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Medical guidance

臍炎 尿膜管遺残

小児科医 (病院長) 中田成慶

お臍をアルコールで消毒することで、新生児に臍炎が起きることはほとんどなくなっています。臍肉芽を生じた場合には、硝酸銀処置を行います。 まれに、臍の湿潤部への細菌感染で、周辺皮膚・皮下に炎症が拡大することがあります。多くは、湿潤部のアルコール消毒、軟膏塗布などで治癒しますが、その中に、尿膜管遺残症が含まれます。 尿膜管遺残を伴う臍炎の新生児例を続けて2例経験しました。

【症例1】生後17日 臍脱後、臍からの黄色膿汁と臍周囲の皮膚発赤

正期産(38週)出生体重 29XXg 男児 アプガー点数 9/10で出生

生後17日:
臍脱後に臍周囲の発赤と臍からの膿汁(写真1)で受診
CRP 0.04mg/dl 白血球 12100 桿状球 5% 分節核球 34%
腹壁表在エコー検査:臍から膀胱にかけて索状物を描出 周辺の血流増加あり(エコー1)入院 CEZ投与
生後20日:
臍周囲の発赤は消失、臍から少量の膿汁排出は続く、CCL(ケフラール)経口投与で退院。小児外科へご紹介
膿:細菌培養:MSSA

【症例2】生後21日目の熱 臍の湿潤と周辺皮膚の発赤

正期産(39週)出生体重 37XXg 男児 アプガー点数 8/9で出生

生後21日:
熱、臍の湿潤と臍周囲1cmの発赤
生後22日:
39.0℃ 臍周囲の発赤増悪(写真2)
CRP 6.0mg/dl 白血球 16800 桿状球 15% 分節核球 32%
腹壁表在エコー検査:臍から膀胱につながる索状物を描出(エコー2)
入院 CEZ100mg/日
生後23日:
解熱
生後25日:
CRP 2.2mg/dl 白血球16000
CRP 2.2mg/dl 白血球16000
生後27日:
CEZ ⇒ CCL経口に変更し退院。小児外科へ紹介。

尿膜管遺残とは

胎生の早期(2ヶ月)に臍帯と膀胱は尿膜(allantois)でつながり、臍帯と腸は卵黄管(臍腸管)でつながっています。膀胱と臍のつながりが尿膜管(urachus)で、膀胱から腹部正中を通り臍に向かって管が走り、膀胱が骨盤腔内に下降するにつれて、索状になり、閉鎖します。この尿膜管が閉鎖せずに残ったものが尿膜管遺残です。
男性に多く、男性:女性は2:1、遺伝性は認められません。

尿膜管遺残の分類

尿膜管遺残および尿膜管異常は解剖学的に以下のように分類されます。

  1. 尿膜管洞(Urachal sinus): 感染が慢性化し、臍瘻を伴う。
  2. 尿膜管のう腫(Urachal cyst): 尿膜管の近位部、遠位部がともに閉鎖、閉鎖腔内で感染が起こると、発熱や下腹部痛がおこる。
  3. 尿膜管瘻(Urachal fistula): 尿膜管開存・臍尿瘻とも呼ばれる。膀胱頂部と臍とに連続性が保たれているもの。臍から尿が漏出する。
  4. 尿膜管憩室(Urachal diverticulum): 膀胱近傍の尿膜管が憩室状に膀胱頂部を形成する。プルンベリー症候群に合併しやすい。

尿膜管洞は、最初の1~2ヶ月で臍がいつまでも乾燥しない、臍が化膿することで診断されます。尿膜管のう腫は年長~青年期になって、恥骨上部の疼痛、腫瘤、膀胱刺激症状などで発見されることが多く、2014年、フィギュアスケートの羽生選手が尿膜管のう腫で、手術を受けた報道を思い出される方もあるのではないでしょうか。
尿膜管瘻は、尿が臍から出てくることになり、早急な外科的治療が必要になります。
尿膜管憩室はほとんど治療を必要とせず、発見されないままになることも多いようです。

メッケル憩室は卵黄管遺残

胎生期には、臍と小腸は卵黄管でつながっています。この卵黄管(臍と腸管のつながり)が消えずに残ったものが卵黄管遺残です。卵黄管遺残で、つながりの腸側だけが突起物として残ったものがメッケル憩室です。メッケル憩室は全人口の2%にみられ、そのうち20%が下血・腹痛などの症状を発症すると言われています。

お臍がいつまでも乾燥しない、お臍が化膿している!

このような場合には、腹壁の表在エコー検査が有用です。尿膜管遺残の診断がついたら、小児外科を受診していただくことになります。