診療案内

Medical guidance

熱性けいれん:熱過敏性けいれん

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

前号は、「熱性けいれん診療ガイドライン2015」の紹介でした。今回は、最近の熱性けいれんに関連する4症例及び入浴けいれん症例を報告します。入浴けいれんの1例は熱性けいれんとして観察中で、もう1例はDravet症候群(あんしんねっとわーく105号掲載)です。
ガイドラインは、再発予測に関して、以下のように要約がなされています。

  • 熱性けいれんの再発予測因子は以下の4因子である
    1. 両親いずれかの熱性けいれん家族歴
    2. 1歳未満の発症
    3. 短時間の発熱-発作間隔(概ね1時間以内)
    4. 発作時体温が39℃以下
      いずれかの因子を有する場合、再発の確率は2倍以上となる。
  • 再発予測因子をもたない熱性けいれんの再発率は約15%である
    なお、再発予測因子を有する症例も含めた熱性けいれん全体の再発率は約30%である。

この4項目に焦点性発作か24時間以内の反復発作、既往歴としての神経学的異常・発達障害を加えた6項目が発熱時ジアゼパム予防投与の適応基準とされています。(あんしんねっとわーく前号)

症例1 1才0ヶ月 9kg 男児 熱性けいれん断続4回とけいれん重積

経過

朝から38℃、犬吠様の咳

18時40分:
熱と咳が続き、休日診療所受診中、①眼球固定、強直性けいれん、ルート確保、ジアゼパム5mg iv、けいれんは約10分で止痙、当院へ救急搬送。救急車で、当院に向かう途中で、②同様のけいれん発作が再発、数分間で止痙。
19時30分:
当院到着時、40.3℃ 到着後、③④けいれんを2回繰り返し、ミダゾラム2mg、2mg、1mgの計5mgとノーベルバール(PB)15mg/kg、ミダゾラム0.1mg/kg/時での持続投与に移行。
この間、けいれんの持続を思わせる呼吸促迫が約30分間続き、その後、徐々に呼吸は正常化、体動、啼泣も正常化した。

当日頭部MRI:脳内に異常所見なし 髄液:異常なし CRP 0.85mg/dl 白血球16500
胸部レントゲン:喉頭部に狭窄所見あり。デキサメサゾン0.15mg/kg投与。

翌朝、大量のベンゾジアゼピン、PBの投与後に関わらず、意識正常化。軽度のふらつきのみ。中枢神経の異常を思わせる所見なし。

診断

複雑型熱性けいれん クループ

既往歴

2ヶ月前に熱性けいれん 10分  Hib , PCV13 3回接種済

家族歴

家族、姉2人 けいれんなし

考案

複雑型か単純型か:ガイドライン2015では単純型と複雑型を以下のように分類しています。

熱性けいれんのうち、以下の3項目の一つ以上をもつものを複雑型熱性けいれんと定義し、これらのいずれにも該当しないものを単純型熱性けいれんとする。

  1. 焦点性発作(部分発作)の要素
  2. 15分以上持続する発作
  3. 一発熱機会内の、通常は24時間以内に複数回反復する発作

この症例は明らかに複雑型に属し、脳波検査を予約しました。

  • ジアゼパムによる坐薬の予防:発作が15分以上遷延したと考えられることから、発熱時にジアゼパム坐薬の使用の必要性を説明し、退院時にお渡しし、あわせて、保育所あてに、発熱時のダイアップ坐薬使用をお願いする手紙を書きました。
  • ワクチン:ガイドラインでは、全身状態が良好なときには間隔をあけずに、接種可能とされていますが、現在、麻疹・風疹の流行はなく、次のMRワクチンは3ヶ月間隔を置いての接種するよう、かかりつけの先生にお願いしました。
  • けいれん重積、脳症疑い:入院当日の夜間、頭部MRI検査・髄液検査を実施、翌日には意識は回復し、脳症は否定されました。ノーベルバール投与後、なおけいれんが再発する場合に備えて、現在試行中の「大阪府重篤小児患者受け入れネットワーク」経由での3次医療機関への転送が必要と考えていましたが、転送は不要でした。

症例2 4歳6ヶ月 男児 熱性けいれん11回(最終2歳8ヶ月)

当院への受診は、2歳0ヶ月の7回目から。頭部MRI, MRA検査:著変なし、脳波検査;てんかん性の突発波を認めない。ジアゼパムの予防投与に関わらず、2歳8ヶ月まで合計11回の熱性けいれんを発症。10回目のけいれんの後、デパケン投与を開始し、初期量での開始直後に11回目の熱性けいれんを発症。その後、維持量に増量し、発作は消失した。

考案

ガイドラインの抗てんかん薬の内服の要約は以下の通りです。

  1. 抗てんかん薬の持続内服は原則推奨されない
  2. ジアゼパム坐薬による予防をはかったにもかかわらず長時間(15分以上)のけいれんを認める場合や、ジアゼパム坐薬の予防投与を行っても繰り返し発作がみられた場合は、抗てんかん薬の継続的内服を考慮する

デパケン投与は有効で、以後約1年6ヶ月間、熱が出てもけいれんの発症は認めていません。今後、脳波検査を行いながら、デパケンの中止時期を決定していく予定です。発達は正常です。

  1. 1才0ヶ月に熱性けいれん。
  2. 1才1ヶ月にに熱性けいれん。
  3. 1才1ヶ月 入浴中に強直性けいれん1~2分(無熱性)
  4. 1才2ヶ月 入浴直後、歯磨き中に3分間の強直けいれん。
    脳波:異常な突発波を認めない。MRI:頭蓋内に著変なし。
  5. 1才5ヶ月 熱性けいれん。
  6. 2歳5ヶ月 微熱で強直-間代けいれん3分、ジアゼパム坐薬が間に合わず、止痙後39℃に上昇。
    脳波検査:異常なし。発達に問題なし。

熱性けいれん+熱過敏性として、入浴に注意しながら(できればシャワーで)、ジアゼパム坐薬の予防投与で観察中です。

1才7ヶ月 Dravet 症候群 入浴中の無熱性けいれんと熱性けいれんの重積

生後4ヶ月、入浴中に強直性けいれん、意識消失2回、生後8ヶ月時、39℃で熱性けいれん、その7日後(8ヶ月)約30分のけいれん重積。この時点での発達は正常。
脳波異常なし。頭部MRI:頭蓋内著変なし
9ヶ月時、大阪府立母子医療センター神経科受診、Dravet症候群の疑い。デパケン服用開始。遺伝子(SCN1A)解析検査の予定。
1才2ヶ月、1才4ヶ月に熱発時にけいれん重積、2~3日のミダゾラムの持続静脈投与を必要とした。
今後、熱発時には重積回避のため、早めの入院とけいれん予防、早めの止痙治療を心がけていきます。