診療案内

Medical guidance

離乳食への早期の介入による食物アレルギー予防

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

食べて予防する

2016年6月16~18日に開催された日本アレルギー学会のトピックスは、食べることで食物アレルギーが予防できるとする研究を次々と発表してきたロンドン大学のGideon Lack氏がシンポジストとして登壇したことでした。
Lack教授は、2015年、アレルギー性食品の摂取がアレルギー予防に有効な方法であることを示した初めてのランダム化比較試験(RCT)の成果をLEAP studyとして発表し、続いてLeap-On study、さらにEAT studyを発表し、食物アレルギー予防のトピックスである経口寛容現象を実証する三つのstudyを主導してきました。 乳児期早期から離乳食として積極的に食物を与える介入・誘導が食物アレルギーの予防・発症の抑制となるとする、魅力的かつ実践的な成果が提示されました。これらの成果が、離乳食の進め方や食物アレルギーの予防のための一般的なガイドラインとして定着するにはまだ多くの未解明な点を克服する必要がありますが、食物アレルギーの予防法は制限・除去から、早期摂取・早期介入へと大きく変化していることが示されました。

LEAP study (Learning Early About Peanu study team) ピーナッツの早期摂取でアレルギーが抑制される

Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy
N ENGL J MED : 372 , 803-813, 2015
重症の湿疹または卵アレルギーの生後4ヶ月から11ヶ月の乳児640人をピーナッツエキスによるプリックテストで陽性群と陰性群に分け、その各々がピーナッツ摂取群と除去群とにふり分けられた。ピーナッツ摂取はピーナッツ蛋白として毎週7.7gを60ヶ月間継続(摂取群)、または完全非摂取(除去群)とし、60ヶ月時点でピーナッツアレルギーを発症した子どもの割合を比較した。
60ヶ月でのピーナツアレルギーの発症率は、摂取群で明らかに少なかった。

結論:乳児期早期のピーナッツ摂取は、ピーナッツアレルギーのハイリスク状態にある乳児のピーナッツアレルギーを有意に減少させ、ピーナッツに対する免疫反応を変化させた。

この報告を受けて、世界のアレルギー学会は共同で以下のような暫定的な統一見解をしている。

  • ピーナッツの導入を遅発表らせることがピーナッツアレルギーのリスクを高めることが示されたので、ピーナッツアレルギーが多い国では早期(生後4~11ヶ月)にピーナッツを導入することを推奨する。
  • その際、重症湿疹・卵アレルギーの乳児では、アレルギー専門家による皮膚プリックテストや負荷試験による診断を受けた上での導入が望ましい。
  • ピーナッツ耐性誘導のための最適量や最短期間は不明である。

LEAP-On study 乳児期早期の導入による耐性は持続する

Effect of Avoidance on Peanut Allergy after Early Peanut Consumption
N ENGL J MED : 374 , No15 , 1435-1443 April 14, 2016
The persistence of Oral Tolerance to Peanut (LEAP-On) Study Team

LEAP studyに参加した子どもたちに、次の1年間ピーナッツを除去した場合、耐性が持続するのか、1年間の除去でピーナッツアレルギーが増加しないかのスタディーが行われ、LEAP-On studyと名づけられた。いったん耐性が誘導された後、ピーナッツ除去を行った場合、耐性が持続するのか、耐性が失われるのかが、検討された。
LEAP studyに参加したピーナッツ摂取群・除去群の550人の子どもたちが両群とも、さらに1年間、ピーナッツを除去し、6歳時点でのピーナッツアレルギーが調べられた。
その結果、6歳時点でのピーナッツアレルギーは、摂取群で4.8%、除去群で18.6%であった。

両群でそれぞれ3人の新たなピーナッツアレルギーの発症があったが、有意差を示すものではなかった。
この結果から、乳児期早期から60ヶ月ピーナッツを摂取した後、1年間ピーナッツを除去した場合にも、その後のピーナッツアレルギーの発症増加は起こらず、耐性獲得が持続したことが示された。すなわち、予防効果は少なくとも1年間は持続することが証明され、乳児期からの食物摂取が食物アレルギーの発症を予防し、その耐性は一定期間持続することが示された。

EAT study (Enquiring about tolerance study team) 早期離乳食開始の予防効果

Randomized Trial of Introduction of Allergic Foods in Breast-Fed Infants
N ENGL J MED :374 , No18 , 1733-1743 May 5, 2016

離乳食を早めることによって、食物アレルギーを予防できないか、ミルク、卵、ピーナッツ、ゴマ、魚、小麦の6種類の食物を生後3ヶ月からはじめることで、食物アレルギーの発症がどうなるかが検討された。生後3ヶ月から6種類の食物摂取を開始するという大胆なスタディーであった。
対象者はハイリスク患者でなく、一般人口からの母乳のみで保育している乳児で、1303人が参加した研究の報告である。参加者を早期離乳食導入群(生後3ヶ月~5ヶ月に離乳食開始)と標準離乳食導入群(生後6ヶ月に離乳食開始)の2群に分け、6種類の食品を離乳食として与え、食物アレルギーの発症が2群で差が出るかどうかが検討された。

(A)早期離乳食導入群(生後3~5ヶ月)への6種類の食品 導入計画

  1. 最初にミルク(週に40~60mlの牛乳ヨーグルトを2回
    1~5は順不同に開始
  2. 卵(加熱した卵、週に53g未満の小さめのもの1個)
  3. ピーナッツ(週にスプーン3杯のピーナッツバター)
  4. ゴマ(週にスプーン3杯のゴマペースト)
  5. 魚 (白身魚 週に25g)
  6. 最後に小麦(小麦製のシリアルビスケット)

(B)標準離乳食導入群(生後6ヶ月)

5ヶ月まではピーナッツ、卵、ゴマ、白身魚、小麦は食べない。
ミルクは1日300ml以下なら研究参加許容

プライマリーアウトカムは1歳から3歳までの間に発症した1種類以上の食物アレルギーで、その発症率が検討された。ITT(Intention-to-Treat)分析(プロトコールを遵守できなかった参加者を含めた母数での解析)では、標準導入群では595人中49人で、発症率は7.1%、早期導入群では567人中32人で、発症率5.6%と有意差は示されなかったが、早期導入群に低い傾向が認められた。プロトコールを一定程度以上遵守できた参加者を対象としたPer Protocol解析では標準導入群7.3%、早期導入群2.4%で、早期導入群に有意に低い結果が得られた。

1種類以上の食品に対する発生率

特に、ピーナッツ(2.5%対0%)、卵(5.5%対1.4%)では、有意に早期導入群での発症率が低いことが示された。他の食品では、両群で明らかな有意差は認められなかった。

ピーナッツとタマゴ

3ヶ月からの早期離乳食の開始が6種類の食品で食物アレルギーの発症を増加させず、むしろ減少させ、卵とピーナッツでは明らかな抑制効果があった。ITT解析では早期導入の効果は有意には出なかったが、ピーナッツ単一の検討であったLEAP studyから、より一般的な6種類の食品の早期介入へと進み、食べることで食物アレルギーを予防するという考え方は大きな流れとなりつつある。

早期介入による食物アレルギーの予防

食物アレルギーを発症した子どもに対しては、アナフィラキシーへの対処と経口免疫療法による治療が行われる。
予防に関しては、一連の研究で、食べて予防する方向、アレルギーを引き起こす可能性のある食品を乳児期早期から摂取することの重要性が示された。除去から摂取へ、さらに早期からの積極的介入の重要性などが、現状でのトピックスとして注目される。