診療案内

Medical guidance

熱性けいれんと小児のてんかん

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

熱性けいれんとは

熱性けいれんは、「通常38℃以上の発熱に伴って起こる発作性疾患で、中枢神経感染症、代謝異常などの明らかな要因を除外する」と定義されています。救急車で搬送される子どものうちで、熱性けいれんは最多です。日本医事新報2013年8月17日No.4660に、「その場の1分、その日の5分―熱性けいれんは繰り返しますか」が掲載されています。今回、熱性けいれんを取り上げました。
熱性けいれんは「単純型熱性けいれん」と「複雑型熱性けいれん」に区別されます。

  • 単純型熱性けいれん
    初発は6ヶ月~4歳、神経学的異常は伴わず、熱性けいれんのほとんどが単純性である。有病率は、8%(欧米で5%、グァム14%)。再発は約3分の1。「てんかん発症の危険因子」を持たない場合、てんかんの発症率は一般と差がない。この点から単純性熱性けいれんの患児に対して脳波検査は推奨されない。
  • 複雑型熱性けいれん
    左右差や体の一部に限局してけいれんが強くみられる、持続時間が長い、1回の発熱で数回のけいれんが起こる、24時間以内に繰り返す発作を認めるものを言う。複雑型のほうが脳波でてんかん発作を認めることは多い。
    複雑型の特殊形に「全般てんかん熱性けいれんプラス(GEFS+)」があり、無熱性けいれんか、6歳以上での熱性けいれんを合併する症例で家族に熱性けいれんや各種のてんかんを高率に示す大家系において認められ、優生遺伝を示す。

【症例】 2歳5ヶ月 男児  11回目の熱性けいれん

数日前から咳と喘鳴、発作当日から発熱、ジアゼパム坐薬6㎎挿肛。熱発に気づいた4時間後に眼球上転、全身強直けいれん2分、止痙後傾眠状態で、救急車にて当院へ搬送。(初診)
到着時には意識清明、CRP3.2㎎/dl、白血球数9700、胸部レントゲン検査で肺炎。熱は3日間続いた後、解熱。
家族歴に熱性けいれんあり、今回の熱性けいれんが11回目であり。脳波検査:てんかん性発射を認めず。頭部MRI/MRA検査:頭蓋内に器質的異常を認めない。MRAに異常を認めない。GEFS+の可能性あり。退院時、バルプロ酸の持続投与(有効であれば2年間の予定)を開始、経過観察中。

診察のポイント - 髄膜炎・脳症の初期症状でないか?

複雑型かどうかを確認することが重要となり、その場合、髄液検査、入院を必要とする緊急性があるかどうかの判断を行うことが必要です。①発作が長いとき(10分又は15分以上)②繰り返し発作が起こるとき③意識の完全な回復が見られないとき=意識障害が続く時などがポイントです。
Up to dateでは熱性けいれんの子どもへの髄液検査が必要な場合を3つ挙げています。①髄膜刺激症状、他の髄膜炎又は脳内疾患を疑わせる臨床症状がある場合は実施 ②Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンが不完全にしか接種されていない6ヶ月~12ヶ月の子どもには実施を考慮 ③抗生剤が使用されていて症状がマスクされているかもしれない子どもにも実施を考慮。

単純性熱性けいれんを起こした子どもに対し、脳波検査は推奨されない

脳波検査から熱性けいれんの再発やてんかんへの移行を推測することは出来ません。また、もともと、てんかんは発熱などの明らかな誘因を持つものは除外するもので、その区別は先ずは臨床症状から行う必要があります。

止痙後のジアゼパム投与は慎重に

単純性熱性けいれんでは止痙後の意識回復、又は意識障害を確認することが重要です。意識回復のないままでのジアゼパム使用は意識障害(脳炎・脳症)の判断を遅らせる可能性があります。今年5月のトピックスで、ミダゾラム持続投与が意識障害の確認を遅らせた症例報告をおこないましたが、同様の注意がジアゼパム投与の際には必要となります。(ガイドラインは予防的使用としてのジアゼパム使用を推奨するものとして出されたもので、止痙後の使用法については、触れていません。)

解熱剤はけいれん発症を減少させない

この事実は既に、一般的なものとなっています。

熱性けいれんと(3大)脳症発症疾患

脳症の発症は、インフルエンザ、突発性発疹、ロタウイルス腸炎の順に多いとされています。2次医療機関として、3大脳症合併疾患による脳症はぞれぞれ経験があり、極端に稀と言うわけではありません。脳症は進行が早く、後遺症の問題も大きいので、特に注意が必要と認識しています。

  • インフルエンザ
    インフルエンザ脳症でないか、2008年インフルエンザ脳症ガイドライン改訂版に沿って、診断治療を行うよう心がけています。
  • 突発性発疹
    HHV6関連脳症と呼ばれます。発疹が出現する時期に遅発性に、再びけいれんが出現し、脳症へ進行するものです。けいれん重積型脳症の経過をたどるものが多いです。
  • ウイルス性腸炎
    軽症下痢に伴うけいれんと呼ばれますが、無熱性のこともありますが、熱を伴うことも多く単純性熱性けいれんと区別することが困難な場合が多いです。けいれんは群発する傾向があり、カルバマゼピンが有効などの特徴のほかに、ロタウイルス脳症の発症の徴候でもありうるので注意が必要です。下痢を伴う熱性けいれんの場合にはカルバマゼピン4~5㎎/kgを1回投与することが多いです。

熱性けいれんの指導ガイドラインの要点

  • A 予後
    1. 過半数は一生で1回の発作
    2. FS再発率:平均30%、3回以上の反復:9%
  • B 要注意因子
    1. てんかん発症要注意因子
      1. ⅰ.FS発症前の明らかな神経学的異常と発達遅滞
      2. ⅱ.非定型発作(部分発作、発作の持続15~20分、24時間以内の反復、のいずれか一つ)
      3. ⅲ.両親・同胞のてんかんの家族例)
    2. FS再発要注意因子
      1. ⅰ.1歳未満の発症
      2. ⅱ.両親または片親のFSの既往
  • C 予防法
    • 抗けいれん薬投与による予防
      1. ⅰ.自然放置が望ましい場合:FSが2回以下で要注意因子が陰性の場合
      2. ⅱ.発熱時ジアゼパム応急処置が望ましい場合
    • 下記の3項目のいずれかに該当する場合
      a.15~20分以上の遷延する発作が1回でもあった場合
      b.要注意因子が2項目以上陽性で、発作が2回以上あった場合
      c.短期間に発作が頻発する場合(半日2回、半年3回以上、1年4回以上)