診療案内

Medical guidance

急性虫垂炎 寂しい時間外緊急手術体制の現状

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

時間外・予定外・緊急・小児の外科的疾患の中で、急性虫垂炎はありふれた疾患ですが、その体制は非常に寂しいのが現状です。昨今の麻酔科医の不足問題を始めとする医療事情の下で、小児の時間外緊急手術の体制作りは、これまで以上に難しくなってきています。当面は、このような患者さんを担当した医師同士で、協力して緊急の対策を模索することにならざるを得ません。
小児虫垂炎疑いの腹痛の時間外のご紹介は他の疾患と同様に、お受けするよう努力いたしますが、無条件でお受けできにくい事情があることもご理解ください。
今回は、最近、遭遇した小児急性虫垂炎の症例報告です。

小児急性虫垂炎の特徴

小児の虫垂炎は、腹痛が典型的でない、腸炎との区別がつきにくいことから、診断に苦慮することが多くあります。又、穿孔しやすいなどの特徴があり、診断時にはすでに腹膜炎や膿瘍形成が見られることもあり、緊急を要する場合もあります。
年少時では、下痢、嘔吐、食欲不振で始まることが多く、下痢や軟便、血尿などがあった場合でも、急性腸炎や尿路疾患と簡単には断定せず、虫垂炎を常に念頭におく必要があります。
上腹部痛で始まり、右下腹部痛があり、ホッピングサイン(腹膜刺激症状=右片足ホッピングでの痛みの増強)があれば、第1に虫垂炎を疑います。白血球数が10000以上、CRPが2.0mg/dl以上なら、疑いは更に濃くなり、外科のドクターへの相談が必須となります。

学所見と圧痛点

McBurney点:
臍と右上前腸骨棘突起を結ぶ線上の右1/3点
Lanz点:
左右上前腸骨棘突起を結ぶ線上の右1/3点

腹膜刺激症状
Blumberg徴候(反跳痛)
筋性防御

Rovsing徴候:
左下腹部の圧痛により右下腹部痛を訴える
Rosenstein徴候
左側臥位で圧痛点を押すと仰臥のときよりもMcBurney点での痛みが増強する

時間外の対応の困難性

開業医の先生方が、虫垂炎を疑った場合、外科のドクターへの相談が必要となりますが、緊急手術のスタンバイ状況は、実に寂しいものがあります。特に、開業医の先生方の午後診察でのご紹介に、対応できる体制は、私達の病院でも取れてないのが実情です。時間外の小児手術のための麻酔科医の確保が現状では極めて困難だからです。 私達も、出来るだけ患者さんのご紹介受け入れの努力をしますが、手術が前提の患者さんの場合は、お受けできない場合が出てくることもあり得ます。実情をご理解いただき、ご協力いただければ幸いです。

【症例1】 中河内救命センターを間接的に紹介した症例(時間外)―仲介例

2008年2月○日18時頃、松原市開業のK先生から電話での相談が入りました。6歳の下腹部に限局する痛み、腹膜刺激症状のある、下痢なしの患者さんの紹介依頼でした。電話情報からは、アッペ以外の診断名がおもい浮かばず、当院外科のドクターに受け入れ可能性を打診しましたが、受け入れ不可能とのことでした。阪南中央病院地域連携室で、緊急手術可能な医療機関を打診し、中河内救命センターに受け入れていただくことができ、K先生に電話で連絡、K先生の診療所より患者さんを直接、救命センターに救急搬送していただき、当日手術していただきました。

【症例2】 保存的に観察の後、手術になった症例(時間内)

2008年7月8日 10歳 男
前日夕方から腹痛、当日N先生受診、右下腹部痛あり、アッペの診断でご紹介いただき、入院。白血球11300、CRP0.7mg/dl、腹部エコー検査:虫垂は径9mmに腫大、周辺の脂肪組織のエコー輝度増強を認める。緊急性はないと判断で、抗生剤投与で経過観察。
翌、9日
腹痛は増悪していないが、同じ程度に続くため、手術に踏み切る。
欧米では、抗生剤投与で保存的に沈静化させ、intervalを置いて、手術を行うinterval appendectomyが良いか、できるだけ早期の手術が良いか論争があるようです。
わが国では、interval appendectomyはほとんど取り上げられていませんが、intervalをおいて後で手術を検討する方法が取れるなら、対応に幅ができることになります。

【症例3】 緊急手術が必要で、時間外手術の体制がとれた症例

7月22日 :
入院。3歳 男
17日 :
腹痛が始まる。
18日 :
微熱と腹痛、軟便あり。
20~21日 :
連休のため対応に遅れ。
21日 :
腹痛のため、横になっていることが多かった。
22日 :
午後のH先生受診、軟便あり18時33分ご紹介にて、初診。白血球38500、CRP18mg/ dl、右腹部全体に筋性防御あり、エコー検査で、回盲部の膿瘍形成を認める。緊急手術の必要ありと判断。
外科のドクターを介して、麻酔科のドクターに連絡をとることができ、21時から手術開始、多発性の膿瘍形成あり、洗浄をおこなった上、ドレーンを3本(ダグラス窩と回盲部)挿入・留置し、手術を終了しました。