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Medical guidance

早発型新生児BGS敗血症と新生児急性感染症対策

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

新生児細菌性敗血症

新生児の敗血症は、GBS、大腸菌K1株、リステリア菌が3大原因であり、生後2~3ヶ月以後の重症細菌感染症とは、起炎菌に大きな違いがあります。GBSの場合、早発型は、RDSと区別できないような肺炎を発症することが多く、遅発型は髄膜炎が多いとされます。
早発型の細菌感染症・細菌性敗血症の場合、絨毛羊膜炎が背景となる場合が多く、絨毛羊膜炎の疑いがあれば、sepsis work-upを行った上で、予防的に抗菌薬投与を開始し、48時間後をめどに、感染徴候がないことをもって抗菌薬を中止することが通常の対処法です。
最近、早発型のGBS敗血症を経験しました。経過を報告し、危険因子を持つ新生児に対するsepsis work-upの重要性を再確認したいと思います。

症例 早発型GBS敗血症 生後12時間で血液培養陽性

母の状態

母の状態と分娩経過:妊娠糖尿病でインスリン使用  36週での腟培養:GBS陰性

  • 39週3日

    分娩誘発開始 誘発開始 約12時間後 熱37.7℃
  • 39週4日

    母37.7℃が続く 胎児に一過性徐脈出現 nonreassuring fetal status:NRFS
    早朝、未破水 小児科医師立会いで緊急帝王切開

子の状態

  • 39週4日 出生

    3159g Apgar Score 9/9 胎児心音異常による緊急帝王切開
    新生児急性感染症の危険因子として、母親の熱、胎児心音異常・NRFS
    鼻腔、皮膚、静脈血培養検査を実施
    CRP0.09mg/dl 白血球9500(Band22% Seg7%、I/T比0.76)
    抗生剤投与開始:ABPC100mg分2+CTX100mg分2
  • 生後12時間

    血液培養陽性報告 G+球菌(GBSの可能性が高い) 細菌性敗血症と診断
    体温38.0~38.2℃  呼吸数50回/分  心拍数140回/分
    CRP4.06mg/dl 白血球24500(好中球85%)に上昇
    髄液検査:細胞数26(bloody tap、出血による細胞数増多と判断)→髄膜炎は否定
    抗生剤を敗血症モードに変更 ABPC200mg分4+GM7.5mg/kg分3
  • 生後24時間

    CRP7.26mg/dl  白血球27000(Band57% Seg17% IT比:0.77)
    その後、良好な経過をたどる。
    5日目培養結果でGBSと確認、ABPCへの感受性を確かめて、GM中止し、ABPC単剤投与にdeescalation。出生児のベビーの鼻腔、皮膚からも同じGBSが検出された。
    ABPC200mg分4 合計10日間投与で、治療終了。

絨毛羊膜炎による新生児sepsisへの対処 12時間後のCRP検査は有用

絨毛羊膜炎の存在は、新生児sepsisの危険を有意に増加させます。絨毛羊膜炎で出生したベビーに対する、抗菌薬の投与期間について検討した論文がPediatrics June 2014に掲載されています。絨毛羊膜炎の頻度、感染症発症の頻度を見る上で参考になる論文です。

絨毛羊膜炎の診断基準

母体の熱38℃≧、母体の白血球増多、子宮の圧痛、羊水の悪臭、母体又は胎児の頻脈

  • 35週以上の新生児12121人を調査
  • 絨毛羊膜炎合併は554人(4.6%)、全員NICUに入院。
    血液培養後、ABPC+GMによるempiric therapyを開始
  • 入院12時間後に、CBC、CRP検査(IT比の感染症基準:immature to total neutrophil >0.2)
  • このうち髄液検査実施は120人(22%)、全員髄液培養検査陰性
    血液培養陽性:4人(0.7%) この4人の髄液培養:全員陰性

この結果から、健康に見えるベビーでは48~72時間を上回って、明確な理由なしに抗菌薬の使用は行うべきでないとの結論で、抗菌薬の安易な長期投与傾向に警告を発しています。
絨毛羊膜炎で生まれたベビー全例に、血液培養を含めた検査を行い、きちんと感染兆候を把握することの重要性、そのうち22%(全出生数に対する割合は1%)に髄液検査が実施されていること、CRPを正当に利用していることなど、新生児の現場で仕事を行う者として、納得のデータです。
また、感染兆候の評価を、入院12時間後の検査で行っている点は参考にすべきと考えます。白血球の変化は、素早く、ほぼリアルタイムで判断できますが、CRPは通常12時間程度遅れます。そのため、出生時のデータでは上昇なしの結果で、24時間後の再検査では急な上昇に驚くことになります。感染を疑っている場合、生後6~12時間後のCRP再検査は重要な情報となります。

新生児急性感染症とsepsis work-up

  • 出生児の急性細菌感染症の危険因子は、絨毛羊膜炎(母体の熱・CRPの上昇、白血球増多、羊水の悪臭、母体又は胎児頻拍など)と24時間(又は18時間)以上の前期破水(PROM)、蘇生を必要とした新生児仮死、呼吸障害、仮死、ショックなどです。この場合、sepsis wor-up後、直ちに抗菌薬の投与を開始します。
    継続的に感染兆候を継続チェックし、48時間後の検査で陰性なら、抗菌薬を中止します。
  • 生後12時間でのCRP値は重症細菌感染症のチェックに有効です。出生24時間以内は、24時間間隔でのチェックでは対応に遅れが出ることがありえます。
  • 母体に妊娠糖尿病の合併がある場合には、さらに慎重な経過観察が必要になります。

生後90日ごろまでのベビーの急性感染症

出生後のベビーにsepsisを疑う臨床症状:体温異常、呼吸障害、無呼吸、血糖異常、not doing wellなどが見られる場合にも同様な対処を行います。新生児から生後3ヶ月程度までの子どもの、sepsis work-upには、医療従事者のnot doing well状態への気づきが何よりも重要です。生後90日までの子どもを見たら、not doing wellでないか、いつもnot doing well mindedな診療態度で臨まなければと考えています。
敗血症を、SIRS+感染症とする臨床症状による敗血症のとらえ方・診断法(あんしんねっと104号2014年9月)と合わせて、not doing well状態に気づく目・能力を常に養っていく必要があります。