診療案内

Medical guidance

小児糖尿病・小児のDKA(糖尿病性ケトアシドーシス)を見逃すな!

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

この1年間で3人の小児糖尿病患者のご紹介をいただきました。

症例1 11歳女児 学校検尿で連続2回尿糖4+ 体格は普通(身長136cm 体重36.6kg)

学校検尿で2回連続、尿糖4+。学校からの指導で、診療所を受診、やはり尿糖4+。糖尿病疑いでご紹介いただく。多飲・多尿・口渇などの症状は認めない。尿糖4+、空腹時血糖186mg/dl、HbA1c8.8%、尿ケトン体(-)。家族歴に糖尿病なし。大阪市立大学小児科へ紹介、1型糖尿の診断で、インスリンMDI(multiple daily injection、QQQL)4回打ちスケジュールでコントロール開始。

症例2 2歳2ヶ月女児 多飲・多尿とKussmaul呼吸

前月末から、多飲・多尿があったが、食欲もあり、気候(夏)のためと考えていた。
○月9日、母は「息が荒いなあ」と感じたが、食欲があり、水分もよく摂るので、特に悪いとは思わなかった。12日診療所を受診、感冒または喘息?の診断で感冒薬の処方を受ける。13日~14日息が荒い状態が続く。15日大きな過呼吸(Kussmaul呼吸)とぐったり感が出現、救急病院受診、検査でアシドーシスと高血糖あり、当院へご紹介いただく。血糖406mg/dl、pH7.077、尿ケトン体3+。糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の診断で、直ちに脱水症に対する生食輸液、その後インスリン持続静注開始。意識レベルの低下JCS2~10を伴っており、重症DKAとして、大阪市立大学小児科に転送を依頼、快く受け入れていただく。

症例3 2歳3ヶ月 女児 多飲・多尿、うとうと、ぐったり

○月25日当科初診。前月末、尿回数が多いので診療所を受診、膀胱炎と言われる。夜間尿が増え、2回のオムツ交換のオムツがずっしりと重かった。1週間前から元気がなく、ごろごろと横になりたがり、大きな呼吸(Kussmaul呼吸)をするようになった。○月25日昼寝の後、ぐったりとして起きない、眼がうつろとの訴えで診療所を受診、ご紹介いただく。検査で、血糖624mg/dl、pH7.27、尿糖3+、尿ケトン体3+、HbA1c12.1%、軽度の意識低下を伴うDKAと診断。脱水症に対する輸液→インスリン持続点滴(0.1単位/kg/h)→意識正常、血糖が300mg/dl以下となったところで、輸液にブドウ糖、KとPを添加。○月28日尿中ケトン体(―)で、インスリン皮下注(QQQL)に変更。

尿糖+なら、当たり前に糖尿病の検査を!

症例1からは、尿糖が陽性なら、2型糖尿病を発症するような体型でない場合、まず糖尿病を疑うという、あたり前のことを再認識させられました。この症例のように1型でありながら、たまたま学校検尿で発見され、症状を呈する前に診断されることは稀なことだと考えられますが、症状がないので腎性糖尿かもしれないなど、思考をめぐらしつつも、素直に糖尿病の検査を行うことが大切なことを教えられました。

小児1型糖尿病の疫学

近年、世界のさまざまな国と地域で、小児1型糖尿病の発症率の増加、発症の若年化が見られると報告されています。わが国の小児1型糖尿病発症率は(対10万人年)約1.5~2.5で、この20年間少しずつ増加してきています。妊娠糖尿病母から生まれるベビーは多数経験します。今回、3例もの糖尿病の発症が続きました。すべての世代で糖尿病が医療の重要な部分となりつつあります。

乳幼児のDKAへの認識をもって、外来診療に当たる時代

小児救急の重症度では、「糖尿病・意識障害」はレベルⅠ(蘇生)に相当する最も緊急性が高いものに位置づけされ、「糖尿病・ケトアシドーシス」は、レベルⅡ(緊急)に当たるとされています。DKAの死亡率は0.15%~0.3%で、その60~90%は脳浮腫によるものです。
DKAは乳幼児でも、日常診療の中で遭遇する時代となりつつあります。予後の悪さにつながらない時点での診断が行えるよう、身構えて診療に当たることが必要な時代になってきているのかもしれません。

DKAの診断と治療

診断は、①高血糖(200mg/dl以上)、②ケトーシス(ケトン血症またはケトン尿症)、③アシドーシス(pH7.3未満)で行われます。また、重症度はアシドーシスの程度で分類されます。①軽度:pH<7.3 or HCO3<15 ②中等症:pH<7.2 or HCO3<10 ③重症:pH<7.1 or HCO3<5
治療と管理の基本は以下の通りです。1時間ごとの(必要な場合にはさらに頻回に)血糖・電解質測定など、綿密な観察管理が必要となります。
① 脱水・電解質の補正 → ②インスリンの補充 → ③カリウム(リン)の補給 →④アシドーシスの補正 → ⑤インスリン皮下注射への移行 の順です。
脳浮腫が生じた場合にはマンニトールを使用。

(小児)糖尿病治療の進歩

インスリン頻回注射法(MDI);超速効型インスリンアナログ(Q)と、持続型インスリンアナログ(L)によるMDI(QQQL)が行われます。
CSII(continuous subcutaneous insulin infusion)は、持続的なインスリンの皮下注入と追加注入の両方を注入速度の違いで行うものです。Qを用いることで、MDIより生理的なインスリンの日内動態が可能となります。
応用カーボカウントの考え方とは、MDIやCSIIにおける食前のインスリン量が、食事中の炭水化物量を計算することで決定することができるとするもので、「食事中の炭水化物と必要なインスリン量が比例する」という考えに従います。例えば、症例1の患者さんでは、目標血糖値100mg、インスリン効果値100mg、インスリンカーボ値20g/単での設定で良好なコントロールが得られています。

持続血糖モニター(CGM;continuous glucose monitor)は、皮下に小型電極を挿入し、皮下間質液中の糖濃度を持続的に測定します。これにより、高次元のインスリン調整が可能となってきています。

高血糖高浸透圧状態(HHS:Hyperglycemic Hyperosmolar State)との鑑別

DKAとの鑑別が重要な疾患です。HHSは、血糖600mg/dl以上、動脈ガスpH>7.3、HCO3>15、尿ケトンはわずか、ケトン血症はない、あってもわずか、血清浸透圧>320 mOsm/kg.H2O 昏迷または昏睡で、診断されます。意識障害が進み、死亡の危険性が高い病態です。
若年の2型糖尿病で見られ、高血糖が極端で、アシドーシスが強くないのが特徴とされます。若年の意識障害例で、HHSを疑った場合、集中治療が必要です。