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RSウイルスの知識

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

今年もRSウイルス感染が流行しています。乳児、特に3ヶ月以下のベビーでは、細気管支炎による呼吸困難、無呼吸発作、重症肺炎などで、重症化しやすい傾向があります。
3ヶ月までベビーの咳、ゼロゼロ、熱にはRSウイルス感染を考慮し、重症化しないか注意が必要です。
今回は、アメリカCDCが、家庭向けに発信しているパンフレットを紹介します。
併せて、2007年2月のあんしんネットワークで取り上げた、RSウイルス特集の一部を再掲してお届けします

RSウイルスの基礎知識(アメリカCDC Learn about Respiratory Syncitial Virus)

RSウイルスの早わかり知識

  • 空気の通り道(気管・気管支・細気管支)や肺に感染するウイルスの病気です。
  • RSウイルスは、主に乳児や高齢者に感染します。
  • ほとんどの子どもは、2才までに、RSウイルスに感染します。
  • ほとんどの子どもは、1~2週間で回復しますが、重症化することがあります。特に、6か月以下の子どもは重症化しやすいです。
  • 季節的には、秋から冬、早春に多発しますが、地域により、どの季節でも流行することがあります。

症状

  • RSウイルスは、感染した人からの咳やくしゃみで、空気中に飛び出した飛沫により伝染します。RSウイルスを含む飛沫は、他の人の口や鼻に入り、感染します。飛沫は、テーブルの表面などにも付着し、触れた手を口や鼻に入れることでも感染します。保育所や学校では、しばしば、うつし合いで感染が広がります。

予防

RSウイルスの伝染を予防するために、かぜ症状を訴える人は次の点に注意しましょう。

  • 咳やくしゃみのとき口や鼻をおおう。(くしゃみしそうな時ティッシュペーパーで、口元や鼻をおおう。)
  • 繰り返し、石けんと流水で、15~20秒手洗いを行う。
  • 他の子どもと、カップや食器を共用しない。
  • キッスしない。

RSウイルスを予防するワクチンはありません。しかし、未熟児などリスクの高い子どもは、月1回、病気の重症化を防ぐための注射(parimizumab、シナジス)を受けることができます。(訳注;日本では35週以下で生まれた赤ちゃんで、RSウイルス感染症が流行し始める時期(9月または10月)に、生後6か月未満であれば、シナジス注射を受けることができます。)

ケア

子どもがRSウイルス感染かもしれない場合、診療所・小児科を受診してください。特に、小さな乳児の場合は、心配な場合は、早めに相談してください。普通、1~2週間でよくなるものです。

医療従事者の方々へのRSウイルスの基礎知識(2007年3月号の一部を再掲)

臨床症状

代表的な病型としては、細気管支炎及び気管支炎を発症します。クループや肺炎、または上気道炎の原因でもあります。

細気管支炎:
咳、鼻水が2~3日続いた後、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などが現れてきます。肺炎の合併、喀痰の貯留による無気肺を起こしやすいのも特徴です。慢性肺疾患や先天性心疾患のある子どもは特に重症化しやすく、呼吸不全に至り人工換気療法を必要とすることがあります。通常は約1週間で軽快していきます。
無呼吸:
生後1ヵ月未満の新生児、特に早産未熟児で多く見られる病型です。新生児室・未熟児室、NICU内での、院内感染の最も危険な病原体の一つです。
その他:
肺内のair-trapping による胸腔内圧の上昇よりADH分泌異常症候群(SIADH)をきたし、低ナトリウム血症を呈することがあり輸液療法の際の注意点となっています。

病原体

RSVは直径80~350nmの球形をした、エンベロープをもつ、1本鎖RNAウイルスで、Paramixovirus科のPneumovirus属に分類されます。2001年に呼吸器ウイルスとして新たに発見されたヒトメタニューモウイルスとは近縁なウイルスです。

疫学

潜伏期は通常3~6日。平均4日。
乳幼児に最もインパクトが大きく、温帯地域では冬にピークがあり、初春まで流行が続く傾向があります。また、散発的には、夏にも集団発生の報告があり、1年中注意が必要となってきています。
乳幼児では1歳までに半数以上が、2才までに100%初感染を受けます。終生免疫は成立せず、再感染が普遍的に認められ、一生の内、何回か感染を繰り返すことが分かっていますが年長になるにつれて、上気道炎としての重症さは低下します。今後高齢者の施設での集団的な発症の危険性が指摘されています。

検査

鼻咽頭ぬぐい検査で、抗原検出キットにより、10分で結果が得られます。

治療

  • 補助療法
    対症療法・支持療法が主体となります。輸液、加湿、適切な体位、酸素投与、インスピロン治療、呼吸不全の場合の人工換気治療など。
  • 薬剤

    キサンチン製剤:
    気管支拡張剤としての効果については、疑問視されていて、無呼吸の場合に使用が考慮されます。
    副腎皮質ホルモン剤:
    クループ症状の場合は、デカドロン0.3~0.6mg/kgの使用が進められていますが、細気管支炎に副腎皮質ホルモン剤が明らかに有効とのエビデンスは示されていません。(しかし、重症の呼吸困難が生じた際、ステロイド剤の効果を期待する以外に方法がない場合も多く、現場では、酸素投与のまえに使用されることが多いのが現状です。実際、有効と判断されることも多いです。)
    リバビリン:
    アメリカでは吸入が推奨されてきましたが、現在では評価が低下しています。日本ではもともと、使用されてきませんでした。
    免疫グロブリン:
    明らかな治療効果はないとされています。
    抗生物質:
    ウイルス性疾患であり、2次感染の場合のみ使用されます。

シナジスによる予防

RNAエンベロープ蛋白の一つであるF蛋白に対するヒト化単クローン抗体(パリミズマブ、商品名シナジス)の月1回の筋注が開発され、商品化されました。
平成15年から、在胎35週以下の早産未熟児に対して、注射が認められ、平成17年10月からは重症の先天性心疾患の子どもにも適応が拡大されました。
かなり高価な薬品ですが、これまで10%以上であった重症例を3~5%に低下させます。
(他の定期ワクチン接種と重なっても何ら問題はありません。)