阪南中央病院

阪南中央病院小児科のトピックス
小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶
最近のアナフィラキシー症例
生後3ヶ月 女 : 粉ミルクによるアナフィラキシー(両肘に湿疹あり)
新生児期にはミルクを飲んだことがある。母乳が十分出るようになり、母乳のみで成長。
9月14日23時30分 夜間にミルクで過ごせるよう久しぶりに粉ミルクを飲ませた。直後から、鼻水、鼻づまり、不機嫌で、首を横に振る動作が見られるようになる。
24時10分病院に到着、元気なく、チアノーゼが見られる。喘鳴は認めない。ミルクによるアナフィラキシーと判断、酸素マスク、0.1%アドレナリン0.01ml/kg 大腿外側に筋注。数分で、チアノーゼ、鼻づまり、首を振る動作は消失し、劇的な改善をみせ、相手をすると微笑み返すようになる。その後、全身に蕁麻疹が出現。輸液、ソルコーテフ・アタラックス投与、入院。当日の朝、退院。
13歳 女 : カシューナッツによるアナフィラキシー(ピーナッツアレルギーあり)
下校後、コンビニで買ったカップつきポタージュスープにお湯を入れて飲んだところ、数分後から、喘鳴と全身の紅斑が出現した。救急車で来院、アドレナリン筋注、輸液、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤を投与、一泊入院し翌日退院。カップにはカシューナッツ入りの表示があった。
「あんしんねっとわーく2008年2月号」にアナフィラキシーを取り上げ、小麦アナフィラキシーの既往のある2歳児が保育所で誤ってビスケットを食べ、喘鳴・呼吸困難を起こした症例とくるみ饅頭を食べた4歳児のショック症例を報告しました。その後も、時々、アドレナリンの投与を必要とするアナフィラキシーの子どもが搬送されます。もう一度、対策を整理することは有益と考えました。
食物アレルギーによるアナフィラキシー
原因としては、卵、牛乳、小麦が食物アレルギーによるアナフィラキシーが多く、最近ではピーナッツ、オーストラリアではカシューナッツによるものが増加していると報告されています。その他、ソバ、果物、甲殻類、魚などが原因です。
特殊型として、食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(Food-dependent exercise-induced anaphylaxis)があり、運動が激しくなる小学・中学・高校生などで、昼の食事(給食)後の体育で、発症するものがあります。エビ、イカ、小麦などが多く報告されています。
重症度
食物によるアナフィラキシーの臨床的重症度が、「食物アレルギー診療の手引き2008」に記載されています。臓器ごとに1~5に分類され、grade3以上で、アドレナリンの筋注(0.01ml/kg)の適応とされます。
食物によるアナフィラキシーの臨床的重症度
Grade 皮 膚 消化器 呼吸器 循環器 神 経
限局性瘙痒感
発疹
じんましん
血管性浮腫
口腔内瘙痒感
違和感
軽度口唇腫脹
全身性瘙痒感
発疹
じんましん
血管性浮腫
上記に加え、
悪心・嘔吐
鼻閉、くしゃみ
活動性変化
上記症状 上記に加え、
繰り返す嘔吐
鼻汁
明らかな鼻閉
咽頭喉頭の
瘙痒感・絞扼感
頻脈(+15min) 上記に加え、不安
上記症状 上記に加え、下痢 嗄声・犬吠様
咳嗽
嚥下困難
呼吸困難・喘息
チアノーゼ
上記に加え、
不整脈
軽度血圧低下
軽度頭痛
死の恐怖感
上記症状 上記に加え、
腸機能不全
呼吸停止 重度徐脈
血圧低下
心拍停止
意識消失
アドレナリン投与
アナフィラキシーに遭遇したことがなく、アドレナリンの劇的な効果を経験していないと、副作用、安全性などへの過剰な心配から、アドレナリン注射が躊躇される場合がありえます。アナフィラキシーショックによる死亡例は、アドレナリン投与の遅れが大きな原因とされています。診療の現場では、アナフィラキシーの診断で、grade3以上なら、ためらわずにアドレナリン0.01ml/kg筋注を行う必要があり、常に準備が必要です。
  • 0.1%アドレナリン 筋注 必要に応じて15分間隔で投与
    →体重30kgまで・・・0.01ml/kg
    →体重30kg以上・・・0.3ml(一律)
アドレナリン投与の前に、酸素投与、可能なら静脈路の確保が望まれます。食物アレルギーではありませんが、ハチ毒によるアナフィラキシーは上気道狭窄による呼吸困難が主で、同様にアドレナリンの投与が必須です。
エピペン
過去にアナフィラキシーを起こした人には、エピペンの携帯をお勧めします。原因食品を摂取して、初期症状=口の中がしびれる、違和感、口唇の浮腫、気分不快、吐き気、嘔気、腹痛、蕁麻疹、咳き込み、喘鳴など=のうちに、ショックに症状が進行する前に自己注射するためのものです。
佐藤らは、エピペンの処方する適応を、①アナフィラキシーショックの既往 ②プレショック症状としての呼吸器症状の既往 ③保護者の処方希望の3項目にまとめています。
エピペンはマイラン製薬により、輸入販売されており、0.15mlと0.30mlの2種類があります。実際の使用は、エピペンをわしづかみに握り、反対側の手で、後ろの安全キャップをはずし、大腿外側、中心部に90度の角度で押し付け、数秒待ちます。押し付けるとバネによって針が出て、そのあと数秒間に規定量のアドレナリンが注入されます。消毒なしで、衣服の上からの注射もOKとされます。エピペンを使用したあとは、症状が改善しても、必ず医師を受診する必要があります。数時間後に、症状が再燃することがあるからです。
参考 :
小児科レビュー2010 総合医学者
食物アレルギーの診療の手引き2008(厚生労働研究)
小児アレルギー学会誌2182):187-195,2007(佐藤さくら)