診療案内

Medical guidance

腸重積症

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

つ子どもの腹痛では常にアッペと腸重積を思い浮かべる必要があります。通常、幼児以後の年長児ならアッペを、3歳までの乳児なら腸重積を疑います。
しかし年長児にも腸重積はあります。この間、比較的珍しい年長児の腸重積を2例経験しました。
その症例をご紹介し、腸重積に注意を向けていただきたいと思います。

【症例1】 9歳 男児

腸重積整復直後に再発、O-157を検出

8月27日:
生肝を食べる。
8月31日:
朝から腹痛。和歌山に旅行中で夜間救急病院に3回受診。
9月1日:
登録医のS先生を受診。当院へのご紹介をいただく。
一見、全身状態は良好。腹痛は間欠的。
触診では右側腹部~臍部に強い圧痛がある。
この時点では下痢も血便も訴えはない。
超音波検査で臍の右側をプローブで圧迫すると、身をよじって痛みを訴え、その部分にTarget Sign、Pseudo-kidney Signを認める。
高圧浣腸の準備を行っている間に粘血便を排出。念のために便細菌培養を提出。
腸重積の診断で高圧浣腸による整復を実施。小腸内へのバリウムの充分な逆流を確認し、整復終了。その夜間から再び観血的な腹痛が再発。
9月2日:
超音波検査で再び腸重積を確認。再度バリウム高圧浣腸にて整復。
9月3日:
超音波検査では盲腸~上行結腸の壁の強い肥厚が認められた。
9月4日:
食事が摂れるようになって退院。
9月7日:
便培養結果で、病原大腸菌O-157(VT2+)が判明し保健所への届出を行う。
その後の合併症(溶血性尿毒症症候群)の発症がないことを2週間見守り、観察終了。

【症例2】 9歳 男児

10月22日未明より激しい腹痛で嘔吐を伴う。I先生受診。当院へのご紹介をいただく。
右下腹部~上腹部にかけて強い腹痛、圧痛がある。
腹部超音波検査で右上腹部にTarget Signを認め、腸重積と診断。高圧浣腸にて整復。
基礎疾患、合併症は認めず。

先ず疑うこと… 子どもの腹痛 → アッペか腸重積

子どもの腹痛をみたら腸重積があることを必ず思い起こすこと、必ず疑うことが重要です。女性を診察する時は必ず妊娠の可能性を検討することが必要ですが、子どもの腹痛ではアッペと腸重積です。

通常3歳以下に多いが、時に年長児にもありうる

約8割は2歳以下で6歳以上では稀です。
診断は、

  • 間欠的な腹痛(しばしば陣痛様)
  • 嘔吐
  • 血便
  • 触診での腫瘤の触知
  • 不機嫌やぐったり

などによって行われます。
血便は絞扼が進み腸粘膜の虚血性の損傷が進んだ結果なので、血便を確認しなければ診断できないわけではありません。また、触診による腫瘤の触知も痛みによって確認が困難なことがよくあります。

直前に下痢=排便があっても、腸重積は否定できない

ロタウイルスなどの腸炎で腸重積の発症が増加するという明らかなエビデンスはありません。
しかし、腸炎の経過で直前まで頻回の下痢をしていた乳児に腸重積が発症することがあり、直前に排便があったから通過障害はないと断定することはできません。
1世代前に開発されたロタウイルスワクチン(Rotashield)は、投与後に腸重積が増えたことが分かり中止された経緯があります。

超音波検査が確定診断

疑った時点で超音波検査を実施することが決め手となります。
超音波検査では嵌入部の横断面はtarget sign(矢の的サイン)、またはmulticoncentric ring signと呼ばれるリング状となり、縦断面では内筒が外筒に嵌入し、先端がドーム状になる pseudo-kidoney signとして認められます。

再発例や年長例では、基礎疾患を考慮する

腸重積が再発を繰り返す場合は、先ずメッケル憩室、ポリープ、リンパ腫などの基礎疾患の診断が必要になりますが、いずれも小腸の病変なのでメッケルシンチによるメッケル憩室の診断以外は、簡単ではありません。
急性疾患としては、大腸の強い浮腫と異常な蠕動運動をおこして、腸重積を合併する疾患として、病原大腸菌O-157による出血性腸炎、Henoch-Shonlein紫斑病があります。
重積部以外の腸管の壁の肥厚が、認められた場合に、これらの疾患を考慮する必要があります。
症例1がこれに当てはまりますが、症例2の基礎疾患は特定できていません。