診療案内

Medical guidance

3ヶ月未満の子どもの熱に特別な注意を

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

ネルソンの小児科学教科書18版

局所症状を欠いた3ヶ月未満の子どもの熱は、それ以後の年齢に比べて、重症細菌感染症を含んでいる可能性が高く、重症例を見逃さない観点で、sepsis work-up(sepsisが隠れている可能性を考慮して、ずい液検査・ずい液培養検査を含む検索を行うこと)を実施することが推奨されてきました。
最新のネルソン18版「175章:Fever Without a Focus」の「3ヶ月未満の子供」の項では、次のように述べられています(抄訳)。
「病因のほとんどは、ウイルス性だが、10~15%で重症の細菌感染(serious bacterial disease)のことがある。Ill-appeared(toxic-appeared)の場合は、ずい液、血液などの培養検査の上、入院、抗菌薬投与が必要。
もともと健康で、Generally well appeared な場合、白血球が5000~15000、捍状球の絶対数が1500未満、尿所見異常なしであれば、95%以上の確実性で、細菌感染は否定される。腎盂腎炎では、well appeared(見かけ元気)で、検尿で異常所見を認めないことがある。」
と記載されています。

Rochester Criteria

1990年代に3ヶ月未満の子どもの熱に対して、重症細菌感染と軽症のものとを振り分けるためのCriteriaが検討され、発表されてきました。Philadelphia Criteria, Rochester Criteria, Boston Criteria等です。
Rochester Criteriaを示します。これらすべてを満たせば、Low Riskで抗菌薬なしで外来観察が可能と判断されます。
現在でも有効な基準ですが、捍状球の絶対数が一項目になっている点で、日常診療での使用に制限があります。ネルソンの教科書の記述はこのCriteriaに基づいています。

年齢 :
60日以内
体温 :
38℃以上
病歴 :
満期産児
周産期に抗菌薬治療を行っていない
基c疾患なし
出生後、母親より長い入院なし
理学所見 :
Well-appearing
耳、軟部組織、骨の感染症なし
検査 :
5000<白血球<15000
捍状球の絶対数<1500
尿白血球≦10/hpf
重症細菌感染症(Serious Bacterial Infection)の予測モデル

Bachurらの重症細菌感染症(Serious Bacterial Infection)の予測モデル

2001年Bachurらは、3ヶ月未満児の重症細菌感染(Serious Bacterial Infection)の予測モデルを発表しました。(PEDIATRICS Vol.108 No.2 2001.pp311-316)

  • 以下の項目を順次検査・評価していく
    尿沈渣:陽性(白血球≧5 /hpf)

    • 白血球数>20000
    • 体温>39.6℃
    • 白血球数<4100
    • 日齢<13日

    いずれかに該当すれば ・・・ high-risk
    すべて該当しなければ ・・・ not high-risk

  • 陰性的中率(陰性結果のとき重症でない確率)98.3%
  • 陽性的中率(陽性結果のとき、重症感染症である確率)21%

と報告されています。
このモデルも、評価基準として、大変参考になります。

CRPによる管理基準(全身状態が良い場合)

全身状態がよい場合に、CRP値を基準にして、入院管理か、外来観察かを決める基準が発表されています。(日児誌 102:885、1998)

  • 発熱12時間未満
    ⇒CRP≧2.0 =入院治療
    ⇒CRP<2.0 =外来管理  ⇒発熱12時間以後にCRP再検
  • 発熱12時間以上
    ⇒CRP≧2.0 =入院治療
    ⇒CRP<2.0 =外来管理  ⇒発熱12時間以後にCRP再検

CRPは、発熱直後には上昇していないことが多く、2mg/dl未満でも、重症細菌感染症=細菌性髄膜炎や敗血症の可能性は否定できません。
経過を追って判断することを知っておく必要があります。CRP検査は簡易検査としても普及してきており、この管理基準も大変有用です。

全身状態の評価

Not doing-wellとToxic appearance

乳児の全身状態をあらわすものとして、not doing-well や、ill(toxic)-appearanceなどが用いられます。
Not doing-wellとは、なんとなくおかしい、どこかいつもと違うという状態ですが、重症感染症の発症の可能性も含むことがあり、その判断は、母親の観察と、医師の経験と勘に属するものです。
Toxic appearanceとは、活気がない、反応・応答がおかしい、循環不全、低換気、過換気、努力性呼吸、チアノーゼなどの、プレショック状態を示すものです。

PAT(Pediatric Assessment Triangle)

小児患者の評価として3要素=PAT(Pediatric Assessment Triangle)が提唱されています。
子どもの患者の全体像を把握するのに、外観(Appearance)、呼吸状態(Work of Breathing)、皮膚への循環(Circulation to Skin)の3要素を評価するものです。

A=外観を把握するためには、覚えやすいように(?)TICLS(ticlesは、くすぐるの意味)で表わされる項目を評価します。

  • T=Tone(筋緊張)
  • I=Interactiveness(周囲への反応)
  • C=Consolability(精神的安定)
  • L=Look/Gaze(視線/注視)
  • S=Speech/Cry(会話/啼泣)  です。

Toxic appearanceはこれらの項目の異常をさすもので乳児の意識レベルの把握とオーバーラップします。

B=呼吸状態については、クループや喉頭蓋炎による吸気性呼吸困難や、細気管炎による喘鳴、気道異物による呼吸困難などの評価が問題になります。

C=皮膚への循環では、capillary refill timeが評価されます。室温が寒くない状況で、膝や前腕全体を軽く圧迫し、血流が回復し、ピンクにもどるまでの時間(2~3秒が良好)を測ります。

3ヶ月未満児の熱に特別な注意を!

子どもの評価にドライブスルー的なそのとおりにやれば重症感染症を確認できる完璧な方法はありません。
3ヶ月未満の子どもの評価に当たっては、ワンランク余分な慎重さが必要です。治療の遅れにつながらないよう、ずい液検査を含めた積極的な介入を行うべきかどうかの判断が問われます。そこで、小児科医としての力量が問われることになります。
3ヶ月未満の子ども熱に対しては、いっそうの慎重な対応が必要です。