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Medical guidance

ノロウイルスとロタウイルスによる感染性胃腸炎

小児科医 ( 副院長 ) : 中田成慶

初冬のこの時期にノロウイルスによると考えられる感染性胃腸炎が流行しています。毎冬のことですが、ノロウイルスとロタウイルスの胃腸炎(腸炎)は子どもたちにとって、避けられない感染症となっています。

ノロウイルス

ノロウイルスは、1本鎖のRNAウイルスで、これまでNorwalk-like virus(NLV)とか小型球形ウイルス(SRSV)と呼ばれてきたウイルスの正式名称です。5つのの遺伝子型(GⅠ~GⅤ)に分類され、31種類の株に分類されています。

臨床症状

潜伏期は、通常24時間から48時間(中央値は33~36時間 最短12時間以内)。嘔吐と水様下痢で始まり、腹痛、吐き気を伴います。時に、熱を伴いますが、高熱が続くことはありません。主な合併症は脱水症で、通常約60時間以内に、回復に向かいます。
高齢者や乳幼児では稀に数時間で激しい脱水状態に陥ることがあり、脱水症への注意は欠かせません。

ウイルスの伝播

ノロウイルスは、糞→口の経路で伝染します。ウイルスで汚染された食物、水、又は直接的は感染者との接触で、伝染します。吐物や唾液などのが、エアゾル様に飛散することでも感染は起こります。(吐物によると考えられる集団発生は多数報告されています。)
症状の発症とともに他への感染が始まります。症状回復後、なお、2週間は便に排泄されることが確認されていますが、この時期に感染性があるかどうかははっきりしていません。ボランティアによる実験では、約30%の人に不顕性感染が起こっていることが判っています。

ノロウイルスに対する免疫

免疫成立のメカニズムはまだ解明されていません。免疫はそれぞれの株に特異的に成立するだけで、数ヶ月(長くて6ヶ月~2年)程度しか持続しません。しかも、ノロウイルスは遺伝的に変異株が多くあります。個人が一生で、何度もかかったり、流行が頻繁で、流行時には、全ての年令の人がかかるのはこのためです。

流行状況

日本の流行では、感染性腸炎の約42%がノロウイルス、22%がロタウイルス、30%がアデノウイルスとの報告があります。アメリカでは食品を媒介とする胃腸炎の原因の約50%がノロウイルスによるものです。
生牡蠣などの生の食品によって、感染することは当然ですが、感染した調理者の手から、食品にウイルスが付着して、感染が流行することが多いこともわかってきています。ノロウイルスの感染性は強く、約10個のウイルスで感染が成立するとされています。

診断

今のところ、the reverse transcriptase polymerase chain reaction(RT-PCR)法で確認されます。この検査は保険適用になっていないので、自費扱いで約8500円かかります。
保健所に報告しなければならない、集団的な発症の場合は、吐物・便を採取し、保健所が検査を行う手立てになっています。
通常は、細菌性腸炎が否定できて、ロタウイルス・アデノウイルスが便から検出されないとき、ノロウイルスによるものと臨床診断し、対処することになります。

予防

生の2枚貝には、ウイルスが存在している可能性は常に付きまといます。また、それを調理した手、まな板などからも感染します。感染者(不顕性感染者も含めて)が調理した食品は、集団感染を引き起こします。
ウイルスは、85度1分以上で死滅しますが、生牡蠣を食べることを止めるわけにはいきませんから、今しばらくは、体調のよいときに生牡蠣を食べて、いろいろなタイプのノロウイルスに免疫をつける以外に方法はなさそうです。

【症例Ⅰ】 1歳 男

第1病日:嘔吐、下痢が始まる。
第2病日:嘔吐・下痢が続く。少しは水分摂取が可能とのことで、経過観察、下痢が激しくなり、1時間に2回以上。午後から、グッタリし、眼瞼の落ち込みが見られる。夕方、手足が冷たくなり呼びかけに対する反応が鈍くなる。痙攣を発症。Na147、Creat 1.0mg/dl BUN47mg/dl。
300mlの急速輸液によく反応し、2時間後、排尿が得られ、輸液を続ける。
第3病日:意識はほぼ正常化。その後、後遺症なしに回復。
入院時の便から、ノロウイルスを検出。

【症例Ⅱ】 小学校での集団感染

2003年2月学校全体で56人
(阪南中央病院受診者32人、内入院6名)
2年生のあるクラスでは35人中、24人が発症
保健所による、吐物と便の検査から、ノロウイルスを検出

ロタウイルス

電子顕微鏡で車軸様の形をしていることから、ロタウイルスの名称がつけられました。2重鎖のRNAウイルスで、環境中では極めて安定なウイルスです。
AからG群までの遺伝型があり、人に感染するのは主にA群で、B,C群による感染も報告されており、1回だけですまない子どももいるようです。

流行

糞→口の経路で感染します。痰・唾液などの飛まつによる感染の報告もあります。(呼吸器症状を合併する場合もあります)。環境中でウイルスは安定なため、汚染されたものの表面からも人の手を介して感染が成立し流行が拡大します。流行の季節は冬が中心ですが、熱帯地域や寒い地域では季節性はありません。
2歳以下の乳幼児のほとんどが冬に感染しますが、まれに小学校での集団感染の報告もあります。大人も感染しますが、症状は一般的に軽い傾向があります。(感染した乳幼児に接触した大人の30%~50%が再感染し、このうち発症者は数%であったとの報告があり、不完全でもかなり長期間に免疫が成立していることが確認されています。)

診断

便の迅速検査が可能で、診断が迅速、かつ的確に行えるようになりました。

症状と治療

潜伏期は約2日、症状の持続期間は5日から8日とされています。冬期に流行する乳幼児の下痢、嘔吐、熱を伴う胃腸炎です。便はしばしば、白色調となります。
ノロウイルスに比べて、熱の頻度が高く、症状の持続期間もやや長い傾向があります。
治療は、対象療法で、脱水症の予防・治療が中心です。けいれんを併発することもあり、この場合の、ジアゼパムより、キシロカインが有効とされています。

ワクチンの開発

世界中の乳幼児のほとんどがかかるこのウイルス感染に対して、欧米では、最近までに、2種類の経口ワクチンが開発、利用されてきています。
ヒトロタウイルスを利用した経口ワクチン(Rotarix)とウシ-ヒトのリアソータント経口ワクチン(RotaTeq)です。
日本ではまだ、認可されていませんが、子どもの医療に携わるものとして、導入の是非についての検討を進めていく必要がありそうです。