診療案内

Medical guidance

熱中症のアウトブレイク

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

2013年初6月中旬、例年にない熱波が日本を襲いました。そのため、熱中症の発症が全国で相次ぎました。豊中市では35.9℃が記録され、私たちの病院では、スポーツテストでの熱中症のアウトブレイクで、小学5年生9人が救急搬送された事例と、午後の診察に受診した42歳の患者さんの熱中症事例を経験しました。

A小学校5年生9人 熱中症 救急搬送事例    小児科部長 志水信彦

経緯

2013/6/14 15時過ぎに救急搬送要請を受ける。
A小学校で5年生全員(81名)が第5校時(13:45開始)にスポーツテストを行っていた。
20メートルシャトルランを行っていた。

  • 往復持久走ともいう。2008年に改定された文部科学省のスポーツテストの項目に採用されている。
  • 測定方法
    20m間隔で平行に引かれた2本の線の一方に立ち、専用の音源CDの合図音に合わせて他方の線へ向けて走り出し足で線をタッチする。次の合図音で反対方向へ向けて走り出し、スタートの線にタッチする。合図音に合わせてこの走行を繰り返す。合図音は開始後約1分ごとに短くなっていくのでそれだけ速く走らないといけなくなってくる。合図音についていけなくなり、2回連続で線にタッチできなくなったときを終了とし、最後にタッチできた回数(折り返し数)が記録となる。
  • 文科省のデータ(H12年度)では、11歳の平均および標準偏差は、男子56.44±19.29、女子42.56±14.91回

始業とともにラジオ体操をして、そのあと一度給水を促された。そのあと上述のシャトルランを実施。学年を二組にわけて、走者と回数をカウントする者と交代で行うようにしていた。
児童Aは55回折り返したあと、しんどいと言い出した。給水させて日陰で休ませていた。さらにほか数名がしんどくなり、保健室へ行った。
児童Aは頻呼吸が顕著で呼吸器症状としびれを訴えていた。
スポーツテストは14:30の終業で修了し、他の生徒は教室にもどるように言われたが、教室で頭痛やしんどいと訴える児童が急に増えた。

救急隊覚知時刻は14:56。第一陣の当院到着は15:50

当院へははじめに5名の受け入れ要請があった。到着すると1名(児童A)は意識はあるが過換気の状態でしびれを訴え、ストレッチャーでの移送を要した。もう一名(児童B)は片手で額を押さえたままストレッチャーで搬入。開眼はしているが表情に乏しくまったく発語なし。呼びかけにもかろうじてうなずくのみ。点滴処置にも痛がる様子なし。末梢つめたく、CRT 4秒と脱水が疑われた。児童Cは過換気気味でしびれと下肢痛を訴えた。体操服が濡れていたためかシバリングが顕著であった。残る2名(児童D、E)は気分不良、頭痛を訴えた。
5名の状況を把握し処置も進みだしたところへ第二陣の搬送要請あり。3名(児童F、G、H)の受け入れを決定。一名は腋窩温35.9℃まで低下し寒気を訴えた。残り2名は頭痛としんどさを訴えた。
3度目の搬送要請があり、1名が搬入された。意識清明で独歩で入室。

最初の過換気症例(A)は十分量の補液を開始、ゆっくりした呼吸の指導を行ったところ速やかに改善。早期に給水と日陰での安静を指示されており、過換気による症状が主であったと思われた。強い要望のもと翌日再診の指示をして帰宅。第1陣の残り4名と第二陣のうちの2名の計6名が補液継続のため入院となった。
児童Bはしばらく反応に乏しかったが、急速輸液が進むにつれ活気がもどり、表情も豊かになった。脱水による症状と考えられた。夜になってもまだしばらくは頭痛を訴えた。よくしゃべるようになってからの本人の言では、持参した水筒のお茶は午前中の授業で飲みきってしまっていたとのこと。
全員補液が奏功して症状軽快、活気もでてきた。翌朝の診察をまって退院となった。
一名(児童C)は機嫌良く退院した後、再び気分不良/頭痛などの愁訴がみられている。熱中症だけでは説明が難しいと考える。通院の都合で近医への紹介を希望された。その後の経過はまだ確認できていない。

救急隊からの搬送依頼に対して、小児科医師、看護師、検査部門、事務部門などが連携をとりながら、スムーズに対応し、3回の搬送依頼をすべて断ることなしに受け入れ、対応することができました。私たちの病院がこの数年間行ってきた災害医療訓練の積み重ねもあって、病院のすべての部署で、緊急事態に立ち向かう積極的な姿勢が具体化されつつあると自己評価しています。松原救急からは感謝の電話をいただきました。

40歳 男性の熱中症例 エクセグラン服用

小学校でのアウトブレイクの前日は、豊中市で35.9℃を記録する猛暑日でした。その日、40歳の男性患者が、病院玄関で歩けなくなり、うずくまっているところを職員に支えられ、午後1時20分小児科外来に到着しました。小児期からのてんかんのキャリーオーバー患者で、エクセグラン(発汗低下作用)服用患者でした。リュックを背負って家から約1kmの病院まで徒歩で来院、体温38.7℃、顔面は紅潮、熱中症として、クーラーのもとで扇風機を当て、輸液を行いました。血液検査では異常なデータ、感染兆候はなく、輸液開始2時間で体温は、37.2℃に低下、元気も回復し帰宅していただきました。エクセグラン、利尿剤など服用の患者さんには、熱中症の危険が高いことはあらかじめわかっていますが、急な暑さに対しては、注意していても熱中症を防ぎきれないことがあることを知らされました。

熱中症分類

日本救急医学会では、熱中症の重症度分類を以下の表のように行っている。

横紋筋融解症はⅢ度に特有なものでなく、Ⅰ度、Ⅱ度でも認められる。

Ⅲ度は臓器不全を伴う病体であり、死亡率は高く、救命センターへの緊急搬送が必要となります。小児科のトピックス2009年7月1日号でも熱中症を取り上げましたが、対処方法としてのFIREは有効な記憶方法です。F=fluid 経口補水・点滴輸液、I=ice 環境調整・冷却、R=rest 安静、E=emergency Ⅲ度では緊急搬送 の頭文字です。