診療案内

Medical guidance

川崎病

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

2005年から2006年春にかけて、川崎病が多発しました。現在やや下火となっていますが、この、原因不明の疾患に対する、現在の対処法を整理します。

当院での川崎病の症例数

当院での川崎病の症例数は、2003年13例、2004年10例でした。ところが、2005年後半以降急増しました。 5年24例、2006年は9月までにすでに23例となっています。

去年からの増加(流行?)が、全国的なものか、地域的なものかは今後の統計で確認する必要があります。
幸い、今回の流行では、冠動脈の拡張、動脈瘤を残した子供はありませんでしたが、今回の流行を振り返ってみて、川崎病が、依然として、小児に循環器の後遺症を残す危険のある疾患として、繰り返し、流行する疾患であり、引き続き、注目していかなければならないことを示しています。

改定5版・川崎病の診断基準とBCG痕の発赤の診断的価値

2002年5月に厚生労働省川崎病研究班の改定5版の「川崎病診断の手引き」が出されました。川崎病の診断はこれまでどおり、①5日以上の熱、②眼瞼結膜の充血、③口唇・口腔内所見、④不定形発疹、⑤四肢末端の変化、⑥頚部リンパ節腫脹の「6つの主要症状のうち5つ以上の症状を伴うものを本症とする。ただし、4つの症状しか認められなくても、冠動脈の拡大(エコー)が確認され、他の疾患が除外されば本症とする。」と記載されています。
BCG接種部位の発赤は川崎病にかなり特異的だと考えられます。「手引き」では参考条項の一つに上げられていますが、主要条項に一つに加えられる位の診断価値があると考えています。これまで、川崎病以外で、BCG部の発赤を見たことがありません。(文献的には、突発疹であったBCG発赤例の報告はありますが。)熱が続く場合、BCG部の観察を行う習慣をつけることは重要です。

  • 備考欄には、以下の記載が加えられています
    ①頚部リンパ節の腫脹は焼く65%で、発現頻度が低いこと、②性比は1.3~1.5で、男児に多く、4歳以下が80~85%、③致命率は0.1%前後、④再発令は2~3%、同胞例は1~2%、⑤主要症状を満たさなくても、他の疾患が否定され、本症が疑われる、容疑例が10%存在する。この中には冠動脈瘤が確認される例がある

川崎病の管理基準

川崎病研究会運駅委員会は2002年に、改定管理基準を公表しています。これによると、「冠動脈病変のないもの(発症1ヶ月以内の急性期心エコー検査上、拡大性病変が認められないもの、冠動脈の輝度上昇のみは優位としない、ただし、急性期症状が2週間以上遷延するものは急性期症状が終焉した2週間後位の心エコー検査を目安とする)
経過観察 : 発症1ヶ月、(6ヶ月)、1年、発症後5年をメドに経過観察
検査 : 心エコー検査を発症1ヶ月、1年、その後は必要があれば
運動性現 : 必要なし
治療 : 急性期症状消失後は必要なし」

とされています。この数年間、私たちが経験した症例では、冠動脈の拡大を示した例はなく、ほぼ、この管理基準に従って、経過観察を行っています。
免疫グロブリンの大量療法(IVIG療法)を実施した場合、最低6ヶ月は、麻疹・風疹混合ワクチンの接種は行わないこととされています。川崎病に最近かかった子どもから、ワクチン接種の相談を受けた場合は、配慮をお願い致します。

川崎病の治療について 新しい治療法の模索と不全型川崎病への注意

現在では、免疫グロブリン療法が第1選択です。多くの症例が、免疫グロブリン治療終了後24時間以内に、治療に反応し、解熱します。
時に、不応例があり、この場合は、免疫グロブリンの再投与を行います。それでもなお、不応のとき、メチルプレドニゾロンパルス療法(これにウリナスタチン投与を併用)を行うことが、現時点での一般病院での治療戦略です。
その他、血漿交換療法、シクロスポリン、Infliximab(レミケード)などが不応例への治療として実施されており、今年の川崎病研究会(10月14日~15日、大阪)のホットなテーマの一つとなっています。
経口薬としては、アスピリン・フローベン、ジピリダモールが推奨されています。肝機能障害を伴った場合、又はインフルエンザ流行時、水痘未罹患で周囲で水痘流行時等では、アスピリンの使用は控えざるを得ないことがしばしばあり、この場合は、経口薬としてはフローベンを選択します。
川崎病の不全型(約10%)では、免疫グロブリン治療なしに、早期の解熱が得られる場合があり、経口薬のみで、治療が終了することもありますが、この場合でも、冠動脈の変化を伴うことがあると報告されており、心臓エコー検査を怠ることはできません。

予後と死亡率

改定5版の「診断の手引き」では、備考欄に致命率は0.1%前後と記載されています。全国調査で、報告された、致命率の推移は、以下の通りです。

約10年ごとに、致命率は減少し、0.05%程度となってきています。

乳児期初期(生後60日以下)の川崎病

第18回川崎病全国調査によると、生後60日以内に発症した川崎病は19138例中382例(2%)という低い頻度であったが、急性期の心血管障害は約30%に高率に見られたと報告されています。新生児や乳児期初期の発熱で、感染症、膠原病、薬疹などが否定的な場合、川崎病の疑いをもち、診断や免疫グロブリン治療が遅れないよう注意する必要がありそうです。
生後2ヶ月未満の早期乳児でも、川崎病や突発性発疹は認められます。小児科医にとっては、Sepsis work-upを実施することを怠らず、その上で、突発性発疹や川崎病も考慮する慎重さが必要とされます。

病因と病態について

これまで色々な病原体が川崎病の原因と関係していないか検討されてきましたが、これまでのところ、原因は不明とされています。
2005年2月川崎病患者から新型のコロナウイルスが検出されたとか、剖検症例でウイルス由来の細胞内封入体が検出されたなどの報告がなされて、今年の川崎病研究会では、連鎖球菌との関係、病原性大腸菌との関連などの演題があげられていますが、まだ、決定的な病因は解明されていいないのが現状です。繰り返し多発し、減少傾向がみられない疾患であり、今後の原因究明が期待されるところです。