診療案内

Medical guidance

5月の川崎病症例

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

4月号の川崎病治療方針に基づいて、5月に経験した川崎病および川崎病疑いの実際の症例に、どのように対処しているかをご報告します。1日でも早く診断を確定し、早期の治療につなげるという、私たちの取り組みを見ていただけると思います。

症例1 第5病日に冠動脈拡大を認めた症例
1歳10ヶ月 男児 IVIG 2g/㎏ 1回で鎮静化

55月連休中に熱が始まる。第5病日:①結膜充血、②不定形発疹+BCG痕の発赤強度 ③手の腫脹 ④口唇紅色乾燥 ⑥熱5日目に川崎病として、ご紹介にて入院。CRP13.5mg/dl
当日の心臓超音波検査ですでに右冠動脈に軽度の拡大を認め、即座にIVIG 2g/㎏投与開始し、鎮静化。
冠動脈の拡大は第24病日時点で、まだ残存。

考案と教訓

ゴールデンウィーク4連休をはさんだ川崎病でした。第5病日での治療開始で、治療が遅れたわけではありませんが、3連休なら、もう1日早く治療開始できていたかもしれません。「心エコー所見に基づく冠動脈病変の重症度分類」では第30病日までに正常化する軽度の一過性性拡大を認めた群A-2」であれば、冠動脈には問題ないものとして扱ってよいとされていますが、30日までの拡大病変が消失するかどうかは予断を許しません。慎重に経過観察を行っていきます。

症例2 AST 536IU/L、IVIG 2g/kgで部分的に反応、
1g/kg追加投与で鎮静化 2歳8か月 女児

第4病日 ①結膜充血 ②口唇の発赤 ③体幹の発疹 ④手掌紅斑 ⑤頚部リンパ節腫大があり、川崎病としてご紹介いただき、入院。CRP 3.27mg/dl、白血球10300、AST 536。
入院当日、IVIG 2g/kg投与開始、いったん下熱する。第6病日再び熱発し不機嫌となり、再燃、IVIG 1g/kg追加投与で、鎮静化。冠動脈病変を認めず、ASTは第13病日に正常化。

考案と教訓

IVIG不応risk予測では、群馬スコア4点(5点以上)、久留米スコア3点(3点以上)、大阪スコア2点(2点以上)で、不応の可能性が高い症例でしたが、紹介入院が日曜日であったことから、無難な方法としてIVIGのみで治療開始となりました。ステロイド剤の併用が望ましかったと考えています。幸い、IVIG 1g/ kg追加で鎮静化し、冠動脈病変なしで治癒に向かいました。

症例3 Node Firstの不全型川崎病  6歳  女児

risk scoreが高くIVIG 1g/kgにIVMP(メチルプレドニゾロン30㎎/㎏)2回を併用
川崎病は鎮静化したが第10病日にアスピリンによると思われる多形紅斑が全身に出現

第3病日 熱、頚部リンパ節腫大、CRP 12.7mg/ dl、白血球数25700((好中球92%)、溶連菌迅速検査(-)で、ご紹介にて入院。化膿性頚部リンパ節炎疑いで、ABPC/SBTの投与を開始。第4病日 頸部リンパ節はさらに腫大し、可動制限をきたす。①リンパ節腫大 ②手掌紅斑 ③イチゴ舌で、診断基準からは3/6だが、川崎病以外の疾患が否定できると判断し、川崎病(不全型)として治療開始、risk scoreは、群馬7点(5点以上)、久留米3点(3点以上)、大阪2点(2点以上)で、不応リスクが高いと判断し、IVIGにIVMP併用治療とする。この治療で川崎病は鎮静化し、冠動脈病変なし。

IVIG不応高危険群に対する理療スケジュール

第7病日よりアスピリン開始。
第10病日多形紅斑が出現、熱が再発、しかし、CRPなどの急性反応は順調に低下、アスピリンによる薬剤性の多形紅斑と判断、3日間でアスピリン中止し、12病日 多形紅斑は全身に拡大し、39度の熱が続くため、プレドニン1mg/ kg分2投与(5日間)、解熱し、紅斑も徐々に消退した。

考案と教訓

第4病日から治療を開始した不全型川崎病で、risk scoreが高く、IVIG+IVMPの併用により、心臓合併症もなしで寛解しました。
しかし、第10病日から全身に紅斑が出現し、アスピリン以外に多形紅斑に結びつく原因がなく、アスピリンによる多形紅斑と判断しています。アスピリンの副作用としては、出血、喘息発作の誘発、肝機能障害、消化性潰瘍、蕁麻疹、皮疹(いずれも頻度不明)などが記載されています。IVIG+ASA30~50m/kg(下熱後5mgに減量)は川崎病治療アルゴリズムの最上位に位置づけられていますが、アスピリンの副作用にも注意を払う必要があります。全身にかゆみを伴った紅斑と高熱で、プレドニンを使用しました。

症例4 川崎病? 9か月 男児

熱の出る前日にHibワクチン接種。翌日から熱(第1病日)。第4病日 ①全身に発疹、②軽度の結膜充血。第5病日 ③熱が続き、④足底紅斑 ⑤頚部に1cm程度の多数のリンパ節腫大を認める。ご紹介にて入院。
川崎病の診断基準を満たすためフロベン処方し経過観察。しかし、軽症で、CRP 0.07mg/dl、白血球8300など、検査データに変化がない。BCG痕に変化なし、頸部リンパ節のエコー検査で血流は乏しい。肝脾腫なく、異型リンパ球3%。EBウイルス感染症は否定的。心臓超音波検査:冠動脈に異常を認めない。
第6病日 下熱。

考案と教訓

川﨑病compatible症例ですが、川崎病よりも、突発性発疹症の可能性が高いと判断し、フロベンは中止しました。念のために、発症1か月間は心臓エコー検査を行い、慎重に観察していく予定です。

くすぶり型川崎病と軽症(自然下熱)川崎病

本年(2014年)4月の日本小児科学会で、東京都立小児医療センターから、数%ある自然下熱例の中に、熱が断続する「くすぶり型川崎病」があり、冠動脈病変(CAL)も発症するとの報告がありました。「自然寛解例では 炎症が持続してCALを形成するくすぶり型の症例が少なくない。慎重に経過を観察すべき」と報告されています。くすぶり型といえる症例で、結局IVIGを使用した経験はありますが、軽症な分、CAL発症は起こさないだろうと考えていましたが、考えを修正する必要があります。
症例4は、川崎病かどうかが問われる症例ですが、念のため、1か月間は慎重に経過観察を行っていく予定です。