診療案内

Medical guidance

EBウイルス感染症の臨床

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

はじめに

7月伝染性単核症を2例経験しました。さらに1例、疑い症例(3才)があります。EBウイルス感染症の知識の整理を行い、血小板減少症を伴う症例が多いことを再確認する必要を感じました。

症例1 8歳女児 6日間の熱、扁桃腺炎 著明な肝腫

【経過】熱6日目で、CRP < 0.1mg/dl、白血球11500でご紹介にて初診。坐位で胸部聴診のためTシャツを上げた瞬間、腹部の突出が目に入る。肝:季肋下4cm、脾:2cm、頸部リンパ節1.5cm(両側)。異型リンパ球19%、AST 149 IU/L、血小板27万。
この時点でEBVCAIgM 7倍、EBVCAIgG 2.5倍に上昇、EBNA陰性。
EBウイルスによる伝染性単核症の診断で経過観察。
12病日に下熱。その後急速に肝脾腫は縮小し、肝機能も正常化。

症例2 10歳女児 6日間の熱、頸部リンパ節腫大、血小板減少(8万)、異型リンパ球11%

【経過】発熱、咽頭痛で始まり、第8病日に、頚部リンパ節:最大40mm、20mmのもの多数(両)、CRP 0.1mg/dl、白血球5900、異型リンパ球11%、血小板8万。
第13病日、高熱が続きALT 99 IU/Lに上昇。血小板は22.3万に正常化。肝脾腫を認め、脾臓は季肋下1cm。
第19病日、下熱。以後、症状及び検査データは改善。

EBウイルスによる伝染性単核症(IM)

【発症機序】EBウイルスは咽頭、唾液腺上皮で増殖し、ウイルス血症、末梢Bリンパ球に感染、さらに、肝臓・脾臓などの網内系全体への感染が起こる。唾液の飛沫を介して感染する。潜伏期は6週間と長い。
【臨床症状】熱、リンパ節腫大、咽頭炎、軟口蓋の微小出血、脾腫は半数に、肝腫大は20~30%に出現。末梢血中に異型リンパ球。ABPCで皮疹が出現。
【疫学】乳幼児では初感染例の90%が無症状か上気道炎症状で経過する。5歳までに約90%が既感染となっていたが、近年80%程度に低下傾向にある。好発は10歳までの小児で、症例の大半を占める。
【診断】VCAIgM;初感染では約1週間で陽性になり、1ヶ月でピークを示し、2~6ヶ月で消失する。VCAIgG ; 約1ヶ月で陽性になり、生涯陽性。EVNA ; 臨床経過の後期で出現し、生涯残存。乳幼児では陽転に1年以上を要する例もある。
【病態】EBウイルス感染B細胞に対するT細胞(主にCD8陽性)の急性免疫反応が基本病態である。IMはEBウイルスの初感染で発症し、2~4週の経過で回復するself-limitedな経過をたどる。治療を要さない例がほとんどである
【治療及び合併症】IMでは、完治し脾臓が触知できなくなるまで、コンタクトスポーツを禁ずる。スポーツ参加による脾破裂の予防のためである。
脾破裂、上気道粘膜の炎症性浮腫による気道閉塞、脳炎、髄膜炎、神経麻痺、心筋炎、自己免疫性溶血性貧血、重篤な血小板減少症、再生不良性貧血などがまれに起こる。この場合、プレドニゾロン1mg/kg(最大20mg)7日間投与とその後の漸減治療が行われる。

IMと血小板減少症

IMの急性期には一過性の中等症以上の血小板減少を認めることが多い。Nelsonの教科書によると「50%を超える患者に軽度の血小板減少症(5~20万/μl)が起こるが、紫斑が生じるほどの低い値となることはまれである」。脾機能亢進、血小板抗体などの機序が関与していると考えられるが、IMの特徴的現症として、血小板減少に注目する必要がある。
紫斑を生じる程度の重い血小板減少症では、ステロイド剤の投与が行われる。

症例3(2009年の症例) 4歳10ヶ月 男児 発熱2日目 下痢 嘔吐 咳

発熱2日目でCRP 1.5mg/dl 白血球6300 血小板12.5万、脱水状態
第5病日 熱が続き、咳が続く、レントゲン検査で胸水貯留、胸水は黄色透明で膿性でない、CRP 0.3mg/dl、白血球14600、異型リンパ球19%、LDH 860IU/L、血小板9.3万、フェリチン947ng/ml、トリグリ484mg/dl、sIL2R 6060U/ml、→ウイルス関連血球貪食症候群とそれによる胸膜炎としてステロイド剤と大量ガンマグロブリン投与を開始、下熱したが、ぐったり感が続く。
第7病日 白血球19600、異型リンパ球29%で、EBV-HLHの疑いで、第8病日大阪府立総合母子医療センター血液腫瘍科へ転院していただく。転院後、けいれんと溶血性貧血が続発し、PSL 1mg/kg、ネオーラル(CyA) 3mg/kg/dで治療。ウイルス抗体価より、EBVの初感染で、EBウイルス量は2×10e4copy/ml、EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-HLH)との確定診断のご報告をいただく。第23病日退院。

EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(EB-virus associated hemophagocytotic lymphohistiocytosis EBV-HLH)

発熱、血球減少、DICを主症状とし、多彩な臓器障害を伴う症候群であり、致死的経過をとるものも少なくない。EBウイルスが、本来親和性の高いBリンパ球でなくTリンパ球(もしくはNK細胞)に感染することが証明されている。そのために過剰なサイトカイン産生をきたす。細胞傷害のためにLDHが上昇、高サイトカイン血症を反映して可溶性IL2受容体の上昇と尿β2ミクログロブリンの上昇が見られ、マクロファージ活性化の結果、高フェリチン血症、脂質代謝異常(TG高値、T-chol低値)を認める。進行が早く重症化するため、早急な3次医療機関への転送が必要となる。
大量γグロブリン、副腎皮質ステロイド、シクロスポリンA、エトポシドなどが投与される。

参EBウイルス感染症の多彩な病態

EBウイルスは、急性感染症、リンパ増殖症、悪性リンパ腫、がんなどの多様な疾患と関連している。小児では、伝染性単核症、EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症、慢性活動性EBウイルス感染症、X連鎖リンパ増殖症(XLP)の原因ウイルスである。慢性活動性EBウイルス感染症では蚊刺部の潰瘍化、三種混合(DPT)又は四種混合(DPT-IP)ワクチン接種後に脳症様症状を呈する例があることが報告されている。X連鎖リンパ増殖症は、男児で、EBV-HLHで発症することが多いとされる。IM/EBV-HLHで、血性IgA・IgM高値例、低γグロブリン血症では、XLPを疑うべきとされる。