診療案内

Medical guidance

上部尿路感染症とCAKUT

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

症例1 男児

生後6ヶ月

第1病日:
熱が始まる、咽頭発赤があり、CFPN-PI投与を受ける。
第2病日:
高熱と嘔吐、BCGは1ヶ月前の接種で、発赤と痂皮形成が見られる。BCGの自然経過か、川崎病による過剰な免疫反応が加わっているのか気がかり。
インフルエンザ(-) アデノ(-) CRP 5.2mg/dl 白血球17700 ご紹介にて入院。
UTIを疑い、カテーテル尿採取:蛋白(-) 潜血(-) WBC1~4/HPF CTRX点滴投与で下熱。
川崎病の診断基準を満たさず。病巣不明の細菌感染症の診断で退院。

生後8ヶ月

第1病日:
熱が始まる。
第2病日:
高熱、白血球25600、CRP 12.7mg/dlで、ご紹介にて入院。抗生剤投与なし。 インフルエンザ(-)アデノ(-)溶連菌(-) カテーテル尿採取:蛋白(2+)潜血(+)尿沈渣白血球:many 上部UTI=急性腎盂腎炎として、CTX投与 エコー検査で腎・膀胱に異常なし
第4病日:
下熱
尿培養結果:大腸菌 1.0×105
抗菌薬治療:7日間のCTX治療の後、ケフラール30mg/kg 7日間の合計14日間
排尿時(排泄性)膀胱尿道造影検査(VCUG)を実施:VUR(膀胱尿管逆流症)は認めず
抗菌薬による予防投与:生後6ヶ月時のエピソードもUTIであった可能性が高く、2週間治療のあと、2ヶ月間の予防投与を行う(治療量の1/6量・1日1回投与)

腎盂腎炎と子どもの熱  小児の腎盂腎炎の整理

乳幼児の上部UTIの診断は、乳幼児の採尿が困難であることから、しばしば適切な診断が行われないままに抗菌薬が投与されることが起こります。その後、熱が遷延し受診されたとき、膿尿を認めないため、UTIとの診断が困難な場合が起こります。また、不適切な抗菌薬の使用では、基礎にあるVUR・先天性尿路奇形(CAKUT)の発見を遅らせる危険性、耐性菌を増加させることなどが危惧されます。適切な対応を怠ると、再発を繰り返すことで、腎の瘢痕化、腎障害、腎不全への道をたどる危険もあります。
膿尿を伴わない腎盂腎炎では、尿培養検査で診断したり、CAKUTの存在で推定したりすることが必要になります。
小児科医にとって、熱の子どもに腎盂腎炎を疑うことは常識ですが、その診断や治療に至る過程は、必ずしも整理されていないと思われ、今回のテーマとしました。

  • カテーテル尿採取 : 血液検査が細菌感染パターンを示しながら、病巣が特定できないときは、カテーテル尿を採取すべき。放尿できる年齢なら、中間尿で代用できる。
  • 病因 : 病原菌の80%は大腸菌。次いで、腸球菌で、セフェムには耐性を示すが、アンピシリンには感受性が高い。
  • UTIの診断 : 培養でカテーテル尿の場合5×104/ml以上、中間尿なら105/ml以上
  • 疫学 : 新生児・乳児(1歳未満)は男児に多く(女児の5倍)、1才以降は女児の罹患が増加する。
  • 膿尿が認められなくてもUTIは除外できない : 膿尿を認めないUTIが10%以上あることが報告されている。
  • 治療 : 3~7日の経静脈的抗菌薬の投与の後、経口薬へ 合計14日間
  • 予防投与 : Ⅲ度以上のVURが認められる場合は、治療量の1/3~1/10量での予防投与を続け、UTIの再発、腎の瘢痕化予防を行う。この場合は、定期的健診が必要で、小児腎臓の専門家による経過観察が望ましい。
  • CAKUT(congenital anomaly of kidney and urinary tract)の検索 : UTI発症例ではCAKUTの頻度が高いため、エコー検査で異常所見があったり、再発を繰り返す症例では、VCUG、DMSAシンチグラフィーなどが必要。

新生児期にUTIを発症 重複腎盂尿管を認めた症例

症例2 35週1日 2748g

生後18日目:NICU入院中に熱発、CRP 6.4mg/dl 白血球16300 検尿:蛋白(±) 潜血(±)
沈渣:白血球many 抗菌薬で下熱、尿も正常
腹部エコー : 右腎臓上極に腎盂拡大
腹部MRI : 右腎上極腎盂腎杯の拡大、尿管の膀胱への開口部異常
小児泌尿器科専門医を受診していただき右側重複腎盂尿管と確認されバクタの予防投与を行いながら経過観察中。

Weigert Meyerの法則:完全重複尿管では、2本の尿管は途中で交差し、上半腎尿管は尾側に、下半腎尿管は頭側に開口する。