診療案内

Medical guidance

細菌性髄膜炎

小児科医 ( 病院長 ) : 中田成慶

12月細菌性髄膜炎症例を経験しました。その症例報告と、細菌性髄膜炎に対する覚書をまとめました。重症細菌感染症を的確に診断、治療に結びつけることは臨床でもっとも重要な仕事の一つです。
ただし、Hibワクチンや、肺炎球菌結合型ワクチンの普及で細菌性髄膜炎の大部分を予防できるとしたら、これに勝るものはありません。松原市はいち早く補助を決めました。ワクチン普及を期待します。

症例 11歳 女 肺炎球菌性髄膜炎

12月○日:
熱(第1病日)
第2病日:
下熱
第4病日:
熱あり、1日中、頭痛と嘔吐が続く。
第5病日:
夕、Tクリニック受診、39℃、頭痛、嘔吐あり、意識は正常だが、項部強直を認めるため、髄膜炎の疑いとしてご紹介いただく。
項部強直:きわめて明らか
髄液検査:細胞数4928(多核球88.6% 単核球11.45) 蛋白439mg/dl 糖14mg/dl
髄液G染色 菌を検出できず
CRP19.3mg/dl 白血球23300(好中球91.15)
細菌性髄膜炎の診断で、デキサメサゾン0.15mg/kg 抗生剤投与15分前1日4回、カルベニン1g1日4回、セフォタックス2g1日4回投与開始。
第6病日:
体温38.2度、下熱傾向、複視が出現。
髄液、血液培養検査で、G+双球菌が検出される。肺炎球菌と推定。後日、同定・感受性検査でペニシリン感受性のPSSPと報告される。
頭部MR検査:脳梁膨大部に拡散強調画像で卵円形の高信号を認める。いわゆる、「可逆性脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症(clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion;MERS)」を併発。
第7病日:
下熱、外眼筋麻痺、活気のない状態で、看護師をみて「お母さん」と呼びかけるなどの意識障害が出現、中枢神経障害の進行を懸念し、大阪市立総合医療センター小児感染症科に、治療を依頼、転院。転院時、髄液検査で細胞数は減少傾向を見せていた。
いただいたご報告によると、家族了解のもと、フィニバックス(カルバペネム)1日3回の治験治療スケジュールに参入、フェノバール併用。その後の経過は良好で、複視、外転障害は消失、脳梁膨大部の病変も消失。
第17病日:
フィニバックスは中止。
第19病日:
退院となった。
抗生剤の使用は計13日で、後遺症なく治癒したものと考えられる。

細菌性髄膜炎に対する覚書

細菌性髄膜炎の感染経路

大部分は血行性で、呼吸器・消化器粘膜に付着・増殖した細菌が血中に侵入し、血液内で生存し、髄膜へ侵入した後、くも膜下腔で増殖し、発症するとされています。この症例では中耳炎があり、中耳炎からの波及の可能性もあります。

診断

not doing well 熱 頭痛、嘔吐、髄膜刺激症状、意識障害、けいれん、大泉門膨隆 神経学的異常
皮膚(Waterhouse-Friderichsen症候群)

髄膜刺激症状

項部強直:
最も重要、しかし1歳半以下では、検出が困難で、診断の根拠とはなり難い。
Kernig:
股関節・膝関節を90度曲げ、下腿を受動的に伸展
正常:下肢はまっすぐに伸び、上腿と下腿は135度以上になる
異常:下腿を135度以上に伸展できない
これは髄膜刺激による膝の屈筋の攣縮による
Brudzinski:
仰臥位の患者の頭を受動的に屈曲させると、股関節、膝関節に自動的な屈曲が起こる

首が固くなければ髄膜炎は否定していいの?

髄膜刺激症状は髄膜炎否定の材料にならない!ある報告では、1/3しか髄膜刺激症状を示さなかったとの報告もあるくらいです。

初回の血液検査でCRP低値で髄膜炎を否定できるか?

CRPの上昇は12時間~24時間遅れます。CRP低値でも初期なら重症細菌感染症を否定できません。

初回の髄液検査で細胞数の増加がない場合、髄膜炎を否定できるか?

病初期での髄液検査で異常がないのに、細菌性髄膜炎であったとの報告が散見されます。細菌性髄膜炎が疑わしければ、初回の髄液検査で白血球増多が見られなくても、時間をおいて再確認する必要があります。小児救急医学会に集う先生方による「これから出会う物語 小児科症例集40例」(中山書店2010)の中に、苦い経験や、自慢できる症例経験が語られています。

熱のけいれんと髄液検査

単純性熱性けいれんと判断できないとき、1歳(特に6ヶ月)以下の初発熱性けいれん、15分以上持続するけいれん、24時間以内に2回以上のけいれんなどの場合は髄液検査が必要となります。

熱の4ヶ月未満児に注意

不明熱fever without source(FWS) である場合が多く、重症細菌感染症の鑑別診断のためにsepsis workupが必要となります。①CBC(血算、白血球分類) ②血液培養 ③尿検査 ④尿培養 ⑤髄液検査・髄液培養 ⑥胸部X線検査の6項目です。

Empiric therapy

髄液、血液の塗抹標本のG染色で、抗菌薬を選択することは、治療の原則ですが、起炎菌をしぼれない場合、empiric therapyは、治療の土台となるものです。

日本神経感染症学会ガイドライン

4ヶ月未満 アンピシリン + CTX or CTRX
4ヶ月~16歳未満 カルバペネム系抗菌薬+第3世代セフェム(CTX or CTRX)
日本小児救急医学会 小児に対して、肺炎球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ桿菌をカバーし、髄液移行のよい第3世代セフェム+VCM
成人の細菌性髄膜炎 セフトリアキソンとバンコマイシンで治療開始

ステロイド投与

抗菌薬投与15分前 6時間ごと2~4日
ガイドラインでは、乳幼児から小児期のインフルエンザ桿菌による髄膜炎に対しては【推奨】、肺炎球菌によるものに対しては【使用を考慮】とされています。

適切な治療期間

肺炎球菌:14日、インフルエンザ桿菌:7日、髄膜炎菌:7日、B群連鎖球菌:14~21日、リステリア:21日