診療案内

Medical guidance

上部尿路感染症(その2)と質の高い超音波検査

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

はじめに

2016年2月の小児科トピックス「上部尿路感染症とCAKUT」の続編です。症例3は不明熱でご紹介いただき、来院時には尿検査異常なし、CRP高値、白血球増多の細菌感染症パターンを繰り返し、腹部超音波検査中に間欠的腎盂拡大(VURと水腎症)をたまたまとらえることができて、急性腎盂腎炎と診断した症例です。症例4は、高熱とCRPの極端な高値で、腹部エコーを行ったところ、右腎の上極に低輝度・血流低下病巣が検出され、急性細菌性巣状腎炎(AFBN : acute focal bacterial nephritis)と診断した症例の報告です。臨床の場で超音波検査はなくてはならないものですが、中でもレベルの高い超音波検査が行える阪南中央病院の超音波検査室は病院機能を支える大きな役割を果たしています。

症例3 生後4ヶ月 男児 VURと間欠的水腎症を伴う腎盂腎炎

第1病日:
高熱、CRP 8.23mg/dl 白血球数22300で、ご紹介いただく。尿検査:蛋白(‐)潜血(‐)沈渣白血球1~4/HPF、髄液検査:細胞数5/μl 血液培養:菌(‐)、腹部エコー:異常所見なし
CTRX投与で3日後に解熱。病巣不明の不明熱の診断で、尿路感染症に準じて、合計2週間の抗生剤投与(CCL 30mg/日 分3)で退院。
退院後、14病日にCCL服用が終了
第16病日:
CCL服用を終了2日後に、再び熱発。以後、熱が続くが、他の症状なし。
第20病日:
当科に受診、CRP 5.56mg/dl白血球数19200 カテーテル尿採取直前に大量に排尿したため、カテーテル尿採取せず。尿検査:蛋白(‐)潜血(‐)沈渣白血球5~9/HPF。
腹部超音波検査:異常所見なし抗生剤(CTRX)経静脈的投与で、2日後に解熱。
第22病日:
腹部超音波検査中、拡大がない右腎盂が、突然、腎外に突出する水腎症を示し、その約1分後に排尿とともに腎盂拡大は消失。とらえた貴重な現象を写真に撮影。VURと間欠的水腎症を伴う腎盂腎炎と診断。間欠的というより瞬間的と名づけるのが適切な2~3分間の出来事でした。小児泌尿器の専門医をご紹介し、受診予定日を決めて退院。

3例1(2016年2月号)同様、尿所見に異常を示さない尿路感染症で、腹部超音波検査で瞬間的な水腎症をとらえたことで診断を確認できた症例でした。幼児の腹痛の鑑別診断に間欠的水腎症が挙げられますが、数分間での水腎症の発症と消失を確認した貴重な症例です。

症例4 9歳 男児 急性巣状細菌性腎炎(AFBN)

発病1病日:
高熱 嘔吐 下痢 小児科クリニック受診 採血でCRP 30.2mg/dl 白血球数16100 極端なCRPの上昇でご紹介いただく。
高熱でぐったり感あり、右季肋部に圧痛通、叩打痛を認める。尿検査:蛋白(2+) 潜血(2+) 尿沈渣:赤血球1~4/HPF 白血球5~9/HPF。プロカルシトニン>10ng/dL
腹部超音波検査で右腎上極に輝度の上昇とドプラーで血流低下を示す巣状病変を認め、急性巣状細菌性腎炎を疑う。
クレアチニン0.65mg/dlで、軽度の腎機能障害あり。CTRX点滴投与。
第3病日:
解熱 クレアチニン0.58mg/dlと低下傾向を示す。
第4病日:
造影CT検査:右腎上極に造影欠損像を確認。AFBNと確定診断。
第8病日:
抗生剤を経口CEXに変更 10日間投与。
第11病日:
CRP 0.82mg/dl 白血球5900 クレアチニン0.4mg/dlに正常化し、退院。
第18病日:
腹部超音波検査:右腎ほぼ正常化

急性巣状細菌性腎炎(AFBN)は膿瘍形成を伴わない腎実質の炎症性疾患で、画像診断の発達で診断が可能となり、報告数が増加してきています。しかし、私たちが典型的なAFBNを経験するのはこの症例が初めてで、稀にしか遭遇しない珍しい疾患でもあります。不全型があるかも知れず、腎盂腎炎の症例では腎のカラードプラー検査をきちんと行うことが重要と考えています。発熱以外の症状がなく、強い炎症反応にかかわらず、尿路感染症を疑わせる尿中白血球の増加や尿培養の陽性例は少ないとされています。診断には超音波検査が重要で、病変部は高エコー域を示し、カラードプラーでは乏血域を示します。造影CTでは低吸収域として描出されます。
VUR合併例が多いことから、感染経路は上行感染が大半と考えられますが、血流感染もありうるとされています。この症例では、血液培養は陰性でした。
今後、VURの検索、DMSAシンチグラフィーなどを必要時に行うことを考慮しながら、定期的な超音波検査での経過観察を続ける予定です。

超音波診断の進歩と質の高い画像解読力

超音波検査が診断および超音波ガイドによる穿刺などで医療に果たす役割はますます大きくなっています。症例3、症例4とも、超音波検査なしには診断できなかった症例でした。阪南中央病院の超音波検査室の診断レベルは高く、臨床を支える大きな役割を果たしてくれています。診断に困ったとき、その期待に応えてくれる超音波検査室の質の高い画像診断力にいつも助けられています。
地域の先生方にも診断の補助として阪南中央病院超音波検査室を一層ご活用していただけたら幸いです。