診療案内

Medical guidance

この冬のインフルエンザに小児科ではタミフルは使いません

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

2007年の夏は、夏かぜや無菌性髄膜炎などの流行性疾患が極端に少ない珍しい年でした。
逆にこの冬はウイルス性腸炎(多分ほとんどがノロウイルス性)、水痘、麻疹、RSウイルス細気管支炎、インフルエンザなどが次々と流行し、感染症オンパレードの状態になっています。一次救急的な小児科がもっとも期待されている時期でもあります。
一生懸命診療を行っても待ち時間が長くなりがちで、そのために折角の診療が感謝されない結果になることもありつらい時期でもあります。ともあれ今こそ小児科の出番と考えて、毎日気を引き締めつつ元気に診療に当たっています。

私たちは子どものインフルエンザにタミフルは使いません

今年3月、厚生労働省は、「タミフル服用後の異常行動について」緊急安全情報を発しました。
子どもへのタミフルの使用は要約すると以下のようになります。

  • 10代の未成年者には使用制限
  • 9才以下の児童・乳幼児に対しては、添付文書で「治療開始後少なくとも2日間は一人にならないように配慮」することを加える
  • 1才未満の乳児にはもともと安全性が確認されておらず処方は認められていない

12月16日厚労省の専門家会議の報告によると、重度の行動異常の分析結果で、10代が69人(うちタミフル服用42人)、10才未満が56人(うちタミフル服用37人)でした。
平成13年2月タミフルの販売が開始されてからの異常行動を起こした282人の追加調査でも、34%が10才未満との結果でした。私たちは、「突然走り出す」「飛び降り」などの異常行動は、10才以下ではタミフルとの関係はない。が、安全であるとは言えないと考えます。
阪南中央病院小児科では、このシーズンのインフルエンザに対しては、小児の年齢のいかんに関わらず、タミフルは使用しないことにしています。インフルエンザの迅速検査での診断はこれまで通り行っていますが、検査実施の時点でたとえ検査が陽性でインフルエンザと診断できても安全性に問題があるので、タミフルは使用しない方が良いと思いますと説明し、ご了解を頂いています。

小児科ではリレンザも使用しません

リレンザは、小児科では5才以上に使用が認められています。(アメリカでは7才以上)
しかし、アナフィラキシー、気管支けいれん、呼吸困難の重大な副作用が記載されています。
2007年12月25日厚生労働省の薬事・食品審議会の安全対策調査会は、リレンザ、シンメトレルなど他のインフルエンザ薬でも異常行動の報告があり、添付文書に異常行動の恐れを追記する必要があるとの見解を発表しています。
リレンザは生食に溶いてネブライザーで吸入すれば、乳幼児でも吸入可能で有効とする報告がありましたが、きちんとしたエビデンスに基づいて副作用の検討が行われたものではありませんでした。
現時点では小児では年齢のいかんに関わらずタミフルと同様に使用しないことにしています。

子どものインフルエンザには快適環境と安静、対症療法で対処

当面タミフル、リレンザは高齢者のハイリスク患者に。限定使用で

子どものインフルエンザが12月中旬以後松原市内でも流行してきていますが、現時点では快適環境確保、安静、対症療法で臨むのがベストだと考えています。解熱剤を使用する場合は、アセトアミノフェンのみとしています。
脳症などの合併症も心配ですが、タミフルが脳症を減少させる証拠はありません。インフルエンザ脳症にタミフルによる異常行動が加わることの方がむしろ心配です。
成人では、添付文書にある通り『本剤の必要性を慎重に検討』した上、慎重に使用すべきで当面はハイリスクな高齢者に限定して使用することが望ましいと考えます。

タミフル副作用調査の現状 奇妙な結果も

2007年3月以降、タミフルの副作用に関する研究・調査が行われてきています。
9月ワシントン大学精神医学教授の和泉氏らは、タミフルの神経細胞への興奮作用=タミフルの危険性についての薬理的な証拠を発表しています。
12月25日、薬事・食品審議会の安全対策調査会は、タミフルと異常行動との因果関係は不明、なお今後の検討が必要、10代への処方原則禁止は継続、リレンザ・シンメトレルにも異常行動の報告があり添付文書に追記する必要があるなどの見解を発表しました。
この調査会の報告は、異常行動・異常言動を起こした人はタミフル服用群では9.7%(700/7181)、非服用群では22%(77/546)で、服用群に異常行動が少なかったという奇妙なものでした

  • タミフル非服用群母数があまりにも少ない
  • 軽症のインフルエンザは診断もされないので母数に含まれない可能性が大きい
  • 3月までは、インフルエンザと診断された患者のほとんどはタミフルを処方されており、非服用者は軽症であった可能性が高い

などデータの偏りは明らかです。
タミフルの10代での使用制限は継続とされましたが、これから出される見解に不安がよぎります。
同日、国立感染症センター長を班長とする厚生労働省の別の研究班からも報告が出されました。これによると10代の使用が原則禁止された3月以降、「突然走り出す」「飛び降り」などの重度の異常行動を起こした患者は禁止前の3分の1に減少し、タミフル禁止が異常行動を減少させたことが明らかにされています。
今後タミフルと行動異常の関係、10代の原則禁止の継続、小児での使用の是非を巡って更に議論がなされるでしょうが、子どもの安全確保の基本に立った現場での診療に役立つ指針が出されることを望みます。