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阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶
この8月「阪南中央病院キューバ医療視察」団で、社会主義国キューバに行って来ました。豊かでない国の医療や教育が世界の多くの国々の「手本」になっているとされる現状を見聞、体験してきました。
社会主義の国キューバ …医療や教育を保障することは国の根幹
キューバは人口1130万人、国土は日本の本州の約半分のカリブ海の国です。1956年カストロはアルゼンチン人の医師ゲバラらとともに、メキシコから船に乗りキューバに上陸、国民の支持を得ながら、バチスタ政権を打倒し、1959年社会主義国キューバが誕生しました。アメリカの政権転覆工作・軍事的圧力や経済封鎖、ソ連の崩壊による経済危機を乗り越え、今、着実に発展している姿がありました。
国民一人当たりの国民所得は、日本の約5%程度ですが、そのもとで、国の政策として最底辺の人々に対する配慮を第一に、医療や教育に大きな力をさき、人々の健康と文化を重視した新しい社会をつくり上げてきています。そのことが、乳児死亡率(出生1000に対する1歳未満の死亡数)4.7で、南北アメリカで最良、20人学級の実現などの驚異的な数字に表される現実を生み出しています。
キューバの健康 …過去と現在
キューバ到着の翌日、早速、キューバ保健省のポルティージャさん(広報担当、ハバナ大学外科教授の肩書き)から、キューバの医療についてのお話を聞くことができました。(下表を参照)
キューバの医療
1959年 2009年
医 師 数 6286人。ほとんどは大都市で自費診療革命のあと、ほぼ半数は国を離れた 72416人。47.83%がファミリードクター 過疎地を含め全地域で100%医療はカバーされている(しかも無料)
乳児死亡率 1000人の出生に対する1歳未満の死亡数60以上 4.7(2007年末)
平均寿命 60歳以下 78歳
保健衛生状況 ワクチンで多くが予防できる伝染性疾患の蔓延 非伝染性疾患が主要13疾患の予防接種計画の実施
医科大学 1校 24校
乳児死亡率4.7、平均寿命78歳は、どの先進国と比べて、遜色がありません。南北アメリカ全体では、最良です。医師数は、72416人で、どの先進国と比べても沢山の医師が活躍しています。
乳児死亡率4.7の意味するもの  人の健康と命が平等に保障される国
吉田太郎氏による「世界がキューバ医療を手本にするわけ」にも掲載されている1枚の図が示されました。トルティージャさんは、これを見て、「私はこの図が大好きです」と一言いいました。
この図は、国々の所得と5歳未満の子どもの死亡率の関係を示したものです。所得が少ない国であるにかかわらず、5歳未満の子どもの死亡率(U5MR)がとびぬけて少ないことが示されています。1歳未満の子どもの死亡率(乳児死亡率=IMR)も、同様にとびぬけて低く、キューバでは2007年4.7(1000人の出生対)で、南北アメリカで最良、子どもの命がもっとも守られている国になっています。因みにアメリカは6.6、カナダ5.0、日本は2.6です。
国々の間でも、又は一つの国の中でも、金銭的な豊かさが乳児死亡率や平均寿命などの命の指標と相関する宿命から唯一「逸脱している」国キューバ、ぎりぎりの生活の中でも、人の健康と命を平等に保障され、それを全国民が権利として獲得している国キューバの医療の成果が示された図です。
World Development Chart 2004
【図】 所得と健康度で見る世界チャート(5歳未満児死亡率)
医師数は人口当たりでは日本の3倍:72416人(2009年)
       …ファミリードクター/ポリクリニカ(総合診療所)システム
人口1000人当たりの医師数は、キューバでは6.4人で、日本の2.17人の3倍の医師が活躍しています。病院での医師確保の困難な日本とは比べ物にならない潤沢な医師数です。ドイツ3.50、フランス3.37、イギリス2.48、アメリカ2.43です。キューバの医療が、医師をはじめとする専門的知識を持った多数の人材の投入によって維持されていることがわかります。
ファミリードクターは、人口600~800人を担当し、地域の中にある診療所(1階診療所、2階住宅)で、患者とともに暮し、地域住民の参加を得ながら、①予防②保健教育③診療④リハビリなどの業務を、きめ細かに担当していました。
ファミリードクターが対応できない患者は、ファミリードクター数10カ所が所属するポリクリニカ(総合診療所)に送られます。ポリクリニカは、統合診療科、眼科、歯科などの診療科と、救急部門、検査部門(血液、レントゲン、超音波、内視鏡など)、リハビリ棟が一体化したもので、例えば規模も、機能も阪南中央病院の外来部門だけを独立させたようなものです。CTやMRはありませんが、この3年前から、内視鏡検査がポリクリニカで行われるようになってきているとのことでした。医療費は無料です。
入院が必要な患者は、ポリクリニカから病院に送られます。分娩は別の産科病院で行われています。
ファミリードクターの地域でのきめ細かな保健医療活動とポリクリニカのシステムが、経済危機による健康への影響を最小限にくいとめ、医療を向上させてきた実績があります。このことは医療従事者全ての誇りとなっており、私たちが訪れた診療所やポリクリニカで働く医師を始めとする医療従事者、診察や検査、リハビリの順番を待つ多くの人々には笑顔があふれていました。
予防接種先進国、先端医療技術の展開
13種類のワクチンプログラムがあり、VPD(vaccine preventable disease:ワクチンで予防できる疾患)に対する対策は、先進国でした。3種混合とHBワクチン、Hibワクチンの5種混合も行われてきています。
HBワクチンなど開発は自前で行われていて、Hibワクチンは合成抗原とキャリア抗原を結合させた独自のワクチンを開発、インターフェロンやエリスロポイエチンなども生産されています。独自開発のHibワクチンの販売ロイヤリティーは、発展途上国に対しては放棄されています。人に死をもたらす軍事援助(=軍事介入)でなく、また、金儲けに奔走する巨大製薬資本のやり方に対抗して、人の命を救う医療で他国を援助する、社会主義国キューバならではの考え方です。