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阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶
最近の国内ワクチン事情
Hibワクチン
2008年末に承認、使用できるようになりました。全国でも幾つかの熱心な一部の自治体では、Hibワクチンへの半額補助が行われるようになってきました。しかし、輸入量が不足し、品薄で、ワクチン接種待ちが出てしまう不安定な状態です。地方負担、地域差が拡大しないよう、国の定期ワクチンスケジュールに位置付けられることが必要です。
日本脳炎ワクチン
ADEM等の発症により、従来のワクチン接種が控えられてきましたが、2009年6月「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン」が承認され、今年から使用されることになります。コガタアカイエカはウイルスを保有するブタから人に感染します。蚊の活動範囲は概ね2km前後とされていて、近隣に養豚場がある地域で生活・活動する場合は、ワクチンの意義は大きそうです。一般的には都市部では、感染のリスクは低いと考えられています。
接種スケジュールは、1期初回(2回)概ね3歳、1期追加(1回)1年後、2期(1回)概ね9歳
麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)
感染症センターホームページでの重点は以下の3点です。
・「1歳のお誕生日にプレゼントしましょう」
・「2012年麻疹eliminationに向けた麻疹対策のキャッチフレーズ“1人出たらすぐ対応!”」
・「2回接種を受けましょう。」「中学1年生相当年齢(第3期)、高校3年生相当年齢(第4期)の人は、
 「忘れず2回目の接種を受けましょう!」(2012年度までの時限措置)
HPVワクチン
2009年末、子宮頚癌の原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するためのワクチンが国内承認されました。日本で承認されたのは2価ワクチン(16/18型)のサーバリックスで、これとは別にHPV6/11/16/18型に対する4価ワクチン=Gardasilがあります。日本での任意有料の導入に対して、11~14歳の女性への無料接種が提言されています。
ワクチンギャップ
ワクチンの投与法ですが、アメリカでは、生ワクチンは皮下注射(SC)ですが、不活化ワクチンは、ほとんどが筋肉注射(IM)です。多糖体ワクチンの一部、不活化ワクチンの一部に皮下注とされたものがありますが、特殊例です。現在、日本で皮下注(SC)で行われている不活化ワクチン(B型肝炎ワクチン、DPT、Hib)は、アメリカではすべて筋注(IM)です。
水痘、ムンプス、Hib(アクトヒブ)、最近承認されたHPVワクチン(サーバリックス)などの日本でのワクチン接種は、任意有料で導入されてました。知識があり、支払い可能な家庭の子どもがワクチンの恩恵にあずかり、「貧困」家庭の子どもが健康維持から取り残される、このような健康格差がもたらされる枠組みになっています。一部地域で自治体によるHibワクチンに対する半額補助のような、取り組みがあり、徐々にワクチンによる子どもの健康問題への関心も高まっては来ています。このような、地域での動きが、全国的な、無料でのワクチン接種を実施する取り組みになっていくよう、小児科医としての努力を強めていかなければと考えています。
日本のワクチン対策は、世界標準からすると20年も後ろを歩いていると揶揄される状況があります。安全性を慎重に検討し、効果を評価する必要がありますが、子どもの健康のためには、この遅れを取り戻す、より積極的な取り組みが必要です。東京都立駒込病院で、アメリカから、DtaP+HepB+Hibの5種混合ワクチンを輸入して、1回1万円(計4回=4万円)で、希望者に接種する記事が朝日新聞に掲載されました。複数のワクチンを一つにまとめて接種することができれば、子どもにとって幸いなことです。このような取り組みも世界標準に追いつく努力の現われの一つです。
今回は、一つの世界標準モデルとして、アメリカのワクチン接種スケジュールを、資料として示します。私たちは、重症水痘やムンプスによる難聴、Hib髄膜炎や喉頭蓋炎などの子どもに対するとき、ギャップの大きさを実感させられます。また、留学生に対して、ワクチン証明書(Immunization Certificate)を発行する際にも、中国の子どもが、ワクチン歴を示してみせてくれる時にも、そのギャップを実感させられます。
子どもの健康を守る立場から、ワクチンギャップの実情を把握して、日本における望ましいワクチンスケジュールを作り上げていくことが、私たちにとっての課題だと考えます。
US・2010ワクチンスケジュール 0歳~6歳
Recommended Immunization Schedule for Person Aged 0 Though 6 Years - United Staes 2010
(1) B型肝炎ウイルスワクチン(HepB)(投与開始最小年齢:出生児)
  • 出生時
  • 退院前に全ての新生児に単価ワクチンを接種
  • 母がHBsAG+の場合、出生12時間以内にHepBとHBIG0.5mlを投与
  • 母のHB-Agが不明の場合、出生12時間以内にHepBを投与し、母のHB-Ag検査を行い、+ならHBIG投与(遅くとも1週以内に)。
  • 出生時投与のあと
  • 単価又はHepBを含む多価混合ワクチンで一連のワクチン投与を行う。2回目は1又は2か月、6週間以内に投与する場合は単価ワクチンを使用。最終投与は24週より前に行ってはならない。
  • HBs-Ag+母からの児は3回目のワクチン接種のあと、1〜2ヵ月以内(通常9〜18か月の間)にHBs-AgとHBs-Abの検査を行う。
  • 出生時以後に、多価混合のワクチンを受けた場合、4回目のワクチンを受けて良い、この場合、24週より後でなければならない。
(2) ロタウイルスワクチン(RV)(投与開始最小年齢:6週)
  • 初回投与は6〜14週(最終14週6日まで)。初回投与を15週0日以後に行ってはならない。
  • 最終回のワクチンを8か月0日までに終了すること。
  • 2か月と4か月にRotarixを投与した場合は、6か月目の投与は必要ない。
(3) ジフテリア・破傷風トキソイド・無菌体百日咳ワクチン(DTaP)
(投与開始最少年齢:6週)
  • 3回目の接種から、6か月以上経っておれば、4回目は12か月までに終了してもよい。
  • 最終接種は、4〜6歳。
(4) b型インフルエンザ菌結合型ワクチン(Hib)(投与開始最小年齢:6週)
  • 2か月と4か月にPRP-OMP(PedvaxHIB又はComvax[HepB-Hib])を投与した場合は、6か月目の投与は不要。
  • TriHiBit(DTaP/Hib)とHiberix(PRP-T)は、2か月、4か月、6か月の3種混合ワクチン初回シリーズに使用してはならない。12か月〜4歳の最終回のワクチンとして使用することはよい。(MMWR 1997;46(No.RR-8)
(5) 肺炎球菌ワクチン(投与開始最小年齢:結合型ワクチン〔PCV〕では6週;
多糖体ワクチン〔PPSV〕では2歳)
  • PCVは5歳以下の全ての子どもに推奨される。ワクチン接種が完全に行われていない、24か月〜5歳までの健康な子どもには、1回の投与。
  • 2歳以上で人工内耳などの特別な状況にある子どもには、最後のPCVのあと、2か月以上たった時期に、PPSVを投与する。
(6) 不活化ポリオワクチン(IPV)(投与開始最少年齢:6週)
  • 最終投与は、4歳以後でその前の接種から6か月以上たっていること。
  • 4歳までに4回接種が行われている場合、4歳の誕生日〜6歳の間に5回目の接種を行うべき。MMWR 2009 ; 58(30)829-30.
(7) インフルエンザワクチン(季節型)(投与開始最少年齢: 3価ワクチン〔TIV〕では6か月;弱毒生ワクチン〔LAIV〕では2歳)
  • 6か月から18歳まで、毎年接種。最終投与は、4歳以後でその前の接種から6か月以上たっていること。
  • 健康な2歳〜6歳の子ども(インフルエンザ罹患で合併症に陥る危険のある基礎疾患がない)は、LAIVかTIVの接種を受けることができる。ただし、過去12か月以内に喘鳴の既往のある2〜4歳の子どもはLAIVを受けてはならない。
  • TIGの接種量は、6か月〜35か月は0.25ml、3歳以上は0.5ml。
  • 9歳以下の子どもでは、インフルエンザワクチンをはじめて受ける場合、又は、前のシーズンに1回しか受けていない場合、少なくとも4週間以上間隔をあけて、2回接種。
  • インフルエンザA(H1N1)2009の単価ワクチン接種については、MMWR 2009;58(No-10)を参照。
(8) 麻疹・ムンプス・風疹ワクチン(MMR)(投与開始最少年齢:12か月)
  • 追加接種はルーチンには、4〜6歳に行う。しかし、1回目の接種から少なくとも28日以上経過しておれば、4歳未満でも2回目の接種可能。
(9) 水痘ワクチン(投与開始最少年齢:12か月)
  • 2回目の接種は、ルーチンには4歳〜6歳で行う。しかし、1回目の接種から3か月以上経過しておれば、4歳未満でも接種可能。
  • 12か月〜12歳の子どもは、ワクチン接種間隔は、最低3か月。しかし、2回目接種が、1回目から28日経過しておれば、有効。
(10) A型肝炎ウイルスワクチン(HepA)(投与開始最少年齢:12か月)
  • 1歳(12か月〜23か月)の子ども全員に接種。6か月間隔で2回接種。後に行ってはならない。
  • 2歳までに2回接種が完成していない場合、次の来院時に接種して良い。
  • HepAは、A型肝炎感染の危険性が高い地域に住む場合、又はA型肝炎に対する免疫が必要とされる場合には、年齢が高い子どもに接種することも推奨される。
(11) 髄膜炎菌ワクチン(投与開始最少年齢:2歳:髄膜炎菌結合型ワクチン〔MCV4〕、
及び髄膜炎菌多糖体ワクチン〔MPSV4〕)
  • MCV4は、補体欠損症、解剖学的及び機能的無脾症及び危険性の高い疾患を持つ、2〜10歳の子どもに接種。
  • 2〜6歳の間にMCV4かMPSV4のいずれかで、1回目の接種を受けた子どもに対して、3歳以上で、MCV4を投与する。
7歳~18歳のワクチンスケジュール(2010:US)
Recommended Immunization Schedule for Person Aged 7 Though 18 Years - United Staes 2010
(1) 破傷風・ジフテリアトキソイド、無菌体百日咳ワクチン(Tdap)
(投与開始最少年齢:Bootrixでは10歳、Adacelでは11歳)
  • 乳幼児期のDTP/DTaPワクチンスケジュールが終わっていて、破傷風・ジフテリアトキソイド(Td)の追加接種を受けていない11歳又は12歳
  • Tdapを受けていない、13歳から18歳の人は、接種を1回受けるべき
  • Tdapの追加接種は、最後のTdから5年以上の間隔で、受けるのが望ましい。ただし、百日咳が流行の場合はその限りでない。
(2) ヒトパピローマウイルスワクチン(HPV)(投与開始最少年齢:9歳)
  • 2種類のHPVワクチンが認可されている:4価ワクチン(HPV4):子宮頸癌、膣癌、外陰部癌(女性)尖形コンジローマ(男性及び女性)の予防2価ワクチン(HPV2):子宮頸癌予防
  • HPVワクチンは、性交渉によるHPV曝露前に投与した場合、女性・男性ともに効果がある。
  • HPV4とHPV2は女性の子宮頸の癌と前癌状態予防のために推奨される。
  • HPV4は女性の子宮頸、膣、外陰部の前癌、及び癌、及び尖形コンジローマの予防のために推奨される。
  • 初回投与は11歳又は12歳
  • 2回目は初回の1〜2か月後。3回目の投与は初回から6か月後(少なくとも24週以上で)
  • 以前のワクチン接種がなければ、13歳から18歳の間に投与する。
  • HPV4は男性では9歳から18歳の間に3回投与が行われる。(尖形コンジローマ感染の好発年齢での感染を減らすため)
(3) 髄膜炎菌結合型ワクチン(MCV4)
  • 11歳又は12歳、又は以前の接種がなければ13歳から18歳で、投与する。
  • 以前の接種既往がなければ、大学新入生は寄宿舎で受ける。
  • 補体欠損症、解剖学的及び機能的無脾症、ハイリスクと考えられる状態ではMCV4は、2歳から10歳の間に投与
  • MCV4やMPSV4接種既往のある子どもで、ハイリスク状態の以下の場合には投与
    2歳から6歳の間に初回投与を受け、3年経ってなお危険性が高い場合7歳以上で初回投与されてから、5年以上経っている場合
(4) インフルエンザワクチン(季節性)
  • 6か月から18歳まで、毎年
  • 7歳から18歳で、健康で妊娠していないヒト(すなはち、インフルエンザの合併症の危険性を高める基礎疾患がないヒト)は、LIV又はTIVのいずれかが使用される。
  • はじめての接種、又は前年一回しか接種を受けていない場合は、9歳以下では、最短4週間間隔で、2回接種。
  • HINI単価ワクチンについては、MMWR 2009;58(NoRR-10)参照
(5) 肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV)
  • 人工内耳などの条件下の子どもに投与。再投与は、機能的又は解剖学的無脾症の子どもで、5年後に行われるべき。MMWR1997;46(No.RR-8)
(6) A型肝炎ワクチン(HepA)
  • 6か月間隔で2回接種
  • HepAは、高年齢の子どもで、感染の危険高い地域に住み、A型肝炎ウイルスへの免疫が望まれる場合に推奨される。
(7) B型肝炎ワクチン(HepB)
  • 接種既往がない場合、3〜4回シリーズで接種。
  • 2回接種(最低4週以上の間隔で)の成人向けのRecombivaxHBは11歳〜15歳で、許可されている。
(8) 不活化ポリオワクチン(IPV)
  • シリーズの最終投与は、4歳誕生以後、前回接種より最低6か月間隔で、投与されるべき。
  • OPVもIPVも対象児の現在の年齢にかかわらず、一連のシリーズの一部であるので、トータルで4回が投与されるべき。
(9) 麻疹、ムンプス、風疹ワクチン(MMR)
  • 接種既往がない場合、2回接種。2回目の接種は、最低28日間隔で接種。
(10) 水痘ワクチン
  • 免疫がない7歳〜18歳のヒトは、2回接種。(MMWR2007;56[No.RR-4])以前に1回接種の既往のある場合は、1回追加。
  • 7歳〜12歳のヒトでは、投与間隔は、最低3か月。
  • しかし、2回目が28日以内の接種の場合でも、有効と判断。
  • 13歳以上のヒトは、接種の最低間隔は28日。
(日本語訳の責任は、全て中田にあります)