
小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶
はじめに
家畜(偶蹄類)の感染症である口蹄疫(foot-and-mouth disease FMD)が、大問題になっています。ヒトの子供では、夏かぜの季節です。エンテロウイルスを主とした、夏かぜ・ウイルス性発疹症をテーマにしました。
【症例1】ウイルス性発疹症 5歳7ヶ月
経過
5月16日:
頬に「りんご病」様の紅斑。
5月19日:
体幹、四肢に発赤を伴う発疹を伴うようになる。CRP<0.1mg/dl。
5月20日:
39.2℃。顔の紅斑は進行し顔面浮腫状、体幹・四肢の丘疹も増加し当科へご紹介いただく。
咽頭所見:口蓋垂の右に粘膜潰瘍あり
CRP0.4mg/dl 白血球9500 AST19 ALT13 LDH263 アデノV(—)溶連菌(—)HBs-Ag(—)
抗生剤投与なしで観察
咽頭所見:口蓋垂の右に粘膜潰瘍あり
CRP0.4mg/dl 白血球9500 AST19 ALT13 LDH263 アデノV(—)溶連菌(—)HBs-Ag(—)
抗生剤投与なしで観察
5月21日:
解熱
5月22日:
顔、体幹、四肢の発赤は軽減、しかし、肘・膝に発赤を伴わない丘疹が多数出現
5月24日:
発疹は全体的に軽減、CRP0.2 白血球6900 マイコプラズマ、EBV、CMV、コクサッキ−4、10、16、Echo16などの抗体検索中。
鑑別診断
- Gianotti-Crosti症候群
小児丘疹性末端皮膚炎(infantile papular acrodermatitis); B型肝炎ウイルス感染によるものをGianotti病、原因不明のものをGianotti-Crosti症候群と区別することがあります。しかし、最近では両者を区別せずG-C症候群と呼ぶ傾向にあるようです。この症例では、頬や体幹に発疹が先行しました。対症療法のみで予後良好、発疹は数週間で消失します。
原因:
①ウイルス感染(HBV・EBV・CoxsackieV・EchoV・ParvoV・CMV・HHV-6など)
②細菌感染(A群溶連菌、髄膜炎菌、マイコプラズマなど)
③ワクチン接種後
②細菌感染(A群溶連菌、髄膜炎菌、マイコプラズマなど)
③ワクチン接種後
- Boston Exanthema
かぜ症状に加え、四肢、体幹、顔に、麻疹・風疹様の浮腫性紅斑・丘疹がみられ、Echo16によるものをBoston exanthemaと診断します。