診療案内

Medical guidance

腸重積症

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

9歳の腸重積2例

※ 過去の記事は(小児科トピックス2007年11月)でご覧になれます。

2007年、9歳の腸重積2例を経験しました。
症例1は病原大腸菌O-157の合併症として腸重積を発症、症例2は原因不明でした。
9歳での腸重積で、原因不明のままでは放置できず、経過観察を続けていたところ、整復2~3週後、右下腹部に腫瘤を触知、腫瘤は急速に拡大する傾向を示しました。超音波検査で回腸末端約20cmにわたって腸管壁の部分的肥厚が認められ、大阪府立母子保健総合医療センターで、Burkitt Lymphomaと診断されました。
最初、この患者さんを腹部腫瘤の主訴で、同センター小児外科のDr.に直接電話で診察をお願いしたところ、外科でなく小児腫瘍内科への受診が望ましいこと、受診時には必ず小児外科にも連絡が届くようにしておくとの、ご指示をいただきました。
結果がBurkittであったことから、同センター小児外科の適切なご指示とレベルの高さにさすがと驚かされました。
このことは今でも我々の語り草になっています。

腸重積の診断

典型的な症例では、間歇的腹痛(5~20分毎)、嘔吐、血便を認めます。イチゴゼリー状の粘血便(メッケル憩室からの出血ではブルーベリー状)、ソーセージ様腫瘤の触知、右下腹部が空虚となるダンス徴候などを伴います。
しかし、間歇的腹痛、血便、腹部腫瘤が明らかでない症例も少なくなく、疑った場合にはエコー検査で確認することが必要です。エコーでの診断が確定診断上、欠かせません。 同心円状に描出されるtarget signまたはmulticoncentric ring sign、と長軸方向でのpseudokidney signで確認します。

治療法

全身状態が悪い、遊離ガスを伴うなどの症例は、注腸整復は禁忌で、小児外科への転送が必要ですが、実際には最初から小児外科への転送を必要とした子どもは経験していません。この地域での医療アクセスの良さを反映していると思われます。
注腸整復には、①透視下造影剤注腸法 ②透視下空気注腸法 ③エコー下生理食塩水注腸法 の3方法が行われています。どの方法も整復率には優劣がないとされています。
当院では現在、透視下空気注腸で整復を行っていますが、被曝の点から、来年度には、超音波検査室と協力して、エコー下生理食塩水注腸法も取り入れる予定です。

注腸法で整復困難であった1例

最近、注腸整復が困難な1例に遭遇しました。回盲部のリンパ節をかみこみ、横行結腸に位置した腸重積で、肝弯曲部を超えるまでに、すでに数回の空気の圧入~排出が必要でした。この時点で、腸管の浮腫軽減を目的にハイドロコーチゾン10mg/kgを投与。下行結腸からの進みも悪く、盲腸部でさらに十数回の加圧と空気の排出を繰り返し、最後にマニュアル操作を加えて、回盲部の反転、腸重積の整復が成功しました。

観血的整復術

安全に加圧注腸による整復を安全に行うために、Rule of Three =【3つの3ルール】が提唱されています。消化管穿孔という最大の合併症を最小限に抑えるための安全策です。
①整復圧3フィート ②加圧1回3分 ③加圧回数3回 → 観血的整復へ
しかし、整復が困難な今回の症例のような場合、腸管の浮腫を軽減するためのステロイド剤の使用、慎重な用手的な操作、時間をおいての注腸(delayed repeated enema)など、【3つの3ルール】を越える操作で、非観血的方法での整復が成功するものもあります。あくまでも慎重さが求められますが、2次小児救急医療のできる範囲で努力を続けていきます。