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Medical guidance

松原市と周辺の麻疹の流行

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

ついに、はしかが現実の流行となって現れてきました。2007年11月22日付けで、松原医師会より、天美地区での麻疹疑い患者の発生と、流行への注意を促すニュースが配信されましたが、阪南中央病院でも、今年になって11例の麻疹患者があり、そのうち、10例は、この9月以降の例となっています。麻疹の流行は、この冬にはインフルエンザの流行と平行して拡大する様相を呈してきています。
「あんしんねっとわーく」では、7号と17号の2回にわたって、麻疹を取り上げてきましたが、麻疹の身近での流行が現実となった今、麻疹をテーマとする3回目の『小児科トピックス』をお届けします。

今年の11症例とその特徴

麻疹2007年

症例 年齢 性別 発症日
(2007)
住 所  
10Y 5月28日 大阪市
(平野区)
10Y 9月29日 大阪市
(東住吉区)
14Y 10月29日 堺市
(北区)
20Y 11月3日 堺市
(北区)
症例2の姉・分娩後2ヶ月
15Y 11月6日 堺市
(北区)
症例2の姉
21Y 11月6日 堺市
(北区)
症例2の姉・妊娠25週
2M 11月14日 堺市
(北区)
症例3のベビー・11/16γグロブリン注、ALT1000の肝機能障害
28Y 11月21日 羽曳野市
(大阪府)
22Y 11月22日 羽曳野市
(大阪府)
妊娠26週
10 1.4Y 11月23日 松原市
(大阪府)
保育園児
11 16Y 11月25日 松原市
(大阪府)

若年層が罹患

2000年時点での、麻疹感受性者の推計があります。それによると、10才から14才では約30%、15才から30才まで約20%となっています。7年経った現在では、17才~37才では、実に、20~30%が感受性者であるという、恐ろしい現実があります。現在罹患中の、実際の症例でも、ほとんどが、この年齢層のようです。
麻疹の前回の流行は2000年でした。この時には、若年者の罹患の増加傾向はありましたが、それでも、乳幼児の罹患の方が圧倒的でした。2007年の流行は、これまでと全く違う若年流行パターンとなっていることが特徴的です。

子どものインフルエンザには、快適環境と安静、対症療法で対処

妊産婦の罹患と2ヵ月児の罹患例

2000年の流行時に、当院での妊婦の罹患者数は3人でした。今回は、同一親族で、妊婦2名、産婦1名、その産婦の2ヶ月の子どもが1名発症しています。2ヶ月児は、ALTが1000を超える肝機能障害を合併し、小児科医にとっても、新生児麻疹は未経験の分野だと痛感しました。
妊産婦の感染で、胎児・新生児・ワクチン接種年齢に達しない1才未満の乳児の麻疹罹患の危険が、これまでになく高くなっています。全国的な対策が早急に必要とされています。

麻疹患者発見時には、接触者の追跡、予防対策が必要です

患者の周りの感受性者に対して、予防策を講じることが必要で、家庭、近所、学校・職場・組織への連絡と連携した対策が必要となります。国立感染症研究所のマニュアルが参考になります。
(第14回あんしんねっとわーく)
接触72時間以内なら、ワクチン接種で発症を予防できる可能性があります。
麻疹単独ワクチンが手に入りにくい現状では、MRワクチン使用が現実的です。
接触6日以内なら、ガンマグロブリン(0.1ml〜0.33ml/kg 筋注)で、発症を予防できる可能性があります。
(Nelsonの教科書やRed Bookでは0.25ml/kg)

診療所職員の麻疹対策が必要

35才(〜40才)以下の診療所職員では、その20〜30%が麻疹感受性者である可能性があります。職員定期検診で、麻疹抗体価を測定したデータをお持ちでない場合は、早急に、職員の麻疹抗体検査を行い、感受性者にワクチン接種を行うことをお勧めします。
(第14回あんしんねっとわーく「国立感染症研究所 職員対策マニュアル」参照)

37才以下の麻疹抗体検査、又は/及び、ワクチン追加接種が望まれます

来年度から、5年間の時限で、中学1年生と高校3年生にMRワクチン接種が行われる予定ですが、この年齢をもっと拡大して、37才以下で、麻疹にかかった経験のない「誰も」が、追加麻疹ワクチン又は追加MRワクチンを受けられる態勢を作ってもらいたいものです。
麻疹ワクチンの効果は約10年と言われています。世界の趨勢は、secondary vaccine failureに対して、2回接種でブースター効果を期待する、2回接種です。日本では、2年前から、やっと2回接種のスケジュールが行われるようになりました。
しかし、2回接種への移行が遅すぎたために、若年層の感受性者が蓄積し、その年齢層での麻疹流行の基盤ができあがってしまいました。この年齢層に対しての追加接種の機会をつくらなければ、将来にわたって、麻疹の根絶を期待することは不可能です。

麻疹は内科・産婦人科の疾患となりつつあります。——全く新しい事態

ワクチンが導入される前、又導入された後2000年までの麻疹の流行は麻疹患者は主に乳幼児で小児科の疾患でした。2007年の流行はこれまで私たちに(でさえ)経験の乏しい若年者、妊産婦、新生児の流行となってあらわれています。
これまで小児科医が診療に当たってきた麻疹は、今後しばらくは小児科医だけでなく内科や産科のドクターの守備範囲に変化していく勢いです。

典型的麻疹と修飾麻疹

若年者で熱と咳をみたら麻疹を疑うことが重要です。
まぶたが腫れぼったく、うっとうしそうな特徴のある「麻疹顔貌」、その後発熱3~4日目でのコプリック斑で確定診断です。このコプリック斑を確認することが重要です。
ただし、部分的な免疫の存在(ワクチン接種者や予防的なガンマグロブリン注射後)で、非典型的となる場合や、コプリック斑が出現しない場合は麻疹の診断は困難でPCR法かペア血清による治癒後の抗体検査結果でしか診断できないこともあります。これを修飾麻疹とよびますが内科や産婦人科の先生方に修飾麻疹を診断して頂かなければならないことも多くなりそうです。