなどGABA受容体に作用する薬剤の有効率が高くなくカルバマゼピンなどNaチャンネルに作用する薬剤の治療効果が高いことが特徴です。カルバマゼピン5mg/kgの1回経口投与が有効とされます。(2.5mg/kgで有効との報告もあります)
  • 啼泣や痛みの刺激で発作が誘発される傾向があり、処置前にカルバマゼピン投与を行うなどの工夫も推奨されています。
  • この症例は典型的なものでした。無熱性けいれんの場合、軽症胃腸炎を伴っていないか注意しで経過を見ていく必要があることを実感しました。
ウイルス性胃腸炎の中枢神経合併症 脳症とCwG
脳症・重症中枢神経合併症:日本で発症した15歳以下の脳炎/脳症の病因のうち、ロタウイルスによる脳症は、インフルエンザ→HHV-6・7についで3番目に多く、急性脳症の型では、予後がよいとされる可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳症(mild encephalopathy with a reversible splenial lesion:MERS)が多いとされてきましたが、小脳症状を合併し後遺症をきたした症例や、より重症な脳症も報告されています。ロタウイルスワクチンが導入され、このタイプの脳症が減少することが期待されます。
CwG:今回の報告はノロウイルス関連ですが、ノロ・ロタだけでなく、他のウイルス性胃腸炎でも同様にCwGの合併症を起こします。いち早くロタウイルスを導入した韓国ではロタウイルスによるCwSが減少し、ノロウイルスによるCwGが増加しているとの報告があります。日本でも同様の傾向が起こることが予想されます。
症例2 生後3ヶ月 けいれん発症 脳波異常なし 頭部MRI検査:異常なし
少量のテグレトール内服で発作は消失。
1歳3ヶ月 断薬。
1歳9ヶ月 発作再燃し、CBZ再開。2歳でCBZ中止し、以後けいれんなし
良性乳児けいれん(てんかん)と診断
父親に発作性運動誘発性ジスキネジアあり。
良性乳児けいれん(てんかん)とその最近の話題
良性乳児けいれんの初年齢は4~8ヶ月(2歳以下、ほとんどが1歳以下発症)です。これより低い年齢での新生児けいれん(てんかん)とは区別されます。発作持続時間は短くほとんどが数分で、群発を認める傾向があり、ジアゼパムは無効で、カルバマゼピンが著効します。これらの特徴はCwGと共通です。発作予後、発達予後とも良好で、1歳6ヶ月ごろまでにはほとんどの症例で発作が消失します。
良性乳児けいれんの中には、家族歴として、同胞に熱性けいれんや良性乳児けいれんを持つもの(家族性乳児けいれん)が多い傾向があります。更に、学童期以降に発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ(paroxysmal kinesigenic choleoathetosis:PKC又は発作性運動誘発性ジスキネジア)を発症する例が認められ、PRRT2遺伝子変異が報告されています。乳児けいれんにPKCを合併する症候群はICCA(infantile convulsion and choleoathetosis)症候群と呼ばれます。急な動作で、手足が勝手に動く不随意運動が起こりますが、意識障害はなく、脳波異常も伴いません。乳児けいれん同様、カルバマゼピンが有効とされます。症例2の子どもの父親にはジスキネジアがあり、将来、この子にジスキネジアが発症するか、観察が必要です。
乳幼児期の群発けいれんの鑑別診断
群発傾向を持った乳幼児期の鑑別診断には、以下のものが挙げられます。
①軽症胃腸炎に伴うけいれん(症例1)
②良性乳児(部分)てんかん(症例2)
③SCN1A遺伝子異常に伴うDravet症候群(あんしんねっと105号2014年10月)
④PCDH19関連症候群
PCDH19関連症候群は、「正常又は軽度の遅れを持つ乳幼児期の女児が、発熱・感染症を契機にてんかんを発症、けいれんは群発、X染色体長腕Xq22.1に存在するPCDH19遺伝子の異常による疾患」で、ベンゾジアゼピン系薬剤が有効とされています。
参考:
子どものけいれん・てんかん 奥村・浜野編集  中山書店 2013年4月
小児内科 Vol.47 No.9 2015-9 p1661~1663
難病情報センター PCDH関連症候群