診療案内

Medical guidance

下血・血便・消化管出血の4症例

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

この数ヶ月で、教科書的な消化管出血を数例経験しました。ご紹介いただいた症例の中で、重症例や、手術を要する症例は、より高度な3次医療機関へつなぐことが私たち地域の小児科センター病院の役割です。腸重積を除いて、各々、大阪府立母子保健総合医療センター外科、大阪府立急性期・総合医療センターにご紹介し、治療を行っていただきました。最終診断や治療の結果を共有することで、かかわった小児科医全員の経験となり、レベルアップをはかることができます。「小児科のトピックス」はそのような目的で、続けています。

【症例1】 4歳 女児 メッケル憩室

経 過

○月14日:
夕方、保育所から帰った後、熱に気づく。
17日:
朝、タール便あり、U先生受診、Hbが7.8g/dlの貧血で、メッケル憩室の疑い診断で、ご紹介いただく。

   

タール便、貧血以外には、本人の訴えなし。腹部圧痛をはじめとする腹部症状もない。
腹部エコー検査:明らかな所見を認めない。

診断と治療

当院受診当日、大阪府立母子保健総合医療センター外科に受け入れをお願いし、転院。転院後、下血があり、輸血が必要となる。メッケル憩室シンチで右下腹部に集積像を認め、緊急手術。腹腔鏡でメッケル憩室を同定し、臍創部から憩室を引き出し手術。完治。

症例2  1歳8ヶ月 男児  十二指腸潰瘍

経 過

○月15日:
16日:
熱が続く
17日:
解熱、嘔吐2回(吐物は食物残渣)、1日中元気がない状態、夕方、おむつに黒い便(親は気に留めていなかった)
18日:
元気なく、傾眠状態、夕方、T先生受診、顔色不良で、元気がないとしてご紹介いただく。検査でHb8.0g/dl、尿素窒素33.9mg/dl、クレアチニン0.34mg/dl、TP4.4g/dl、Alb2.6g /dl。意識低下あり、脳症疑いで頭部MR検査なども実施。MR検査:異常なし。
入院2時間後、初期輸液後の血液検査でHb5.4g/dlに低下。同時にタール便に気付き、希釈による見かけの貧血の進行と判断、1単位の赤血球と凍結血漿を輸血。この間の意識状態の悪さは失血性ショックによるものと考えられる。輸血により全身状態良好となる。
19日:
熱が続く

診断と治療

CT、USで十二指腸の壁の肥厚。メッケル憩室シンチ:集積像なし
全麻下で、GFS:幽門開口部に発赤2箇所、十二指腸前壁に2cmの地図状潰瘍(白苔化) 生検でピロリ菌:陰性 特発性又はNSAIDs潰瘍の診断。3週間のファモチジン服用と3ヶ月後の健診。

その後

母子センター退院後、約2ヶ月たって、嘔吐と元気のなさで、当科を受診。このときには、消化管出血、貧血を認めなかった。ファモチジンを投与、軽快した。

症例3 0歳10か月 男児  腸重積

経 過

○月23日:
夕方、保育所から帰った後、熱に気づく。
24日:
朝、タール便あり、U先生受診、Hbが7.8g/dlの貧血で、メッケル憩室の疑い診断で、ご紹介いただく。

治 療

沈静下に、空気による高圧浣腸整復。上行結腸を空気がカニバサミ状を呈しながら下行に押し戻し、回盲部で少し停滞したあと、小腸への大量の空気の流入を確認して整復終了。


症例4 12歳 女児  潰瘍性大腸炎

経 過

血便が始まる1ヶ月ほど前から、時々下腹部痛、便の回数は1日2~3回。
○月1日ごろから、便に鮮血が付着するようになる。
9日にY先生受診、当科へご紹介いただく。当院外科受診、内視鏡検査を予約。
CRP<0.2mg/dl 血沈16/38 白血球7600 Hb13.2g/dl 便回数2~3回/日 頻脈なし

診 断

10日に下部消化管内視鏡検査 : 〔結腸〕異常なし 〔直腸〕発赤、びらん、出血
診   断 : 潰瘍性大腸炎 生検
病理検査 : Ulcerative colitis suspected GroupⅠ、Cryptitis、Crypt abscessを認める

治 療

10日からペンタサ投与開始
○月20日に大阪府立急性期・総合医療センター小児科消化器疾患外来をご紹介、予約受診当日に潰瘍性大腸炎の診断で入院される。

下血・血便の鑑別診断と過去の症例

症例2では、貧血と低タンパク血症、尿素窒素の軽度の上昇がありました。しかし、これらのデータがすぐに、便の確認、下血・消化管出血に結びつかなかったことは反省材料です。
以前、新生児の血便でO−157を検出したことがありました。母親が分娩直前にユッケを食べた結果でした。幸いHUSの発症はありませんでした。ミルクアレルギーは血便ではなく、しつこい嘔吐でした。中学生では、十二指腸のDieulafoy潰瘍も経験しました。9歳の腸重積で整復後に回盲部に触診で分かるtumorが残り1~2週で増大、大阪府立母子保健総合医療センター外科のDr.に相談したところ、外科でなく、先ず血液腫瘍科を受診するようご指導頂き、結果バーキット腫瘍であった症例もありました。この時は、小児外科のDr.に脱帽でした。
下血は、年齢に関連した特有のパターンがあります。一般的なことですが、再確認しておくことにします。

新生児期~乳児期:
壊死性腸炎、新生児メレナ、ミルクアレルギー、回転異常症、ビタミンK欠乏性出血症
乳児~幼児:
壊死性腸炎、新生児メレナ、ミルクアレルギー、回転異常症、ビタミンK欠乏性出血症
幼児~学童:
大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病
全年齢:
細菌性腸炎