診療案内

Medical guidance

2012年の川崎病統計と改訂ガイドライン

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

2012年の川崎病症例22例の分析 (2012年1月1日~12月31日)

症例数22例

年齢構成 : 3歳以下15例(70%)  3歳以上7例(30%)

IVIG

  • 1回のみの使用例
    13例(59% うち1例は、不応の可能性が高いと判断しPSL併用、他の1例では後療法としてウリナスタチンを使用)
  • 2回使用例
    4例(18%)
  • 不使用例
    5例(23%)

BCG痕の発赤 11例(3歳以下 10/14  6歳1例)
冠動脈病変 3例(1例は自然退縮。1例は2.6mm→2.3mmに退縮し、なお正常化を期待して観察中。
1例は左右冠動脈が10mmに拡大し、抗凝固療法中)

2012年川崎病症例の特徴(阪南中央病院症例を中心に)

  • 症例の傾向年齢構成や、IVIG使用割合、冠動脈病変の発症、後遺症の発症割合などは、最近の川崎病全国調査(2009~2010)とほぼ一致する割合でした。
  • 治療について 当院での症例では、約8割の17症例でIVIGを使用しました。不反応例5例は、幸い全例、IVIG再投与で解熱、治癒しています。IVIG1回使用で解熱傾向を認めたものの、微熱が残った1症例にはウリナスタチンを使用しました。また、IVIGの不応の可能性が高いと判断した1例にはPSL2mg/kg/日の併用を行っています。)
  • BCG痕の発赤は診断上重要 3歳以下の14症例中11例(約8割)でBCG痕の発赤を認めました。川崎病診断の補助診断の役割は大きいです。4歳以上では、6歳児に1例のみに認めるのみでした。
  • 水痘様発疹の2症例―いろいろな発疹がありうる。 熱とともに、紅暈を伴う小丘疹があちこちに増加し、中心に隆起があり、一部に小膿疱を有し、毛髪の生え際にまで散在し、水痘を疑った症例が2例(5歳と8歳)ありました。
  • 膿尿で尿路感染症として5日間治療 熱、CRP21.1mg/dlで、膿尿あり、尿路感染症として抗生剤投与。解熱せず、5病日になって、発疹・手掌紅斑が出現し、冠動脈をチェックしながら観察、7病日に診断基準を満たし、IVIGで治癒した例がありました。
  • 13歳8ヶ月の児で、第9病日まで、リンパ節腫大と熱のみで経過し、その後、結膜充血が出現し、第13病日になって、川崎病の診断基準を満たした例がありました。
  • 今年の症例ですが、口唇と鼻前庭粘膜の強い糜爛と熱が続く症例に遭遇しました。心臓のチェックを行いながら経過観察しましたが、川崎病というより、スティーブンス・ジョンソン症候群ではないかとして、PSL投与。その後、解熱し、PSLは10日間で漸減中止。その直後から再び熱と口唇の強い糜爛が再燃し、結膜充血、手足の変化、頚部リンパ節腫大を伴うようになり、定型川崎病と診断、発症16日目でIVIGを投与し、治癒した症例を経験しました。さいわい、冠動脈の合併症は認めませんでした。
  • 乳児の不明熱で、CRP高値、白血球増多、好中球増多の細菌感染パターンを示し、無菌性髄膜炎(髄液検査で単核球増加)を認め、川崎病であった症例がありました。乳児の不明熱では髄液検査を行う場合が多いですが、無菌性髄膜炎では川崎病の可能性を強く疑うようにしています。
  • 咽後膿瘍で発症する川崎病の症例報告や、冠動脈病変から、振り返っての頸部リンパ節腫大のみ、又は耳下腺炎とされた不全型川崎病の症例報告なども散見されます。多彩な臨床型から川崎病にたどり着く思考経路をいつも開いておくよう心がけています。

川崎病急性期治療のガイドライン(平成24年度改訂版)小児循環器病学会

2012年12月1日発行で、改定ガイドラインが発表されました。改訂の目的は、①IVIGへの不応例を予測し、1stlineでIVIGにステロイド剤を追加する方策 ②不応例に対する2次・3次治療対策 ③診断における不全型の認識の重要性と対処法を中心にまとめられています。IVIG不応を予測する方法・2次選択薬については、いくつかの選択肢が示されましたが選択肢間の優劣を決定するに足るエビデンスがないため、絞り込み、選択の優先順位などについて今後の検討が待たれます。

IVIG不応例の予測と1st lineでのステロイド剤の併用

IVIGへの不応は、重症化につながります。最近のIVIG不応例予測モデルとして、小林スコア、江上スコア、佐野スコアなどが紹介されています。予測モデルで判断し、ステロイド剤を最初からIVIGに併用することで、予後が改善されたとの報告が相次いでいます。
まだ検証が不十分で、予測例に対して、第1選択として併用療法を行うことについては「議論の余地が残っている」と結ばれていますが、魅力的な方法なので、今後、現場で採用されることは多くなると思われます。

IVIG不応例に対する改訂治療戦略

初期治療(1stline)では、IVIGの有効性を再確認し、ASAとの併用を推奨しているのはこれまでどおりです。川崎病の急性期では、第7病日から血管炎像が強くなることが分かっており、「第7病日以前にIVIGの投与が開始されることが望ましい。組織学的に汎冠状動脈炎が始まるとされる第8~9病日以前に治療が奏功し、有熱期間の短縮や炎症マーカーの早期低下を目指す。」「おおむね80%近くはIVIG終了後48時間以内に37.5度未満に解熱する。残りが不応例であり、これらの症例に対してどのような追加治療を選択するが冠動脈瘤合併阻止の鍵を握る。」として、初期治療でのステロイド剤の併用、不応例へのIFXやCsAの使用選択が示されました。

診断と不全型への対応

川崎病の診断は、6つの主要症状のうち5つ以上、又は主要症状4つと冠状動脈拡大で、川崎病と診断することになっています。しかし、「主要症状を満たさなくても、他の症状が否定され、本症が疑われる不全型川崎病が15~20%存在する。これらの不全型は決して軽症ではなく心合併症も少なくない。定型例以外の不全型の診断は単なる数合わせでなく、“個々の症状の特徴”の解釈が鍵となる。1歳児におけるBCG部位の発赤や4歳以上の多房性頸部リンパ節腫脹などは比較的特異度が高い症状である。」と述べられています。

阪南中央病院での2012年の症例からの今回拾い上げたいくつかの症例が、早期の川崎病診断のために役立つことを期待します。

改訂ガイドラインによる川崎病急性期治療のアルゴリズム

1st line

IVIG 2g/kg + ASA 30~50mg/kg/日
あらかじめIVIGに対する不応の可能性が高いと予想される場合PSL2mg/kg,またはIVMP30mg/kgを併用

IVIG不応の予測スコア  群馬大学(小林ら) 久留米大学(江上ら)
大阪川崎病研究グループ(佐野ら) のスコア表を参照
IVIG終了後24時間以内に解熱し再発熱しないとき、ASA5mg/kg/日に減量

2nd line

IVIG終了後24時間以内に解熱しないか、再燃した場合
IVIG再投与 IVMP15~30mg/kg×1~3回(±PLR後療法) PSL2mg/kg/日(CRP陰性化後、漸減中止) UTI5000U/kg/回 1日3~6回(数日~1週間)

3rd line

なお解熱しないか再燃
IVIG再投与 IVMP PSL IFX5mg/kg 投与は1回のみ UTI CsA4mg/kg/日
血漿交換3~5日(循環血液量の1~1.5倍)
追加治療後も解熱しないか再燃した→IFXをのぞく上記治療のいずれかを選択

代表的なIVIG不応例の予測スコア