診療案内

Medical guidance

細菌性肺炎 めずらしい空洞を伴う肺化膿症とポピュラーな大葉性肺炎

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

【症例1】 11歳 女児 空洞を伴う肺化膿症 起炎菌同定できず

経 過

第1病日:
37.7℃
第2病日:
突然の38℃の熱と嘔吐 小児科診療所受診、フロモックスの処方、その後咳が始まる。
第4病日:
熱が続き、診療所再診。呼吸音異常なし、胸部レントゲン検査で、右上葉に肺炎あり、ご紹介にて当科へ入院。
右上葉の肺炎は、繭の形(左右24mm、上下12mm)の空洞形成、上壁は3mm下方にconsolidation拡がる(写真①)。
CRP4.03㎎/dl 白血球数9500(好中球78.5%)鼻咽頭マイコプラズマ抗原(-)尿中肺炎球菌抗原(-)入院 CTRX投与開始。
第5病日:
37.4℃、解熱傾向。
第6病日:
解熱 胸部レントゲン:右S2の肺炎は24mmの球形の空洞形成、下方にconsolidationを伴う(写真②③)。
「空洞を伴う肺化膿症」と診断。CTRX継続投与。
ツ反:18×16mm(BCG歴あり)
胃液:抗酸菌塗抹(-)  TbcDNA-PCR(-)
第10病日:
胸部レントゲン:空洞消失、肺炎もほぼ消失
CRP0.32㎎/dl 白血球3000(好中球54%)
第12病日:
近畿大学小児科循環器グループにコンサルト。

肺膿瘍Pulmonary Abscess または壊死性空洞を伴う肺炎
Pneumonia with tary Necrosis

Nelson19版では、Chapter 394でPulmonary Abscessとして取り上げられています。基礎疾患なしに起こるものをprimary pulmonary abscessと呼び、右肺に多く、基礎疾患を持つsecondary pulmonary abscessは左に多い傾向があるとされています。原因としては、誤嚥・吸引、細菌性肺炎による膿瘍形成で、上葉後部のsegmentに好発します。抗生剤の感受性により予後は良好とされます。ブドウ球菌性のpneumatoceleとは、壁の厚さと、ブ菌感染症による重症度で区別します(もちろん菌の検出が優先されますが)。
また、DonnellyのDiagnostic Imaging Pediatricsでは、壊死性空洞を伴う肺炎Pneumonia with Cavitary Necrosisとして、取り上げられています。肺の壊死組織での空洞形成で、起炎菌としては肺炎球菌、MRSAが多いとされています。鑑別診断には、肺の奇形(CPAM congenital pulmonary airway malformations)、肺膿瘍、肺分画症(左下に多い)、気管支原性嚢胞(bronchogenic cyst)が挙げられています。
空洞からは、結核の除外も重要で、入院当初は、個室・N95マスクなどの隔離対応を行うことも検討する必要があり、この症例でも苦慮しました。

【症例2】 1才2ヶ月  女児  大葉性肺炎=肺炎球菌肺炎

経 過

肺炎球菌ワクチン(プレべナー)3回接種済み。2週間以上、鼻水が続く。

第1病日:
熱と咳が始まる。
第2病日:
高熱、咳が増加、小児科診療所受診、呼吸困難はなし。
CRP16.9㎎/dl、白血球数32600と異常な高値を示し、当科へご紹介いただく。
当科の検査:
CRP15.6㎎/dl 白血球数40200(好中球78%)検尿:蛋白+、潜血±、RBC1-4WBC1-4
胸部レントゲン:
右上葉にconsolidation(写真④) CRPが異常高値のため髄液検査:髄液細胞数2/μl
尿中肺炎球菌莢膜抗原(+)血液培養(-)CTRX投与開始し、翌第3病日には解熱、軽快。

肺炎球菌肺炎と侵襲型肺炎球菌感染症 肺炎球菌ワクチン
2013年11月からPCV7からPCV13へ

肺炎球菌感染症は、小児科医療の中で大きな位置を占めます。幸い、ペニシリン耐性肺炎球菌の増加傾向に歯止めがかかっており、実際の医療現場で治療に難渋することは稀です。小児感染症学会の「小児呼吸器感染症ガイドライン2011」に沿った治療方針で耐性菌の増加をきたさない抗菌薬の適正使用を心がけることは重要です。
侵襲型肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease)とは、肺炎球菌による菌血症を伴う全身(深部)感染症=髄膜炎、敗血症、菌血症を言い、肺炎球菌ワクチンが導入され、PCV7からPCV13に変更されたことで、今後さらに減少することが期待されます。また、小児用肺炎球菌ワクチンは粘膜免疫も誘導し、乳幼児の保菌者を減らすことで、他の年齢層、特に高齢者の侵襲性肺炎球菌感染症も減少させることが知られており、WHOも接種を推奨しています。
しかし、肺炎球菌の莢膜抗原型は93種類に分類されます。ワクチンに含まれる抗原型は7~13で、最も侵襲性・危険性が高いものが選ばれていますが、全てを網羅することは出来ません。プレベナーの添付文書には、「本剤に含まれる肺炎球菌血清型に起因する中耳炎及び肺炎の予防効果は確認されていない」と記載されています。肺炎球菌による(と思われる)肺炎(中耳炎、副鼻腔炎など)は、この症例のようにプレベナー接種後の乳児に散見され、今後も引き続き小児科医の治療の対象として大きな位置を占めるものと思われます。肺炎、中耳炎などについてはワクチン接種の普及に関わらず、発症は続くであろうことを知っておく必要があります。