診療案内

Medical guidance

激しい水様下痢で始まった川崎病例と全国調査に見る川崎病の動向

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

症例 6才男児 激しい水様下痢と嘔吐

経 過

第1病日:
嘔吐数回
第2病日:
水様下痢が始まる
第3病日:
40℃、水様下痢と嘔吐が続く。トイレまで待てないぐらい
当院へご紹介いただく
腹部エコー:上行結腸全体と横行結腸口側半分の壁の著明な肥厚と周辺脂肪組織炎
CRP6.0mg/dl 白血球20300(桿状球20%、分節核球74%)
細菌性腸炎の診断で入院 輸液とFOM経口投与
エコーでの大腸の変化とは裏腹に、腹部の圧痛はほとんどなし
第5病日:
高熱と水様下痢・嘔吐が続く。嘔吐は胆汁様
エコー検査での大腸の所見は同様~増悪
FOM⇒CMZ div投与に変更
第6病日:
症状の改善なし、結膜充血、口唇の乾燥・潮紅色が出現
第7病日:
熱・水様下痢・嘔吐がなお続く。結膜充血に加えて、口唇の亀裂・出血、不定形発疹、手掌紅斑、頸部リンパ節15mm多数が出現、川崎病診断基準6/6を満たす確定例となる。川崎病と診断
心臓エコー検査:右冠動脈起始部(RCA)径 2.1mm(-0.89SD=Zスコア)
左冠動脈起始部(LMCA)径3.0mm(+0.48SD):拡大とはいえない
IVIG 2g/Kg投与 アスピリン30mg/kg 併用
第8病日:
解熱。下痢は続く。以後発熱なし
第10病日:
便ははじめて有形となる。アスピリン5mg/kg分1に減量
   心臓エコー検査:RCA2.1mm LMCA3.4mm(Z score:1.35 軽度拡大)
第14病日:
退院
第30病日:
心臓エコー検査:LMCA3.1mm正常化傾向

年長児の激しい腸炎で始まった川崎病

2015年の川崎病全国調査報告では、6歳以上の年長児の川崎病症例の割合は、全体の7.6%です。年長児では、頸部リンパ節が初発症状のことが多く(node first)、症状が揃うまでに時間がかかること、下痢・嘔吐、関節痛などの非典型的な症状が見られることも多く、診断の遅れが問題とされています。この症例では、激しい水様下痢と嘔吐、エコー検査での上行結腸の著名な浮腫性肥厚、腸管周辺の脂肪組織へ輝度の上昇=炎症の波及を示す典型的な腸炎として発症し、抗生剤には反応せず、免疫グロブリン投与で治癒しました。年長児では下痢・嘔吐などの非典型的な症状を伴うことが多いとされていますが、このような激しい腸炎が川崎病の初発症状であったことに驚いています。
抗体測定はできていないのでエルシニア感染症の可能性は否定できませんが、経過からは川崎病そのものによる腸炎であったと考えています。川崎病の消化器症状としては、胆嚢水腫、肝機能障害はよくある急性期合併症ですが、その他にこの症例のような腸管浮腫を伴う麻痺性イレウスを呈することを念頭に置く必要があります。その場合、IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン)との鑑別、盲腸周辺の病変が強ければ、虫垂炎との鑑別も問題となります。年長児では後遺症の発症率が高い傾向があり、眼窩の蜂窩織炎、咽後膿瘍、股関節炎など、局所の細菌感染症と区別のつかない川崎病症例についての注意が必要です。
川崎病の年長例に関しては、第41回近畿川崎病研究会(2017年3月4日)で、喉頭蓋炎で始まった35歳の川崎病確定例の報告がありました。内科からの院内紹介で、小児科が関与し、川崎病と診断されました。年長者の川崎病は、多彩な症状で発症すること、その診断には、多数の症例を経験している小児科医に責任があると感じながら、報告を聞きました。

第24回川崎病全国調査成績(2015年9月)と治療方針の動向

2017年9月「第24回川崎病全国調査成績」が発表されました。2015年1年間の患者数は1万6323人で、「第23回川崎病全国調査」での、2014年患者数15,979人を上回り、過去最高の患者数を記録しました。2016年は1万5272人と高い数字ですがやや減少しています。2017年(今年)の川崎病の発症は当院では晩春以後の症例が減少しており、このままの勢いで川崎病が増加することはなさそうです。
3歳未満の者の割合は64.1%、年令分布では男女とも9~11か月にピークを持つ一峰性の山を示し、同胞例の割合は2.1%、両親いずれかの川崎病既往歴は1.2%、再発例は4.2%でした。
心障害の発症率は、発症後1か月以内の「急性期の異常」は8.1%(1997年~1998年の第15回調査では20.1%)、1ヶ月以降も残存する「後遺症」は、2.4%でした。報告患者に占める「急性期の異常」の種類別割合は、冠動脈の拡大5.59%、弁膜病変1.54%、瘤0.82%、巨大瘤0.13%、「後遺症」は2.3%、その種類別割合は、冠動脈の拡大1.30%、瘤0.64%、巨大瘤0.13%、狭窄0.02%、心筋梗塞0.02%でした。

川崎病 心障害の発生率

あんしん133号