診療案内

Medical guidance

A群連鎖球菌感染症

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

溶連菌の名前で親しまれている(?)A群レンサ球菌 Streptococcus pyogenes、Group A Streptococcus(GAS)の臨床上、重要な知識を再整理してみました。

  • AMPC;10日間の治療は、今でも、治療の基本です。
  • 発症後、2~3週間後の、尿検査を行うのが、より安心な対応です。
  • 隔離は、抗菌薬服用後24時間で、それ以後、隔離解除可能です。
  • 連鎖球菌性の「とびひ」からも、腎炎は発症することがあり、よくあるブドー球菌性のとびひと少し違う印象の「とびひ」をみたときには、培養検査が望まれます。
  • 局所的な疼痛・発赤に対しては、壊死性筋膜炎を常に念頭において、対処することが必要です。水痘罹患後、壊死性筋膜炎の発症の危険性が高いとされています。注意しましょう。
  • チックや神経症的な症状を見たら、PANDASのことも思い浮かべてみましょう。

咽頭炎・扁桃炎・猩紅熱

咽頭痛で始まり、熱、頭痛その他の症状が続きます。
扁桃は発赤し、滲出物を伴い、頚部リンパ節の腫大もみられます。軟口蓋の点状出血、イチゴ舌、瀰漫性の紅斑が出れば、GAS感染と臨床診断してほぼ間違いはありません。
感染後4~8週でM蛋白に対する型特異的抗体が産生され、免疫が成立しますが、他の型の感染は防御できないので、繰り返し感染することが稀ではありません。
咽頭炎から、続発症としてのリウマチ熱の発現までは平均18日、糸球体腎炎で10日とされています。

膿痂疹

膿痂疹の殆どは、ブドー球菌性ですが、稀に連鎖球菌によるものがあります。
膿痂疹からリウマチ熱の続発はないとされていますが、急性糸球体腎炎は平均3週間後と、咽頭炎よりは長い経過で発症します。
膿痂疹で、見慣れたブドー球菌性のものとは形や経過が異なるときには、培養検査を提出することが重要です。

壊死性筋膜炎(Ncrotizing fascitis)

深部皮下組織と筋膜の感染で、24時間から72時間で急速に拡大し、壊疽性となり、致死率も高い疾患で、俗に「人食いバクテリア」とも呼ばれます。(同じく人食いバクテリアと呼ばれるものに、Vibrio vulnificusがあります。 肝硬変・免疫不全などの基礎疾患を持つ人で、魚、浜辺での傷からの感染で、敗血症、重症の創傷感染を起こします)
水痘罹患後に、水痘疹からの感染で、発症することがあり、水痘罹患後、皮下組織炎、筋炎、筋膜炎を疑わせる局所の疼痛、発赤が出た場合は、注意が必要です。
感染巣の外科的デブリと高用量のアンピシリン、クリンダマイシンの併用が推奨されています。
クリンダマイシンは ①ペニシリンと違って非増殖状態の菌にも作用する ②菌の外毒素やM蛋白産生を抑制する ③単球からのサイトカイン産生を抑制するために併用されます。

激症型A群レンサ球菌感染症(Streptococcal toxic shock syndrome)

ブドー球菌によるTTSと区別して、連鎖球菌によるものをtoxic shocck lile syndromeと呼ぶこともあります。熱、低血圧・ショック、発疹の3主要基準に、多臓器障害、ARDSを合併します。
小児でポピュラーな疾患である川崎病と、症状の上でオーバーラップしており、TTSと遭遇したときには、川崎病かもしれないとの側面からも検討し、治療を行っていく必要があります。また、この疾患は、感染症法で、5類感染症全数把握疾患に定められていて、7日以内に保健所への届出が必要です。

潜伏期

咽頭炎では、通常2~5日、膿痂疹では7~12日。

伝染期間

抗菌薬が開始されて24時間経過すれば、伝染性は消失します。
飛まつ感染防止のための予防策の実施期間も24時間です。

治療

抗菌薬の使用は ①症状の早期の改善 ②続発症の予防 ③伝播防止 を目的とします。
そのためには、ペニシリン(AMPC)30~40㎎/kg/日 10日間が推奨されています。
最近では服薬コンプライアンスの面から、バナン5日間投与や、メイアクト7日間投与などの報告もありますが、あくまでもAMPC10日間投与が基本です。
発症2~3週後に検尿を実施し、腎炎の発症を否定しておくことができれば、さらに安心です。

予防対策

接触者の予防対策としては、うがい・手洗いが基本で、予防的な抗菌薬の投与は推奨されていません。

続発症

私たちの病院でのA群連鎖球菌感染後急性糸球体腎炎は、でこの数年間は、1年間に一人~二人程度です。
リウマチ熱の発症は、この20年間は経験していませんが、将来、心毒性の強い株の流行しないとは断言できません。引き続き、10日間のAMPC投与を怠らずに治療していく必要があります。
小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害(pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcal infection:PANDAS)にも注意が必要です。急な発症で、神経症的な症状が出たり、チックを発症したりしたとき、A群連鎖球菌感染の続発症がありうることを、思い起こしてみてください。