診療案内

Medical guidance

2012/2013シーズンのインフルエンザ

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

今シーズン(2012/2013シーズン)のインフルエンザ流行

2012/2013シーズンの流行は2013年1月中旬から拡大し、都道府県の多くで警報レベルを超えて増加しています。松原市内でも流行は拡大しており、1月30日現在で、幼稚園1園、小学校3校、中学校3で学級閉鎖、学年閉鎖が行われています。現在確認されている主要なウイルスはA/H3亜型(A型香港)で、一部A/H1pdm、B/ビクトリア、B/山形が混在して流行しており、昨シーズンと似たパターンを示しています。2011/2012シーズンの流行株は、A/H3N2亜型の流行の後、B/ビクトリア⇒B/山形へと移行したと報告されています。
インフルエンザによる入院患者・重症患者は、主に高齢者と乳幼児に集中し、これらの年齢層への注意が必要です。また、年長児、10歳代の活動性の活発な児童で、異常行動の発生に注意が必要です。
08/09A/H1N1pdm株では、99.6%がオセルタミビル耐性株(H274耐性株)であることが判明しており、抗インフルエンザ薬の乱用への警鐘と受け止める必要があります。今後、耐性の進行によって、使用可能な薬剤が限られ、治療に難渋するような事態に進まないよう、無差別、一律に投与が推奨されている現状を再検討する必要があると思われます。

院内感染予防策と高齢者への対応

インフルエンザ罹患による重症化は、主に高齢者・基礎疾患保有者及び乳幼児です。病院内で入院中の同室者が発症した場合の予防策について、日本感染症学会は、2012年に「インフルエンザ病院内感染に対する考え方について~高齢者施設を含めて」の学会提言を行っています。提言ではPost-exposure prophylaxisの有効性を推奨しており、同室者でインフルエンザが発症した場合、同室者全員に、複数の病室で発症が拡大した場合は、フロア全体の入院患者に、タミフル(1日1回75mg1カプセル 7~10日)、又はリレンザ(1日1回10mg吸入、7~10日)を使用することを提言しています。ラピアクタ、イナビルには予防投与の適応はないとされています。

抗インフルエンザ薬の留意点 少なくとも2日間1人にならないよう配慮する

2012年12月17日 日本医師会は、「抗インフルエンザ薬の使用上の注意に関する注意喚起の徹底について(お願い)」の通達を発信しました。
タミフルについては、緊急安全性情報(平成19年3月)で、「①10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症・既往症等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。②小児・未成年者については、万が一の事故を予防するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現の恐れがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。」と警告されていますが、今シーズンのインフルエンザ流行に対しても、「引き続きこれらの対策を継続することが妥当」として、「医療関係者、患者、家族等に注意喚起を図ることとする」との注意喚起です。
更に、昨シーズンの「インフルエンザに伴う異常行動の研究(厚生労働省研究班)」の調査で、イナビルでも飛び降り死亡事故が報告され、他の薬剤、リレンザ、ラピアクタ、シンメトレル等でも服用後に、急に走り出すなどの異常行動の発生が認められました。家族が制止したことで、事故を未然に防ぐことができたと推察される症例の報告もあり、未成年者に対して実施している「2日間ぐらいは一人にしない」との安全対策は、タミフルのみでなく、他のすべての抗インフルエンザ薬に対しても、同様に実施されるべきであるとの注意喚起です。タミフルに限らず、すべての抗インフルエンザ薬による治療開始後には、「①異常行動の発現のおそれがあること、②自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者らは小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと」との警告です。
また、調査では、アセトアミノフェン服用のみ、又は医薬品の服用がなかったのに、異常行動を呈した症例の報告もあり、抗インフルエンザ薬の処方の有無に関わらず、異常行動に関する注意をし、同様に少なくとも2日間、保護者は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することが推奨されています。
注意すべき異常行動の例としては、次の6つの例があげられています。

  • 突然立ち上がって部屋から出ようとする
  • 興奮状態となり、手を広げて部屋を駆け回り意味の分からないことを言う
  • 興奮して窓を開けてベランダに出ようとする
  • 自宅から出て、外を歩いていて、話しかけても反応しない
  • 人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す
  • 変なことを言い出し、階段を駆け上がろうとする。

乳児のインフルエンザ対策

インフルエンザ罹患で重症化しやすく、入院を必要とする経過をとるのは、高齢者と乳幼児です。使用可能な薬剤の「小児等における使用上の注意」は以下の通りです。ラピアクタは入院の場合が原則です。

  • 症状が出た新生児に対してオセルタミビルの投与を考慮する。特に早産児は発症すると重症化する可能性は否定できない。
  • 新生児には、原則、オセルタミビルの予防投与を推奨しない。ただし、どうしても必要と認めた場合に限り、十分なインフォームドコンセントを得た上で、新生児へのオセルタミビルの予防投与(予防投与量:1回量として2mg/kgを1日1回、10日間内服)を検討する。
  • ペラミビルの投与は、新生児への投与経験がないことから現段階において推奨できない。重篤な状態等で、どうしても必要と認めた場合に限り、十分なインフォームドコンセントを得た上で、ペラミビル1回量として10mg/kgの単回投与(点滴静注)を検討する。
  • オセルタミビル  新生児の投与量は、種々の推奨が提唱されている。

日本小児科学会:1回量として2mg/kgを1日2回、5日間
American Academy of Pediatrics:1回量として3mg/kgを1日2回、5日間内服
World Health Organization(WHO):生後14日未満;1回量として3mg/kgを1日1回、5日間内服 生後14日以降;1回量として3mg/kgを1日2回、5日間服用 NICU入院中の早産児は、1回量として1mg/kgを1日2回、5日間内服

インフルエンザ脳症

小児の急性脳症の最大の原因はインフルエンザです。小児の脳症の3大原因として、インフルエンザ、突発性発疹症、続いてロタウイルス腸炎が挙げられます。インフルエンザ罹患時の異常行動とあわせて、けいれん重積やけいれん後の意識回復の遅れ、意識障害で始まるインフルエンザ脳症についても、警戒が必要です。
異常行動が意識障害(見当識障害JCS2~3)に当たることから、目を離さず危険な行動を抑止することと、異常行動が一過性のせん妄で1~3時間程度で回復するものか、意識障害の悪化に進む脳症の始まりなのか、時間単位で経過を慎重に見守る必要があります。