診療案内

Medical guidance

Brugada症候群、WPW症候群-上室性発作性心頻拍症、心筋異常 最近、経験した小児不整脈・心電図異常

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

Brugada 症候群 6歳 男児

既往歴

気管支ぜんそく

家族歴

突然死の家族歴なし

経 過

前日よりの熱と喘鳴・呼吸困難(中発作)で、I医院よりご紹介いただきました。入院時の病棟診察で、不整脈を疑い心電図検査を実施。V1でsaddleback型を呈するBrugada型心電図(A)を記録。
心臓超音波検査:左心機能正常、asynergyを認めない。心筋の肥厚や心拡大も認めない。
持続的な心電図モニターを行い、その後は不整脈は観察されず。
翌日の心電図は、coved型(B)に変化。ぜんそく発作軽快後、近畿大学小児科篠原教授にコンサルテーション。大学受診時には心電図は正常化。
今後の慎重な経過観察を行っていくとのご報告をいただきました。

Brugada症候群:1992年Brugada兄弟により報告される。心電図で右側胸部誘導のV1,V2,V3を中心に、特異なST上昇所見と不完全右脚ブロックパターン所見を示し、心室細動を主とした心室性不整脈により失神や突然死するという症候群である。小児Brugada症候群の特徴 a)成人に比べその頻度は少ない b)発症した症例では成人と同様に突然死や蘇生を要するような重症になる c)男児に多い d)発作は安静時や発熱時に発症している例が多い e)Brugada症候群あるいは突然死の家族歴を有する例が多い、のように項目a)の頻度の点をのぞき、ほぼ成人例と同様の疫学的な特徴を有する。(ガイドライン)

発作性上室性心頻拍 → 左側側壁房室副伝導路による房室回帰性頻拍
(潜在性WPW症候群) 8歳 女児

既往歴

以前から胸痛発作が何回かあったが、自然におさまっていた。本人は運動が好きで、体操も習っている

経 過

下校時に胸痛、翌日も続き、顔色不良のため、Tクリニック受診、心拍数216/分。心電図検査で発作性上室性心頻拍(C)の診断で緊急にご紹介いただきました。ベラパミル(ワソラン)0.05mg/kgが入ったところで正常化(D)。正常化した心電図ではWPWの所見なし。翌日退院。3週間後、同様発作で、再入院、ベラパミル0.1mg/kgで正常化。頻回の発作で、近畿大学小児科中村教授をご紹介。心筋マッピングで左側側壁に心房←心室副伝導路(潜在性WPW症候群)を認め、高周波カテーテルアブレーションを実施、「一回の通電で副伝導路離断に成功」、「再発や合併症なし」で退院とのご報告をいただきました。

  • WPW症候群と潜在性(conceiled)WPW症候群
    心室から心房への副伝導路=Kent束があり、安静時心電図でデルタ波が出現するものをWPW症候群とよぶ。この場合、Kent束は順行性の興奮を伝える。これに対し、Kent束が逆伝導性(心室から心房にのみ伝導する)のものを潜在性(conceiled)WPW症候群といい、同様に上室性頻拍の原因となる。この場合、非発作時の心電図にΔ波は認めない。
  • 発作性上室性頻拍:Paroxysmal SupraVentricularTachycardia,PSVT
    1. 房室回帰性頻拍(AtrioVentricular Reentrant Tachycardia,AVRT:WPW症候群)
    2. 房室結節回帰性頻拍(AtrioVentricular Nodal Reentrant Tachycardia):副伝導路は存在しないが、房室結節の内部で電気信号の伝わる速さに差があるため、速い経路と遅い経路でループ状の伝導路を形成するもの。WPWとともに、アブレーション治療が最も有効。

早期興奮症候群、異型WPW症候群疑い  6歳 女児

既往歴

特になし

経 過

学校検診で心電図異常を指摘され、当科受診。心電図で、小さなデルタ波(E・F)を認めました。大阪市立総合医療センター小児不整脈科をご紹介、「QRSの形態からfasciculo-ventricular pathwayによる異型WPW症候群の可能性が高い。洞調律中にアデホスを点滴静注することで、WPW との鑑別が可能。本人が検査をいやがったため、もう少し高学年になってからATPテストで鑑別」の返事をいただきました。

  • 早期興奮症候群 pre exciting syndorome;心電図にΔ波が存在
    • WPW症候群
      心房—心室副伝導路(atrio-ventricular =Kent束)頻拍発作(+)突然死(+)
      (ⅰ)順行性Δ波を示す(ⅱ)逆行性(潜在性)非発作時の心電図にΔ波は認めない
    • 異型WPW症候群
      Kent束以外の副伝導路を有するもの
      束枝−心室副伝導路(fasciculo-ventricular)頻拍発作(−)突然死(—)

心筋障害? 左側胸部誘導のT波の逆転  12歳 女児

学校検診で心電図異常を指摘され、当科を受診。心電図で左側胸部誘導でT波の逆転を認めました(G)。超音波検査では、四腔バランス良好、左心臓機能正常 心筋の厚さも正常 CPK,AST,LDH,心筋トロポニンはすべて正常範囲。心機能正常、心不全のない心筋症と考え、急いで近畿大学小児科を受診していただく。
大学からは、「心ポンプ機能障害や拡張障害なし。BNPも正常範囲。心エコー上大きな問題がないこと、BNP値が正常範囲であることから、心筋の錯綜配列を認める病理的には広い意味での心筋障害と考えられる。当面、強い運動制限なしで、追跡していく」とのご報告をいただきました。
拡張型や肥大型心筋症、心筋緻密化障害などでなく、ほっとしましたが、今後の経過が気になるところです。

小児科医と発作性上室性心頻拍・心電図異常

発作性上室性心頻拍は、小児科医が必ずぶつかる緊急疾患です。ATP、抗不整脈薬(ベラパミルなど)の使用と直流通電による電気ショックでの発作抑制が必要となります。根治手術として、症例2のように高周波カテーテルアブレーションが行われます。

日本小児科学会雑誌2013年7月号に、「遺伝性不整脈の進歩」の総説が掲載されています。

  1. QT延長症候群:その最初に取り上げられる疾患です。失神発作の患児に対して、神経系の疾患のみでなく、QT延長症候群を常に鑑別する姿勢を持つよう心がけています。
  2. カテコラミン誘発多形性心室頻拍:CPVT(Cathecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia)は運動や情動の変化、あるいはカテコラミン投与で二方向性あるいは多形性の心室頻拍が誘発され、心室細動に移行して失神・突然死を起こす不整脈
  3. QT短縮症候群:QTc≦300ms もしくは≦320ms
  4. Brugada症候群:この総説が発表されるタイミングでBrugada症候群に遭遇しました。
  5. その他、進行性心臓伝導障害、その他。この総説では、遺伝子診断による診断と治療法の進歩が述べられています。

謝 辞

不整脈・心電図異常に遭遇した場合、近畿大学小児科、大阪市立総合医療センター小児不整脈科の専門医の先生方にコンサルテーションしていただいています。その結果はいつも懇切な内容で、紹介元の新知識として大変貴重なものとなっています。
当院へご紹介いただいた先生方、相談結果を詳しく返していただた専門医の先生方に感謝致します。