診療案内

Medical guidance

猛暑に川崎病が増加

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

はじめに

2013年7月、川崎病の患者さんが4名入院されました。6月には2名でした。この地域で、1ヶ月に4人の川崎病発症は、臨床医にとって多いと感じられます。多分、他の地域でも、川崎病が増加・流行しているものと考えられます。
2012年12月に、日本小児循環器病学会から、「川崎病急性期治療のガイドライン(平成24年改定)を発行し、1st lineから3rd lineにいたる急性期治療のアルゴリズムが発表され、IVIGへの不反応例への治療戦略、重症度評価によるステロイドの併用療法などが紹介されました。この2ヶ月に経験した川崎病6症例を振り返って、私たちの治療の選択肢も多様化し、治療戦略も進化を遂げてきていることをご報告します。

6症例の経過

1st lineのIVIG 2g/kgで、軽快した3例

  • 症例1 2歳 男児

    第6病日:
    川崎病の診断基準を満たす。

    CRP4.0mg/dl。IVIG2g/kg+ASA30mg/kg投与で、下熱・沈静化。

  • 症例2 1ヶ月25日 男児
    第3病日:
    高熱が続き、CRP2.1mg/dl、白血球15700で、focus不明の熱で、髄液検査実施、髄液異常なし。
    第4病日:
    診断基準5項目を満たしたため川崎病と診断し、IVIG2g/kg+ASA30mg/kg。
    第5病日:
    下熱、以後、軽快。
  • 症例3 4歳 男児
    第4病日:
    川崎病診断基準を満たす。IVIG2g/kg+ASA30mg/kg投与開始。
    第6病日:
    微熱。
    第7病日:
    下熱、以後軽快。

1st lineのIVIGに部分的に反応、IVIG1g/kg追加とmPSL30mg/kg
1回併用で軽快した1例

  • 症例4 8ヶ月 男児
    第4病日:
    CRP18mg/dl、川崎病と診断し、免疫グロブリン製剤(IVIG)2g/kg+アスピリン30mg/kgで、一旦解熱したが、
    第7病日:
    再び39度に熱発、メチルプレドニゾロン(mPSL)30mg/kg + IVIG1g/kg追加で、下熱・沈静化。mPSL投与時には、投与終了48時間までヘパリン併用。

IVIG 2g/kg2回投与(計4g/kg)+ミラクリッド併用に不反応→シクロスポリンで軽快した1例

  • 症例5 6歳 男児
    第4病日:
    川崎病と診断。IVIG2g/kg+ASA30mg/kg。しかし、下熱傾向なし。
    第6病日:
    下熱しないため、IVIG1g/kg追加+ミラクリッド併用。
    第7病日:
    改善ないため、IVIG1g/kgさらに追加(計4g/kg)、ミラクリッド継続投与。しかし、全く改善なし
    第7病日:
    近畿大学小児科循環器グループにコンサルト。

シクロスポリン(ネオーラル)5mg/kg 分2開始。12時間後に下熱、その後、軽快。

IVIG不反応予測スコアが高く、最初からIVIG+mPSL併用で軽快した1例

  • 症例6 8歳 男児 1歳時に、川崎病の既往あり
    第1病日:
    高熱と左頸部リンパ節腫大、首の可動制限と開口障害あり。
    第4病日:
    高熱とリンパ節腫大のみ、CRP15.9mg/dl、白血球数28600。化膿性頚部リンパ節炎として、抗生剤投与を続ける。
    第6病日:
    川崎病の診断基準を満たす。年齢が高いこと、予測スコアでIVIG不応例の可能性が高いと判断し、mPSL30mg/kg+IVIG1g/kg×2日(ヘパリン併用)で、軽快。

最近の6症例のまとめ

以上の6例では、幸い冠動脈病変(CAL)は認めませんでしたが、IVIG治療のみで軽快しない症例も多くあることがお分かりいただけたと思います。①IVIGへの不応例の予測スコアを参考に、1st lineでステロイド剤を併用する。②IVIGに不応な場合、追加IVIGに加えてステロイド剤の併用も考慮する。③血管病変の危険性が高い場合には、凝固機能を亢進させるステロイド剤の使用を控え、シクロスポリンの選択を考慮するなどが、現時点での治療戦略だと考えています。
さらに、病状が沈静化しない場合には、レミケード、血漿交換が選択肢ですが、その場合は我々の守備範囲を超えており、後送高度医療機関へ搬送させていただきます。

IVIG不応例の予測スコア

群馬大学のスコア(RAISE Study)、久留米大学のスコア、大阪川崎病研究グループのスコアが考案されています(今年3月号のあんしんねっとわーく、小児科トピックス参照)。重症化の基準となる項目は、低Na血症、AST・ALT・総ビリルビン値の上昇、CRPの高値、血小板数の少なさ(30万以下)、年齢1歳以下又は6ヶ月以下などで、これらの組み合わせでのスコアを算出します。
今回提示した6症例を各々の予測スコアに当てはめると以下のようになります。

6症例だけから評価すると(もちろんたった6例で判断することはできないことは十分承知していますが)、群馬スコアでは5点を基準にすると、IVIGのみで反応する症例に不要なステロイド剤を使用してしまう可能性が高いこと、久留米スコアはこの6症例には良く当てはまること、大阪グループスコアは、シンプルながら厳しい規準となっており、2点だと不応例である確率は相当高そうであり、2点以上ではステロイド併用を真剣に考慮すること、などが言えそうです。

最近の話題

The Journal of Pediatricsの最新版(2013年June)に川崎病の話題が2つ掲載されています。一つは、頸部リンパ節腫大を初発症状とする川崎病を細菌性リンパ節炎や皮膚粘膜症状を初発とする典型的な川崎病とどう区別するかという論文です。桿状核球の絶対数の多さ、CRPの高さ、多房性のリンパ節腫大の場合に、リンパ節初発の川崎病を考慮し、診断の遅れにつながらないよう慎重に経過観察することを薦めています。当院では7月に、細菌性リンパ節炎も数例入院がありました。洋の東西を問わず、川崎病との鑑別が問題になっており、年齢が高くてもリンパ節初発川崎病は少なくないことを念頭に、診療に当たるべきということのようです。
もう一つの論文は、関西医大からのもので、NT pro-BNTが川崎病の冠動脈病変(CAL)とIVIGへの不応例では高値を示し、CALの危険性、不応例の予測に役立つというものです。今後、難治例、CAL合併例の予測に、NT pro-BNTの項目が加わることになるかもしれません。