診療案内

Medical guidance

けいれん重積性脳症と突発疹 けいれん重積

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

今年1月、けいれん重積型脳症を経験しました。二相性のけいれんで、第二相のけいれんの群発が特徴的でした。
脳症.とは、意識障害、脳圧亢進症状、けいれんを主な症状とし、感染症を契機に急激に生じる非炎症性の脳機能障害をきたす疾患を言い、乳幼児に好発します。脳症の病態の解明が進み、分類化されるようになったのは2000年以降で、この「あんしんネットワーク」でも、2007年6月の小児神経学会で配布された文献資料に基づいて、次のような分類を紹介しました。

  • 代謝障害に基づくもの(種々の先天代謝障害と古典的なライ症候群)
  • 全身性のサイトカインストームと血管原性の脳浮腫を特徴とするもの(急性壊死性脳症ANEやhemorrhagic shock and encephalopathy:HSEなど)
  • 興奮毒性による脳皮質の局所的な浮腫と遅発的な神経細胞死をきたすもの(けいれん重積型急性脳症【AESD】がもっとも症例数が多いとされる)

2011年1月の症例 2歳0ヶ月 女児 二相性のけいれん重積

第1病日:
発熱 12分間のけいれん、眼球固定、間代性、意識消失。
I医院受診、ダイアップ坐薬4mg使用。当院へご紹介いただき入院。
その後再び、けいれん、眼球上転、間代性けいれん出現。ミダゾラムにて止痙。
CRP0.3mg/dl 白血球11900 インフルエンザA(-)B(-) 髄液検査:細胞数3
頭部CT:器質的異常を認めず
第2病日:
高熱が続く。意識は回復しつつあるが、少しボーとしている。ふらつきあり。
第3病日:
下熱、体幹に発疹が出現、突発疹と診断。いつもは区別できるバイキンマンをアンパンマンと呼ぶ。(軽度の意識障害と考えられる)、少し興奮気味。
18時 眼球固定と間代性けいれんが数秒間出現、同様発作は、数10秒に延長し、繰り返す、この間意識なし、ミダゾラムivとミダゾラム0.1mg/kg/h持続投与にても、止痙得られず、けいれんは断続。
24時 けいれん重積による脳症として、大阪市総合医療センターに転院をお願いし、深夜にかかわらず、受け入れていただく。
頭部MR検査で、前頭部皮質下に異常所見あり、けいれん重積性脳症の診断で、抗けいれん剤の持続投与、気管内挿管、人工換気治療へ。

けいれん重積型急性脳症(AESD)

名称:
インフルエンザ脳症ガイドライン(改訂版H2009年)17ページに、「B.亜急性・二相性の臨床経過、限局性脳浮腫、大脳皮質障害をともないやすい脳症(けいれん重積型)」と記載され、「けいれん重積型急性脳症(acute encephalopathy with febrile convulsive status epilepticus塩見)」の他、「二相性けいれんと遅発性拡散低下を呈する急性脳症(acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion,AESD高梨ら)」、「二相性臨床経過を伴う脳症(前垣ら)」として報告されているものです。
相互に大部分がオーバーラップしており、ここではけいれん重積型脳症(AESD)と呼ぶこととします。
特徴:
以下のような特徴があります。

  • けいれんと意識障害の2相性の経過:第一相(第1病日)におけるけいれん重積と第二相(第3~9病日)における発作群発
  • 第二相で遅発性に出現する大脳皮質の限局性浮腫、特に皮質下白質の高信号(bright tree appearance)、しばしば脳葉に一致(lobal edema)
  • 第二相の後に明らかとなる大脳皮質機能低下(高次機能障害)
  • 第2~4病週 亜急性に進行する大脳皮質の神経細胞死と血流低下
臨床像:
HHV-6によるけいれん重積型脳症では、第一相が突発疹の有熱期、第二相が下熱・発疹期にあたります。
第一相のけいれんけいれんが1回だけで、けいれん重積をきたさない場合が約半数と報告されていて第二相で群発し、予想外の経過をたどることも多いようです。
解熱し単純性熱性けいれん・突発疹の診断で退院した直後にけいれん重積を起こし、もとの主治医が知らないまま総合医療センターに入院される症例があるそうです。
この症例も、翌日退院の予定でした。
インフルエンザなどによるけいれん重積型では、第一相のけいれん重積が強い傾向があるなど、原因疾患によって臨床経過に若干の差異があるようです。
病態:
けいれん重積による興奮毒性が原因とされています。
その他、炎症性サイトカインの関与、脳血管関門の障害、アポトーシス~遅発性細胞死などの関与が示されています。
治療と予後:
けいれん重積に対する治療が最重要です。致命率は高くないが、重症例では神経学的後遺症を残す症例も多いと報告されています。

けいれん重積の治療
ジアゼパムでけいれんが止まらない場合のミダゾラム静注治療

けいれん重積の治療方針は、常に治療方針を確認し、心構えをしておく必要があります。

ミダゾラムは、血管が確保されていないとき、両側鼻腔内へ注射用原液で、0.15mg/kgずつ鼻中隔に向けてゆっくり注入(計0.3mg/kg)し、止痙を期待することができます。点鼻は速効性で、2~3分程度で効果が期待できます。点鼻でけいれんが消失しない場合は、血管を確保して静注する必要があります。