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Medical guidance

小児急性脳症の分類

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

2007年7月の子どもの感染症の動向

例年、お盆までの夏の季節には、手足口病やヘルパンギーナ、アデノウイルスや無菌性髄膜炎などの夏風邪が流行するものですが、今年は例外で、アデノウイルス感染が例年程度で、その他の夏風邪の流行は小規模で終わりそうです。
インフルエンザの流行が3月にずれ込んで流行し、タミフル服用と異常行動の因果関係が問題となり、10代の子どもへのタミフルの使用が禁止され、その後、麻疹が流行、7月になってやっと鎮静化のきざしとなるなど、話題の多かった春先に比べて、夏風邪の少なさが、異常に感じられます。
しかし、油断は大敵でしょう。
今回は、6月の小児神経学会で配布された、ウイルス関連性の脳症の総説についての話題提供です。
この総説は、日本における小児の脳症のエキスパート、水口(東大)、塩見(大阪市立総合医療センター)、市山(山口大)、山之内(獨協大)の4人の共同の論文として発表されたものです。

インフルエンザおよびその他のウイルス感染による急性脳症

「急性脳症はインフルエンザ、突発疹などのウイルス感染症の最も重大な合併症である。
全世界で問題になっているが、東アジアで多く発生し、特に日本では毎年数百人がインフルエンザ脳症に罹患している。
死亡率は近年減少化傾向にあるが、依然として高率である。生存者の多くに、運動障害、知的障害、てんかんの後遺症が残る。
この論文では、脳症の総説にあたり、脳症を3つの主要なカテゴリーに分類する。

第1のグループ

種々の先天性代謝障害と古典的なライ症候群で、代謝障害に基づく疾患群である。
サリチル酸(アスピリン等)は、ライ症候群の危険因子である。

第2のグループ

全身性のサイトカインストームと血管原性の脳浮腫で特徴づけられるもので、ライ症候群様症候群、hemorrhagic shock and encephalopathyとacute necrotizing encephalopathyが含まれる。
Diclonfenac sodium(ボルタレン等)やmephenamic acid(ポンタール等)などのNSAIDSは、これらの疾患を悪化させる。
重症例では、MOF(多臓器障害)やDICを合併する。Methylpredonisolone pulse therapyが有効なことがあるが、死亡率は高い。

第3のグループ

脳皮質の局所的な浮腫により特徴づけられるもので、最近では、acute encephalopathy with febrile convulsive status epilepticus と呼ばれ、hemiconvulsion-hemiplegia syndrome やacute infantile encephalopathy predominantly affecting the frontal lobesが含まれる。
テオフィリンはこの群の危険因子である。病因的にはまだ不明な点が多いが、知見が増えるにつれて、刺激毒性(exitotoxicity)と遅発性の神経細胞死に、焦点が向けられている。」

とまとめられています。
これまで、いくつかの臨床的な特徴から分類されてきた小児の脳症を、3つのカテゴリーに分類、整理を試みたもので、我々の臨床に携わる者の頭の整理に役立つものです。

今年経験した脳症

症例1 1才6ヶ月 男

2月23日:
39.8℃、20時過ぎからけいれん重積状態となり、救急車で当院へのご紹介いただき入院されました。けいれんは約1時間持続、止痙後、全身的な緊張低下、舌根沈下、呼吸抑制が2時間持続、その後呼吸状態は少しずつ改善。
2月24日:
朝4時、意識は回復傾向(JCS1~2)
2月25日:
意識は正常化。

髄液細胞数45/3 デカドロン、グリセオール、ゾビラックスに加えて、γグロブリン1g/kgとメチルプレドニゾロンパルス(2日間で中止)を併用しました。

この症例は、塩見先生が提唱するacute encepharopathy with febrile convulsive status epilepticusにあたり、熱性けいれんが起因となった第3のグループに分類されます。

症例2  1才6ヶ月 男

3月18日:
嘔吐
3月19日:
下痢、インフルエンザ迅速検査B(±)。熱はない。
3月23日:
嘔吐が続くため、ご紹介にて当科へ入院。
ぐったりしていて、横抱きにされたまま、追視はあるが、表情が乏しい、指差しするが、指差しした近くのものを渡しても知らん顔をする、不機嫌で、母親が相手をしてもなきつづけるなど、JCS2~3の意識障害がありました。ブリン1g/kg投与。
3月24日:
まだ母親の視線を避けるなどが続く。
3月25日:
意識はほぼ正常化。便検査でロタウイルス(+)

ロタウイルス起因する脳症の可能性が高く、グループ2の軽症型ではないかと考えられます。

インフルエンザ脳症への初期対応

ガイドライン(2005年11月)を転載します。けいれん重積、意識障害、異常言動・行動に注意し、対応することが推奨されています。
インフルエンザに限らず、意識障害、異常言動・行動を見逃さずに、迅速に、正確につかむかが臨床医の課題となります。