診療案内

Medical guidance

予防接種2006・2007

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

ワクチンは毎年、やり方が改良され、変更されてきています。
ワクチンの知識を最新のものにアプグレードして新年を迎えるために、この1年間のワクチンに関する変更や副作用の情報を整理しました。

1才のお誕生日のプレゼントに麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を!

麻疹の流行に注意が必要

2006年には春先から初夏にかけて、関東で、麻疹の流行がありました。麻疹・風疹の流行の周期はこのところ5年周期で、2006年~2007年はその流行周期にあたります。2007年に再び流行することも考えられます。新しく導入されたMRワクチンの接種率を高めることはきわめて重要です。
WHOは日本を含む西太平洋地域(WPRO)の麻疹排除elimonationを2012年に設定しています。日本では、eliminationに向けた麻疹対策のキャッチフレーズが「一人でたらすぐ対応」が採用され、子ども達の集団、地域で、一人でも麻疹患者が出たら、即座に総合的な対策をとるよう要請されています。

MRワクチンの2回接種の意義

2006年4月から、MRワクチン2回接種が開始されました。1回目は12ヶ月から23ヶ月まで、2回目は5歳になった4月から、小学校入学前の3月までに接種を受けることになりました。接種を2回受けることは重要です。
2回接種法の意義は、次の3点です。

  1. 数%存在するprimary vaccine failureの子ども達に免疫を付与する。
  2. 免疫増強効果で、secondary vaccine failureを予防する。
  3. 接種機会を逃した子どもに機会を与える。

麻疹単抗原ワクチン、風疹単抗原ワクチンが定期接種に加えられました

先天性風疹症候群を予防するために風疹ワクチンの接種も重要です。2006年の当初の段階では、2歳までに麻疹ワクチン又は風疹ワクチンのいずれかしか、接種を受けてない子どもに対する対策がないまま、MRワクチンが開始され、混乱が生じましたが、単抗原ワクチンも定期接種に加えられ、市の担当課に届け出れば、単行減ワクチンの接種が受けられるようになっています。
麻疹又は風疹のワクチンのいずれかしか接種を受けていない子どもに。単抗原ワクチンの接種ができることを知らせて、接種率を高めることが必要です。

DPTワクチン

百日咳と百日咳ワクチン

日本では世界に先駆けて、副反応の強かった全菌体百日咳ワクチンが改良され、有効成分のみを単離・精製した無細胞(acellar)百日咳ワクチンが使用されてきました。ジフテリア・破傷風トキソイドと混合され、DTaPとして、1981年から接種され、有効性を発揮してきました。
しかし、近年、百日咳患者数の増加報告がなされ、中学生、成人の増加傾向が指摘され始めました。アメリカでも、同様の減少があり、中学生の追加接種を2005年から破傷風トキソイド・抗原量を減量したジフテリアトキソイド、無細胞百日咳ワクチンを混合した青年・成人用3種混合ワクチン(Tdap)が認可され、11才~12才の子どもへの接種が推奨されています。日本でも、12才での追加2種混合ワクチン接種を、百日咳ワクチンを含む3種混合ワクチンとすることも検討されるべき時期に来ています。

破傷風と破傷風ワクチン

2005年12月、阪南中央病院でも9才の破傷風患者がありました。喘息のために3種混合ワクチンが受けられなかった子どもでした。約4週間の完全鎮静療法で、回復されましたが、ワクチンの重要性と、外傷時の問診、破傷風予防対策は決しておろそかにしてはならないことです。(阪南中央病院のホームページに、対策が掲載されています。

ポリオとポリオワクチン

ポリオ

野生ポリオは、東アジア、オセアニア、南北アメリカ、ヨーロッパ地域からは消滅しました。日本での最後の患者は1980年に報告されました。現在、地球上に残された流行地域は、アフリカとインド、及びその周辺地域に限られています。

ポリオ生ワクチンが抱える問題点

  • ワクチン関連性麻痺(Vaccine-associated paralytic poliomyelitis,VAPP)
    OVP(経口生ポリオワクチン)は、変異により神経毒性が復帰することがあり、200万〜300万投与に1回の副作用として、発症することが分かっています。
    このため、不活化ワクチンが開発され、欧米では不活化ワクチンが主流となっています。
  • 生ワクチン由来株の伝搬(Circulating vaccine-derived poliovirus,CVDP) 神経毒性を復帰した生ワクチン由来株がヒトの間で流行伝播し、麻痺患者が発症する現象です。ドミニカ、ハイチなど、数カ国で報告されています。この場合の対策は、当該地域でのOPVの強化投与ですが、矛盾した対策との印象が否めません。

できるだけ早くIVP(inactivated polio vaccine=不活化ワクチン)の導入を

このような、問題点があるため、欧米では既に不活化ワクチンが導入されています。日本でも、出来るだけ早く、定期接種をOPVからIVPに変更することが、求められています。
日本では、ポリオ研究所が独自に、セービン株(弱毒生ワクチン株)から不活化ワクチンを作成し、接種実験が行われましたが、データの杜撰さが発覚し、実用化にはまだ数年かかると言われています。既に有効なワクチンが開発され、使用されているのに、日本製の独自ワクチンが開発されるまで、副作用のある生ワクチンを使い続けるのは問題です。

BCG

結核の罹患率は減少してきていますが、地域格差が大きく、小児期(0才~14才)の発症率では、1位大阪市(10万:2.04)2位横浜市(2.04)で、少ない地域、山梨(0.16)、福井(0.15)とは10倍以上の差があります。BCGの重要性は、大阪が日本で一番高い地域といえます。
2005年に結核予防法が改正され、生後6ヶ月までにツベルクリン検査なしに、BCG接種が行われることになりました。

新しいBCG接種の問題点

  • 6ヶ月までに受けられなかった子どもへの救済策がない
    未熟児、急性疾患の罹患で、6ヶ月までに受ける条件が整わなかった場合でも法的な救済策がありません。6ヶ月までに受けられなかった子どもに対して、出来るだけ門戸を開いて、ツベルクリンテストを実施した上でのBGG接種の体制を作るべきです。
  • コッホ現象とその対応
    通常の結核未感染者の場合、BCG接種後2週間頃から徐々に反応が大きくなり、4週間ごろにピークに達し、そのままゆっくり治癒に向かいます。
    コッホ現象とは、既に結核感染を受け、免疫を持っているものにBCGを接種した場合、接種局所に発生する、より早期の、強い、かつ経過が早い反応のことです。ツベルクリン反応テストなしで、BCG接種を行う体制になったので、コッホ現象に注意が必要となりました。
    コッホ現象と判断されたら、結核感染を疑って、早急に専門病院(この地域では、府立呼吸器・アレルギーセンター=羽曳野病院、小児科)への受診紹介を行うのが良いと考えます。

おたふく風邪ワクチン

先々月号で、おたふく風邪とおたふく風邪ワクチンを特集しましたが、その後、2006年11月の小児感染症学会と12月の大阪小児科学会で、おたふく風邪ワクチン接種後の脳炎の報告が相次ぎました。いずれもT製薬製のおたふく風邪ワクチンとのことでした。
おたふく風邪そのものには、聴力障害、無菌性髄膜炎、精巣炎などの合併症があり、世界的にMMRワクチンとして、接種が拡大し、ワクチン接種が望ましいとの考えが定着してきています。しかし、日本製のおたふく風邪ワクチンの安全性には、問題があり、安心して積極的に接種することがためらわれます。
現状では、世界的に評価のあるJeryl-Linn株ワクチンを輸入し、使用することが、安全性、有効性の点で最良の案だと考ますが、いかがでしょうか。ポリオ不活化ワクチン同様、ワクチン行政が、日本のメーカー尊重、子どもの健康軽視になっていないか、心配です。

インフルエンザワクチン

2006年~2007年のシーズンでは、ノロウイルス、RSウイルス感染の流行がありますが、インフルエンザはまだ流行していません。
タミフルの副作用問題や、脳症の発症の問題などがあり、インフルエンザワクチンの接種が推奨されることが多くなってきていますが、今シーズンも私達は、健康な子どもへの積極的な接種を勧めませんでした。
参考として、小児科学会の見解とアメリカCDCの勧告を資料として、掲載します。
大人の接種に関してですが、今年のワクチンは接種局所の発赤、腫脹が強いとの印象が聞かれます。