阪南中央病院

阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶
先月号のウイルス性発疹症(熱、軟口蓋のアフタ、全身の発疹、膝の発疹)は、CoxV-A4抗体価が4倍上昇し、CoxV-A4による発疹を伴うヘルパンギーナと診断しました。国立感染症センターの週報でも、ヘルパンギーナの原因は大半がCV-A4であるとの報告が出されています。その他、手足口病や、手足に発疹を伴わず、膝、肘、臀部に発疹を持つウイルス性発疹症が流行しています。
ウイルス性髄膜炎の動向
最近のウイルス性(無菌性)髄膜炎のご紹介例を報告させていただきます。髄液細胞が多核球増多の場合や、けいれん・意識障害などの脳炎・脳症合併の疑い症例の場合など、単純な無菌性髄膜炎と決め付けられないこともあります。
国立感染症センターの集計では、今年の髄膜炎の多くはムンプスを除けば、エンテロウイルス71の手足口病によるものが多いようです。このウイルスは向神経性で、髄膜炎だけでなく脳炎の合併症があることが特徴で、夏に向けて流行の兆しがあり、注意が必要です。
最近の髄膜炎症例
【症例1】 1歳8ヶ月 女児 髄膜脳炎?
6月14日:
夕方から熱、不機嫌。

6月15日:
熱が続き、項部強直あり、髄膜炎としてご紹介いただく。
髄液検査:細胞数237(多核球27%) 蛋白23mg/dl 糖46mg/dl
CRP<0.2mg/dl  白血球7300(Band3% Seg40%)

6月18日:
解熱、6月23日退院。エンテロウイルス71による脳炎も考慮し、脳波検査、抗体検査などで経過観察中とのご報告をいただく。
【症例2】 2歳11ヶ月 女児 ウイルス性髄膜炎(エンテロウイルス71による?)
6月19日:
夕方から熱、不機嫌。

6月22日:
39℃、悪寒、不機嫌、嘔吐3回で、ご紹介で入院。項部強直強い。
CRP 0.4mg/dl 白血球数17600(好中球75.4%)。
髄液検査:細胞数525(多核球87%)
蛋白55mg/dl 糖104mg/dl(輸液中)
髄液検査中、けいれん10秒、その後ピクツキが見られる。
鑑別診断として、①ウイルス性髄膜炎+熱性けいれん ②細菌性髄膜炎 ③ヘルペス脳炎などの鑑別が必要と考え、大阪市立総合医療センターに受け入れていただき、転送。
アシクロビル10mg/kg→髄液HSV-PCR(-)で中止
CTRX50mg/kg 2回/日→CRP低値、培養陰性で中止

6月24日:
解熱、頭痛消失。

6月25日:
退院。
ご両親2人とも5~7日前に手足口病罹患、母親は口内炎が激しく数日間食事が摂れなかった。
患者本人には口内炎や手足の発疹は認めなかったが、おそらくエンテロウイルス71による髄膜炎と考えられる。
【症例3】 5歳8ヶ月 女児 ウイルス性髄膜炎
6月22日:
37.6度、頭痛、嘔吐。

6月24日:
顔色不良、項部強直(+)、Kernig(+)で、髄膜炎の疑いでご紹介いただく。
髄液:細胞数32(多核球2%) 蛋白24mg/dl 糖45mg/dl
CRP<0.2mg/dl 白血球11600(Band10% Seg75%)

6月25日:
解熱、嘔吐・頭痛消失。

6月26日:
食欲回復、軽快退院。
典型的な軽症経過のウイルス性髄膜炎であった。
髄液の細胞数が /3の表示でなく、3で割った数で表示されています。
昨年から、検査室で使用しているSysmex製の血球計算機で、少ない血球でも器械的に計測できるので、計算板(Fuchs-Rosenthal)を使用しなくなっています。
髄膜炎の診断 髄膜刺激症状と髄膜刺激兆候
髄膜刺激症状:
頭痛、悪心・嘔吐、感覚刺激に対する過敏性、脳神経麻痺
Jolt accentuation Test:左右に首を振ると頭痛が増強する。
髄液細胞数が増加している34人中、33人でJolt accentuation陽性(感度97.1%)、白血球の増多を認めなかった20人中、12人でJolt accentuation陰性(特異度60%)と報告されています。

髄膜刺激兆候:
項部強直
Kernig兆候:仰臥位で、股関節膝関節を屈曲位とし、膝関節を伸ばそうとしても、下腿を135°以上に伸ばすことが出来ない状態。正常では下肢は、ほぼ真っ直ぐ伸び、上腿と下腿の角度は135°以上になります。(生理的に屈曲筋有意の乳児では有用ではない。)
Brudzinski(ブルジンスキ)兆候:仰臥位の患者の頭を受動的に屈曲させると、股関節と膝関節に自動的な屈曲が起こることをいいます。(小児では出やすいとされている。)
乳児では『髄膜刺激症状の確認は困難で、他の臨床症状で判断しなければならないこともあります。髄膜刺激兆候(項部強直、Kernig兆候、Brudzinski兆候)がないことを理由に髄膜炎を否定する医師をギャンブラーと呼ぶにふさわしい、医師のギャンブルは避けなければならない』と記載している感染症の本の記述があったりします。
これらの症状、兆候をもとに、精度の高い診断に結びつけるよう心がけていきます。