診療案内

Medical guidance

Henoch-Shönlein紫斑病(IgA血管炎)

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

Henoch-Shönlein purpura (IgA vasculitis)

Henoch-Shönlein紫斑病(HSP)、アレルギー性紫斑病、アナフィラクトイド紫斑病、血管性紫斑病と様々な病名で呼ばれますが、すべては全く同じ疾患を別名で言い換えているだけです。
UpToDateでは、Henoch-Shönlein紫斑病(IgA vasculitis)と表記されています。HSPは、小児に最もポピュラーな形の全身性の血管炎として、IgA vasculitis(IgA血管炎/IgAV)を併記する形で、紹介され、名称はさらに一つ増えたことになります。病変部の特徴がIgA免疫複合体の沈着を伴った血管炎であることがこの呼称の根拠とされています。

HSPは臨床的4兆候(tetrad)を特徴とします。

  • 触知可能な紫斑(palpable purpura)-血小板減少や凝固異常を伴わない
  • 関節炎/関節痛
  • 腹痛
  • 腎疾患

原因として、発症前の上気道感染(特に溶連菌など)の関与が想定されています。好発年令は4歳~6歳です。

HSPの臨床症状の頻度~多彩な臨床像

HSPの多彩な臨床像の発症率が次の表に表されています。

腹痛に関連する合併症としては、腸重積の合併例や、大量下血による失血性ショックで緊急輸血を行った症例、頭皮下~頬~顎にかけて、強い浮腫と皮膚過敏による痛みでおむすびのような頭になった頭部浮腫の2症例など、この疾患の多彩な症状には驚かされます。
脳症・脳出血などの中枢神経系の症状には直接遭遇していませんが、中枢神経系の血管炎による危険性を認識し、注意を払う必要があることを再確認しています。
精巣炎の発症も示されています。

腹痛とHSP

HSPの腹痛はきわめて強いことがあり、のたうち、泣き声が響きわたるような強い腹痛で苦しむ幼児では、HSPを思い浮かべる必要があります。この場合、まず、外科的疾患を鑑別・除外することが最重要です。臨床所見として筋性防御を伴わないことに加えて、腹部超音波検査が、外科疾患除外に力を発揮します。HSPの超音波所見として、腸粘膜の肥厚、壁内血腫、腹水、腸重積がないかなどを確認します。その後、丹念に紫斑を探しますが、未出現の場合も多く、その場合はHSPを強く疑いながら経過を観察することになります。

症例1 6歳女児 兄にHSPの既往あり
強い腹痛で、紫斑出現前にステロイド剤を投与した症例

数日間、腹痛があり、時に嘔吐を伴う。約1週間、症状が続いた後、腹痛・嘔吐はさらに強まり、HSPの可能性を指摘され、ご紹介いただく。下痢なし、紫斑なし、関節痛なし。触診で腹壁はsoft、defenceはない
腹部超音波:小腸浮腫軽度、腸間膜リンパ節腫大、腹水少量
輸液の必要あり、入院。夜間強い腹痛を訴えたため、ソセゴン投与。
入院翌日の腹部超音波:小腸の浮腫増強、腹水(+) 腹痛続くが、紫斑等の他の症状なし。
入院3日目、紫斑、関節痛などは認めないが、痛みの状態からHSPの可能性が大きいと判断し、プレドニンを使用、腹痛はすぐに消失し、食欲も出て。入院5日で退院。
退院翌日に、下腿に紫斑が出現し、HSPと診断。

HSPと凝固ⅩⅢ因子 

長期に腹痛や関節痛が持続する症例で、凝固ⅩⅢ因子が低下している場合には、ⅩⅢ因子を補充することが症状の改善にもつながるとされています。症例1では、ⅩⅢ因子は26%と低下していましたが、プレドニン投与で症状が改善し、凝固因子製剤は使用しませんでした。
NelsonやUpToDateには、凝固ⅩⅢ因子による治療は触れられておらず、この治療法が、国際的な認知を受けていない現状があります。

紫斑病性腎炎

紫斑病性腎炎については、重要な疾患として、どの教科書もHSPとは別に独立の項目で、記載されています。20~60%で腎病変が発症、通常6週間以内に尿異常が出現し、3ヶ月(~6ヶ月)以内に顕在化するとされています。ですから、発症後、3~6ヶ月間は検尿を行う必要があると考えています。症例1では最低6ヶ月間は観察・尿検査を行う予定です。
紫斑病性腎炎の増悪傾向がみられたら、小児腎臓病のエキスパートに早めに相談することにしています。

症例2 9歳男児 2年前にHSP罹患 紫斑が7ヶ月間続いた症例

7才でHSP罹患、2ヶ月以内に収束。
9歳でHSP再発、腹痛が断続し、プレドニンを約2ヶ月間、中止〜再投与・漸減を繰り返した。紫斑は約7ヶ月間、出没した。尿所見は、再発後2ヶ月で尿タンパク(±)が出現、血尿なし。その後、蛋白尿は(+)になることもあったが、濃度定量で最高19mg/dlを示した後、発症9ヶ月で、尿蛋白は陰性化した。

HSPと副腎皮質ホルモン剤

UpToDateでは、副腎皮質ホルモン剤による治療の有効性は次の5つにまとまられています。「①腹痛の期間短縮②腸重積の危険性を減らす③内視鏡検査、画像検査、外科的対処を減らす④再発の危険性を減らす ⑤腎障害の危険性を減らす」「副腎皮質ホルモン剤を使用する必要がある症例では、症状の改善だけでなく、病態の改善まで4~8週間かけて漸減使用することが望ましい。」と記載されています。予防的に使用することは推奨されていませんが、使用が必要な場合には、病態の正常化を目指して、4~8週の漸減計画が望ましいとする考えは、重症例では参考にすべきだと考えます。症例2では、そのような対処で腎障害は軽微で鎮静化しました。